保釈請求とは|外国人の被告人が保釈を得るための身元引受人・逃亡のおそれの争い方(パスポート・在留資格)
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
保釈とは、起訴された被告人が保釈保証金を納めることを条件に、勾留を解かれて自宅で裁判を待つ制度をいいます(刑訴法88条以下)。外国人の被告人は帰国して逃げるのではないかと見られやすく、身元引受人・パスポートの扱い・在留資格の状況を具体的に示して逃亡のおそれを打ち消すことが鍵になります。
この記事の要点
- 保釈は起訴後に請求できる制度で(刑訴法88条)、起訴前の被疑者段階には保釈はありません。
- 除外事由がなければ裁判所は保釈を許さなければならず(権利保釈・刑訴法89条)、除外事由があっても裁判所の裁量で保釈できます(刑訴法90条)。
- 在留資格を失っている被告人は、保釈されても入管に収容されることがあります(入管法63条)。
こんな場面で問題になります
- 留学生が窃盗で起訴され、学校に戻るために保釈を得たいが、日本に親族がいない。
- 会社を経営する中国籍の方が詐欺や不法就労助長(入管法73条の2)で起訴され、会社の運営のために保釈が必要。
- 勾留中に在留期限が切れ、保釈されても入管に収容されると言われている。
保釈とは何ですか。いつから請求できますか
保釈は起訴後の被告人のための制度で、起訴された日から判決確定までの間、いつでも何度でも請求できます。
保釈の請求は、被告人本人のほか、弁護人、配偶者、直系の親族などができます(刑訴法88条)。起訴前の勾留(刑訴法208条)には保釈制度がないため、起訴前は勾留の必要性を争う準抗告(刑訴法429条)や勾留理由開示(刑訴法82条)が身柄解放の手段になります。起訴後は裁判官または裁判所に保釈請求書を提出し、通常は数日のうちに決定が出ます。却下されても事情が変われば再び請求でき、却下決定には準抗告・抗告ができます。
| 段階 | 身柄解放の手段 | 根拠 |
|---|---|---|
| 逮捕〜送致 | 釈放を求める弁護人の意見 | 刑訴法203条 |
| 勾留請求・勾留 | 勾留請求却下を求める意見書、勾留決定への準抗告、勾留理由開示 | 刑訴法205条・207条・429条・82条 |
| 勾留延長 | 延長決定への準抗告 | 刑訴法208条・429条 |
| 起訴後 | 保釈請求。却下への準抗告・抗告 | 刑訴法88条〜90条・429条・419条 |
保釈はどのような基準で判断されますか
刑訴法89条の除外事由(重大事件・前科・常習性・罪証隠滅のおそれ・被害者等への加害のおそれ・氏名住居不明)がなければ保釈は許可され、除外事由があっても逃亡や罪証隠滅のおそれの程度、身柄拘束による不利益を考慮して裁量で許可されます(刑訴法90条)。
実務で最も争点になるのは、罪証隠滅のおそれ(89条4号)と、裁量保釈における逃亡のおそれです。否認事件や共犯者がいる事件では口裏合わせのおそれを理由に却下されやすく、関係者の供述が既に調書として固まっていること、本人が接触しないことを約束していることなどを示して反論します。裁量保釈では、身体拘束の継続による健康上・経済上・社会生活上・防御の準備上の不利益も考慮されるため、仕事・学業・家族の事情を具体的に主張します。
外国人の被告人の逃亡のおそれはどのように争いますか
外国籍であること自体は除外事由ではありません。パスポートを弁護人が預かること、確実な住居と身元引受人、在留資格が有効で日本に生活基盤があること、公判に出頭する本人の誓約を書面で示し、逃亡のおそれを打ち消します。
裁判所が懸念するのは、①パスポートで出国できること、②日本国内に監督する家族がいないこと、③在留資格を失えば日本に残る理由がなくなること、④言語の壁で裁判所の連絡が届かないおそれです。これらは一つずつ対策が立てられる事情であり、弁護人は次の資料を保釈請求書に添付します。パスポートを弁護人が保管する旨の報告書、住居の賃貸借契約書や住民票、身元引受人の身元引受書と身分証明書、在留カードの写し、勤務先の在職証明や学校の在籍証明、家族の陳述書、本人の誓約書(指定の住居に居住し、関係者に接触せず、公判期日に出頭する)です。近年の刑事訴訟法改正で、裁判所が保釈の条件として監督者を選任し出頭を確保させる制度(刑訴法98条の4以下)も設けられており、身元引受人が監督者を引き受ける用意があると示すのも有効です。
身元引受人は誰になれますか
法律上の資格制限はなく、日本に居住し、被告人と同居または日常的に連絡が取れ、公判への出頭を監督できる人が望ましく、配偶者・親族・勤務先の上司・友人・支援者などがなります。
裁判所が重視するのは、身元引受人が被告人の生活を実際に監督できるかどうかです。中国にいる親族は日本国内での監督ができないため評価は限られます。日本に親族がいない場合は、勤務先の代表者や上司、学校の教員、日本人の配偶者や交際相手、所属団体の責任者などに依頼します。身元引受書には、被告人を自宅や社宅に住まわせること、公判期日に同行すること、連絡が取れなくなれば直ちに弁護人に知らせることなどを記載します。
保釈保証金はどのように決まり、戻ってきますか
保証金の額は、犯罪の性質・情状、証拠の重要性、被告人の資産などを考慮して裁判所が定め(刑訴法93条)、保釈が取り消されたり逃亡したりしなければ判決後に全額が返還されます。
保証金は、被告人が逃げたら失う金額として、本人や家族の経済状況に応じて定められます。無罪・有罪を問わず裁判が終わって保釈が失効すれば還付されますが、条件違反で取り消されると全部または一部が没取されます(刑訴法96条)。
保釈された後に守るべき条件と、違反したらどうなりますか
指定された住居に住むこと、関係者と接触しないこと、出国しないこと、公判期日に出頭することが典型的な条件で、違反すると保釈が取り消され、保証金が没取され、再び収容されます。
裁判所は保釈の際に、住居の制限、被害者・共犯者・証人との接触禁止、海外渡航の禁止、旅行の際の届出などの条件を付けます(刑訴法93条3項)。逃亡・罪証隠滅・条件違反があれば保釈は取り消されます(刑訴法96条)。微信で共犯者や被害者と連絡を取ることも接触に当たります。転居や帰国の必要が生じたときは、弁護人を通じて裁判所の許可を求めてください。
保釈と在留資格・入管の収容はどう関係しますか
在留資格が有効であれば保釈後も通常どおり生活できますが、在留期限が切れている、または退去強制事由に当たる場合は、保釈と同時に入管に収容されることがあります(入管法63条)。
入管法63条は、刑事手続の対象となっている外国人についても退去強制の手続を進められると定めています。勾留中は入管の収容は行われませんが、保釈で身柄が解放されると、オーバーステイや退去強制事由がある人は収容令書によって収容されることがあり、保釈を得ても自宅には帰れません。弁護人は、保釈請求と並行して仮放免や在留特別許可(入管法50条)の見通しを検討する必要があります。勾留中に在留期限が到来するときは、期限内に更新申請を行うことが最も重要です。
中国籍の方に特有の留意点
- パスポートの扱い:出国しないことを誓約し、パスポートは弁護人が預かるのが通常です。領事館で旅券の再発行を申請しないことも約束します。
- 身元引受人:中国にいる家族は日本国内での監督ができないため、日本に住む親族・勤務先・学校関係者に依頼します。
- 保証金の送金:中国からの送金は外貨管理の手続で時間がかかることがあるため、起訴前から準備を始めてください。
- 通訳:保釈後の裁判所からの連絡は日本語で届くため、弁護人と連絡体制を決めておきます。法廷では通訳人がつきます(刑訴法175条)。
- 在留への影響:1年を超える実刑(入管法24条4号リ)や、別表第一の在留資格者の執行猶予付き拘禁刑(同4号の2)は退去強制事由となるため、保釈後の期間は示談や情状立証の準備に使います。
弁護士に相談すべき場面
- 逮捕・勾留された家族が起訴される見込みで、起訴後すぐに保釈を請求したいとき。
- 保釈が却下され、理由を分析して再請求や準抗告をしたいとき。
- 日本に親族がおらず、身元引受人をどうするか決められないとき。
- 在留期限が勾留中に切れそうで、保釈後の入管収容が心配なとき。
舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針ですが、立会いが認められることは現状ほとんどありません。それでも、取調べの直前に捜査官と協議することで、通訳の確保や取調べの範囲を確認し、不当な取調べを牽制する効果があります。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があります。
よくある質問
逮捕されてすぐに保釈を請求できますか
できません。保釈は起訴後の被告人のための制度です(刑訴法88条)。起訴前は、勾留の必要性を争う準抗告や勾留理由開示で身柄解放を求めます。
外国人は保釈されないと聞きましたが本当ですか
外国籍であること自体は除外事由ではありません。パスポートの預託、身元引受人、有効な在留資格、住居と仕事を具体的に示して逃亡のおそれを打ち消せば、保釈が認められる事件は多くあります。
身元引受人は中国にいる親でもなれますか
形式上は可能ですが、日本国内で監督できないため裁判所の評価は限られます。日本に住む親族、勤務先の責任者、学校関係者などに依頼するのが通常です。
保釈されたら中国に一時帰国できますか
保釈の条件として出国は禁じられるのが通常で、パスポートも弁護人が預かります。無断で出国すれば保釈が取り消され保証金は没取されます(刑訴法96条)。
保釈されても入管に収容されると言われました
在留期限が切れている、または退去強制事由がある場合は、保釈と同時に入管の収容令書で収容されることがあります(入管法63条)。保釈請求と並行して仮放免や在留特別許可の準備が必要です。
根拠条文・出典
- 刑事訴訟法88条(保釈の請求)、89条(権利保釈)、90条(裁量保釈)、93条(保証金・保釈の条件)、96条(保釈の取消し・保証金の没取)、98条の4以下(監督者)
- 刑事訴訟法82条(勾留理由開示)、203条・205条・207条・208条(逮捕・勾留の手続)、419条・429条(抗告・準抗告)、175条(通訳)、39条1項(接見交通)
- 出入国管理及び難民認定法63条(刑事手続との関係)、50条(在留特別許可)、24条4号リ・4号の2(退去強制事由)、73条の2(不法就労助長)
関連する解説
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