外国人の刑事事件Q&A|逮捕・在留資格・強制送還の疑問103問【2026年版】
2026/10/18
外国人の刑事事件とは、日本国籍を持たない人が被疑者・被告人となる刑事事件をいい、刑事処分の結果がそのまま在留資格や強制送還(退去強制)に結びつく点に特徴がある。本ページは、外国人の刑事事件について寄せられる質問を、逮捕直後の対応から判決後の入管手続まで103問にまとめたものである。
この記事の要点
- 逮捕だけで強制送還されることはなく、在留への影響は「刑の種類×罪名×在留資格」で決まる。
- 薬物犯罪は執行猶予でも、特別永住者を除くすべての在留資格で退去強制事由になる(入管法24条4号チ)。
- 就労・留学・家族滞在などの人は、窃盗・傷害・詐欺などで拘禁刑なら執行猶予でも退去強制事由になる(同条4号の2)。
- 1年を超える実刑は、特別永住者を除き、永住者を含むすべての在留資格で退去強制事由になる(同条4号リ)。
- 退去強制事由に当たっても、在留特別許可・監理措置・取消訴訟で日本に残る道がある。
目次
- 外国人の家族が逮捕されたら、まず何をすればよいですか
- 逮捕から判決まで、手続はどう進み、どのくらいかかりますか
- 通訳・取調べ・黙秘はどう扱われますか
- 大使館・本国の家族・海外からの依頼はどうなりますか
- 釈放・保釈・示談・不起訴はどう目指しますか
- 罰金・執行猶予・実刑で、在留資格はどうなりますか
- 在留資格の種類によって、結論はどう変わりますか
- 罪名ごとに、在留への影響と注意点はどう違いますか
- 強制送還(退去強制)を避ける方法と、再入国の可否は
- 前科は、更新・永住・帰化にどう影響しますか
- 外国人の刑事事件は、どんな弁護士に頼むべきですか
- 一覧表で確認する
外国人の家族が逮捕されたら、まず何をすればよいですか
最初の72時間に弁護人を接見に向かわせることが、刑事処分と在留資格の両方を守る出発点です。
Q1.外国人の家族が逮捕されました。まず何をすればよいですか。
まず、どの警察署に留置されているかを確かめ、刑事弁護人に接見(面会)を依頼してください。逮捕から72時間は家族でも面会できないことが多く、この間に本人と会えるのは弁護人だけです。取調べは逮捕直後から始まり、最初の数日の供述がその後の処分と在留資格を左右するため、黙秘権の使い方と通訳の確保を早く本人に伝える必要があります。
Q2.家族がどこの警察署にいるのか分かりません。どう調べればよいですか。
逮捕した警察署または逮捕現場を管轄する警察署に電話で問い合わせるのが基本ですが、家族からの問い合わせには答えない警察署もあります。弁護士であれば弁護人になろうとする者として照会でき、勾留決定の後は勾留場所が裁判所から通知されます。依頼の際は、本人の氏名(パスポート表記)・生年月日・国籍・逮捕された日と場所・分かれば罪名を伝えてください。
Q3.弁護士は必ず頼まなければなりませんか。お金がない場合はどうなりますか。
法律上、捜査段階で弁護人を付けることは義務ではありませんが、外国人事件では刑事処分と在留資格の両方を見通した対応が必要になるため、早期の弁護人選任を強くお勧めします。資力が基準額(50万円)に満たない場合は、勾留が決まった段階で国選弁護人を請求できます(刑事訴訟法37条の2)。逮捕直後は、弁護士会の当番弁護士を1回無料で呼ぶこともできます。
Q4.国選弁護人が母国語を話せません。私選弁護人に替えることはできますか。
できます。私選弁護人を選任すれば、国選弁護人は解任されます。国選弁護人も通訳を介して接見しますが、通訳の手配に時間がかかり、接見の時間や回数が限られがちです。当事務所では、中国語の専属通訳または中国律師が接見に同行します。
Q5.家族が海外(本国)にいます。日本の弁護士に依頼できますか。
できます。弁護人を選任できるのは本人のほか、配偶者・直系の親族・兄弟姉妹などで(刑事訴訟法30条2項)、家族が海外にいても委任契約を結ぶことができます。契約書の取り交わし、費用の送金、報告の方法(メール・微信など)を最初に決めておけば、時差があっても進行を共有できます。
Q6.会社や学校に逮捕のことを知られますか。
警察から勤務先や学校に必ず連絡が行くわけではありませんが、無断欠勤・欠席が続けば事実上知られることが多く、報道されることもあります。外国人の場合、解雇や退学で在留資格の基礎となる活動ができなくなると、在留資格の取消しや更新不許可につながるおそれがあります。勤務先・学校への説明は、在留への影響を踏まえて弁護人と内容を決めてから行うのが安全です。
Q7.逮捕されたことは、本国の大使館や本国の家族に伝わりますか。
本人が希望すれば、警察は本国の領事機関に遅滞なく通報します(領事関係に関するウィーン条約36条)。中国籍の場合は日中領事協定があり、本人の要請があるか否かにかかわらず、拘束の日から4日以内に中国の領事機関へ通報されます(同協定8条1項(b))。領事館から本国の家族に連絡が行くかどうかは領事館の判断です。難民申請中など本国に知られたくない事情がある場合は、早めに弁護人に伝えてください。
Q8.外国人だという理由で、日本人より不利に扱われますか。
法律上、国籍で刑の重さが変わることはありませんが、実務では「住居が定まらない」「帰国して逃亡するおそれがある」と判断されやすく、勾留や保釈で不利に働くことがあります。また、同じ刑でも在留資格への影響という日本人にはない不利益があります。住居・勤務先・身元引受人を具体的に示し、逃亡のおそれがないことを書面で示すことが重要です。
Q9.母国では合法なのに、日本では犯罪になる行為はありますか。
あります。大麻(使用も処罰対象)、母国で処方された一部の医薬品の持込み、オンラインカジノでの賭博、他人名義の銀行口座や在留カードの譲渡・譲受けなどは、日本では処罰されます。日本の刑法は日本国内で行われた行為に適用されるため(刑法1条)、母国の法律で許されていることは理由になりません。知らなかったことは故意の判断で争う余地がある場合に限られます。
Q10.逮捕の連絡を受けた家族は、何を用意しておけばよいですか。
在留カードとパスポートの写し、在留資格と在留期限、勤務先や学校の情報、家族関係の資料(婚姻証明・子の在学証明など)を手元に集めてください。これらは勾留への不服申立てや保釈請求で「逃亡のおそれがない」ことを示す資料になり、のちに入管手続でも使います。身元引受人になれる人(日本に住む家族・雇用主など)の連絡先も整理しておくと、弁護活動が早く進みます。
逮捕から判決まで、手続はどう進み、どのくらいかかりますか
起訴・不起訴の判断までは最長23日程度で、この期間の弁護活動が結果を大きく左右します。
Q11.逮捕された後、どのような流れで手続が進みますか。
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、検察官は24時間以内に勾留を請求するかを決めます(刑事訴訟法203条・205条)。勾留が認められると原則10日、延長されると最大でさらに10日拘束され、その間に起訴か不起訴かが決まります(同法208条)。逮捕から起訴・不起訴の判断まで、最長で23日程度です。
Q12.「逮捕」と「勾留」は何が違いますか。
逮捕は最長72時間の短い身柄拘束で、勾留は裁判官が認める最長20日の拘束です。中国語の「拘留」は中国では行政拘留や刑事拘留を指すことがあり、日本の「勾留」と意味が一致しないため注意が必要です。勾留の決定には準抗告という不服申立てができ(刑事訴訟法429条)、認められれば釈放されます。
Q13.起訴されたら、裁判まで何か月くらいかかりますか。
罪を認めている事件では、起訴から1〜2か月ほどで第1回公判が開かれ、1回で審理を終えて2週間ほどで判決が言い渡されることが多いです。否認事件や裁判員裁判の対象事件では、公判前整理手続を経るため数か月から1年以上かかることがあります。判決に不服があれば、言渡しの翌日から14日以内に控訴できます(刑事訴訟法373条)。
Q14.勾留期間が満了したらどうなりますか。
勾留期間の満了までに、起訴・不起訴(略式命令による罰金を含む)・処分保留での釈放のいずれかが決まります。在留資格がある人は起訴されなければ釈放されますが、オーバーステイなど退去強制事由がある人は、釈放と同時に入管に身柄を引き渡され、収容されることが多いです。入管に移った後は、監理措置や在留特別許可の手続に切り替えて対応します。
Q15.逮捕されずに警察から呼び出されました(在宅事件)。どう対応すればよいですか。
呼出しに応じる前に弁護士に相談し、取調べで話す内容と黙秘する範囲を決めておくことをお勧めします。在宅事件でも起訴されれば前科がつき、在留資格に影響します。在宅事件の間に在留期限が来る場合は、事件が終わるのを待たずに期限内に更新を申請してください。
Q16.実名で報道されますか。
報道するかどうかは警察の発表と報道機関の判断によるため、確実に避ける方法はありません。外国人事件では「中国籍の会社員」のように国籍が報じられることが多く、本国のSNSで拡散することもあります。弁護人は、早期の示談や不起訴に向けた活動で、続報や起訴時の報道を減らすよう努めます。
Q17.有罪判決の後、身柄はどうなりますか。
実刑判決なら刑務所で服役し、刑期を終えるか仮釈放になると入管に引き渡され、退去強制手続に進むのが通常です。執行猶予判決なら釈放されますが、在留資格がない人や退去強制事由に当たる人は、そのまま入管に収容されることがあります。在留資格があり退去強制事由に当たらない人は、在留期限まで日本で生活を続けられますが、更新の審査で前科が考慮されます。
Q18.外国人が実刑で服役した場合、どのくらいで出られますか。
刑期の3分の1を過ぎると仮釈放の対象になり得ますが(刑法28条)、実際の時期は事案と施設での生活状況によります。外国人受刑者は、仮釈放と同時に入管へ引き渡されて送還されることが多く、仮釈放の判断でも帰住先が考慮されます。服役中から在留特別許可を見据えた準備を進めておくことが大切です。
通訳・取調べ・黙秘はどう扱われますか
通訳は必ず付き、黙秘は不利益に扱われませんが、日本語の調書への署名には慎重であるべきです。
Q19.取調べや裁判に通訳はつきますか。
つきます。取調べでは警察・検察が通訳人を手配し、裁判でも裁判所が通訳人を付けます(刑事訴訟法175条)。公判の通訳料を被告人が負担することは通常ありません。少数言語では適任の通訳人が見つからず、英語など別の言語で代用されることがあるため、母語での通訳を求めたいときは弁護人に伝えてください。
Q20.警察の通訳がおかしいと感じます。替えてもらえますか。
替えるよう求めることはできます。通訳の誤りは、そのまま供述調書の内容になり、後から覆すのが難しくなります。誤訳を感じたら、その場で署名をせず、弁護人に具体的な箇所を伝えてください。弁護人が警察・検察に申入れをし、公判では通訳の正確性を争うこともあります。
Q21.取調べで黙秘してもよいですか。黙秘すると不利になりますか。
黙秘してかまいません。黙秘権は憲法38条1項で保障され、取調べの前に告げられることになっています(刑事訴訟法198条2項)。黙秘したことを理由に有罪とされたり刑を重くされたりすることはありません。どの点を話し、どの点を黙秘するかは事件によって異なるため、最初の接見で弁護人と決めるのが最善です。
Q22.実際に罪を犯したのなら、素直に認めた方がよいですか。
事実に争いがなければ、認めて反省を示すことで不起訴や執行猶予の可能性が高まる場合があります。ただし、認める範囲を誤ると、実際より重い罪名や悪い動機で調書が作られることがあります。認めるにしても、どの事実を認め、どの点は違うと言うべきかを弁護人と確認してから話してください。
Q23.日本語で書かれた供述調書に署名を求められました。署名しなければなりませんか。
署名・押印は義務ではなく、拒否できます(刑事訴訟法198条5項)。調書は通訳を通じて読み聞かされますが、内容が違うと感じたら訂正を求めることができ、訂正されなければ署名しないでください。一度署名した調書は裁判の証拠になり得るため、内容に自信がないときは弁護人と話してから判断するのが安全です。
Q24.取調べに弁護士を立ち会わせることはできますか。
日本では取調べへの弁護人の立会いは法律上の権利として認められておらず、求めても認められないことがほとんどです。当事務所では、外国人の事件で取調べへの立会いを積極的に求めるとともに、取調べの直前に担当の警察官と協議し、黙秘の意思や通訳の扱いを申し入れて牽制しています。この申入れが有利な処分につながった例も少なくありません。
Q25.取調べは録音・録画されますか。
法律上、録音・録画が義務づけられているのは、裁判員裁判の対象事件と検察の独自捜査事件で、逮捕・勾留中の取調べに限られます(刑事訴訟法301条の2)。それ以外の事件でも運用で録音・録画されることがありますが、すべてではありません。通訳を介した取調べでは、のちに誤訳を確かめられるよう、録音・録画を求める申入れをすることがあります。
Q26.家族は面会できますか。母国語で話せますか。
接見禁止が付いていなければ、家族も平日の日中に1回15〜20分ほど面会できますが、警察官が立ち会います。外国語での会話は内容を確認できないため、通訳の同席を求められたり、日本語での会話を求められたりすることが多いです。接見禁止が付いていても、弁護人は立会いなしで、通訳を連れて面会できます(刑事訴訟法39条1項)。
Q27.接見禁止中です。母国語で手紙を書いて送ることはできますか。
接見禁止が付いている間は、家族からの手紙も原則として本人に渡りません。接見禁止の一部解除を裁判所に申し立て、家族との面会や手紙を認めてもらえることがあります。接見禁止がない場合でも外国語の手紙は翻訳・検査に時間がかかるため、急ぐ用件は弁護人を通じて伝えるのが確実です。
Q28.外国語の本や衣類を差し入れできますか。
差し入れできます。外国語の本も可能ですが、内容の検査に時間がかかることがあり、冊数などの制限があります。衣類はひもの付いたものなど持ち込めない物があり、留置場ごとに扱いが異なるため、事前に留置担当に確認してください。宗教上の食事などの配慮は、可能な範囲で認められる例があります。
大使館・本国の家族・海外からの依頼はどうなりますか
中国籍の場合は本人の希望にかかわらず4日以内に領事機関へ通報され、海外の家族からも弁護士に依頼できます。
Q29.大使館・領事館は何をしてくれますか。
領事は面会や本人の家族への連絡、弁護士名簿の提供などはしますが、弁護をしたり釈放を求めたりはしません。日本の刑事手続に介入することはできないため、処分の見通しや在留への影響は日本の弁護人に相談する必要があります。
Q30.本国の家族から弁護士費用や保釈金を送金できますか。
送金できます。弁護士費用は事務所の口座への国際送金で支払えますが、着金までに数日かかることがあるため、急ぐ接見は日本にいる親族や知人に立て替えてもらうこともあります。保釈保証金は裁判所に納める必要があり、本人以外の人が納めることもできます。送金名義と目的を書面で残しておくと、後の返還手続で混乱しません。
Q31.日本で処罰された後、本国(中国)でも処罰されますか。
可能性はあります。中国の刑法は、国外で罪を犯した中国国民にも適用され(中国刑法7条。ただし中国刑法の最高刑が3年以下の有期徒刑である罪は追及しないことができる)、外国で裁判を受けても中国で追及できるとしつつ、外国で刑罰を受けた場合は刑を免除または軽減できると定めています(同法10条)。実際に追及されるかは罪の種類と重さによりますので、帰国前に確認しておくと安心です。
Q32.日本の前科は、本国の無犯罪証明(无犯罪记录证明)に載りますか。
本国の公安機関が出す無犯罪証明は本国内の記録に基づくのが原則で、日本の前科が自動的に載る仕組みは確認できていません。ただし、日本でビザや永住・帰化を申請する際は、日本の前科を申請書に記載する必要があり、本国の証明で隠せるものではありません。
Q33.日本で有罪になった後、本国で服役することはできますか。
受刑者を本国に移して服役させる制度(国際受刑者移送)はありますが、対象は日本が条約を結んだ国に限られます。中国との間にはこの条約がないため、中国籍の人が日本の判決による刑を中国で服役することはできません。犯罪人引渡条約も日本が結んでいるのは米国と韓国だけです。
Q34.強制送還の費用は誰が払いますか。
原則として本人の自費での出国が求められ、航空券を自分で用意できる人は早く送還されます。自費で出国できない場合は国費で送還されますが、時期の見通しが立ちにくくなります。家族が航空券代を負担するかどうかは、在留特別許可を争うかどうかの方針とあわせて決めてください。
Q35.短期滞在(観光)で来日中に逮捕されました。帰国の便やホテルはどうなりますか。
身柄拘束中は予定の便に乗れず、キャンセル料などは本人の負担になります。罪を認めた軽い事件では、略式の罰金で早期に釈放され、帰国できることもあります。否認する場合や起訴されて裁判になる場合は滞在が長引くため、短期滞在の在留期限と出国のタイミングを弁護人と調整する必要があります。
釈放・保釈・示談・不起訴はどう目指しますか
外国人でも保釈・示談・不起訴は可能で、起訴前の不起訴が在留を守る最も確実な方法です。
Q36.外国人でも保釈は認められますか。
認められます。保釈は起訴された後に請求でき(刑事訴訟法88条)、外国人であることだけを理由に却下されることはありません。ただ、逃亡のおそれを理由に却下されやすいため、日本での住居、家族、勤務先、身元引受人、旅券を弁護人が預かることなどを具体的に示します。起訴前の段階には保釈の制度はなく、勾留への準抗告や勾留取消しで釈放を求めます。
Q37.保釈金はいくらくらいですか。誰が払えますか。
保釈保証金の額は事件の内容や本人の資力で決まり、数百万円になることが多いです。本人以外の家族や知人が納めることもでき、保釈の条件を守って裁判が終われば全額返還されます。保釈の後に入管に収容される見込みがある人は、監理措置や仮放免の保証金が別に必要になることがあります。
Q38.保釈中や起訴前に、本国へ帰国(出国)することはできますか。
保釈中は住居の制限などの条件が付き、裁判所の許可なく旅行や出国をすることはできません。また、令和5年の刑事訴訟法改正により、拘禁刑以上の判決の宣告を受けた人は裁判所の許可なく出国できないこととされました(刑事訴訟法342条の2)。起訴前で身柄を拘束されていない段階でも、捜査中の出国は捜査機関から問題視されやすく、入管法上も出国の確認が留保されることがあります(入管法25条の2)。
Q39.被害者と示談できますか。外国人でも示談の効果はありますか。
できます。被害者がいる事件では、示談の成立が不起訴や執行猶予の判断に大きく影響し、外国人の場合は在留資格を守るうえでも決定的に重要です。加害者本人が被害者に直接連絡することは避け、弁護人を通じて交渉するのが原則です。示談書には、被害者が処罰を求めない意思を明記してもらうよう努めます。
Q40.被害者も外国人です。示談はどう進めますか。
被害者が外国人の場合も、弁護人が通訳を介して交渉し、示談書を日本語と被害者の母語で作ります。被害者が帰国してしまうと交渉が難しくなるため、早く着手することが大切です。被害者の在留資格や連絡手段(WeChatなど)に配慮した進め方が必要になります。
Q41.外国人は不起訴になりやすいというのは本当ですか。
一概には言えません。送還が見込まれることなどが考慮されて起訴猶予とされる例があると指摘されることはありますが、国籍によって不起訴になりやすいという基準はありません。不起訴を得るには、示談、反省、再犯防止の環境、在留資格への影響の大きさを、検察官に具体的に示す必要があります。
Q42.「嫌疑不十分」と「起訴猶予」では、在留への影響は違いますか。
どちらも不起訴で前科はつきませんが、起訴猶予は犯罪の事実はあったと検察官が判断したものです。入管の更新審査では、起訴猶予の事実そのものや、その行為の内容が素行の評価で考慮されることがあります。事実を争う事件では、嫌疑不十分や嫌疑なしでの不起訴を目指す意味があります。
Q43.略式命令(罰金)に応じるか、正式裁判で争うか迷っています。在留への影響は違いますか。
略式命令は100万円以下の罰金に限られ(刑事訴訟法461条)、本人が同意しなければ略式手続にはなりません。罰金でも有罪の前科になり、在留期間の更新や永住・帰化で考慮されます。無罪を主張できる事件なら正式裁判で争う選択肢があり、略式命令を受けても14日以内なら正式裁判を請求できます(同法465条)。
Q44.罰金を払えないとどうなりますか。
罰金を納められない場合は、1日以上2年以下の範囲で労役場に留置されます(刑法18条)。外国人の場合、留置中に在留期限が来ることや、留置の後に入管へ引き渡されることがあるため、納付の方法を早めに決めておく必要があります。分納の相談は検察庁の徴収担当で行います。
Q45.押収された在留カードやパスポート、スマートフォンは返してもらえますか。
捜査に必要がなくなれば返還(還付)され、必要がないのに返されない場合は還付を請求できます(刑事訴訟法123条・222条)。在留カードを押収されている間は、押収品目録の交付書を持ち歩いてください。在留期間の更新など手続に旅券や在留カードが必要なときは、弁護人を通じて還付や写しの交付を求めます。
罰金・執行猶予・実刑で、在留資格はどうなりますか
在留への影響は「刑の種類」「罪名」「在留資格の種類」の組合せで決まります。
Q46.逮捕されたら、すぐに強制送還されますか。
逮捕されただけで直ちに強制送還されることはありません。送還されるかどうかは、最終的な処分(不起訴・罰金・執行猶予・実刑)、罪名、在留資格の種類の組合せで決まります。ただし、オーバーステイなど在留資格がない人は、刑事手続の結果にかかわらず退去強制手続に進みます。
Q47.どのような刑を受けると強制送還(退去強制)の対象になりますか。
主なものは次の3つです。①薬物犯罪で有罪判決を受けた場合(執行猶予でも該当。入管法24条4号チ)、②1年を超える拘禁刑の実刑判決を受けた場合(特別永住者を除き在留資格の種類を問わない。同号リ)、③就労・留学・家族滞在などの在留資格の人が、窃盗・傷害・詐欺など特定の罪で拘禁刑に処せられた場合(執行猶予でも該当。同条4号の2)です。下の一覧表もご覧ください。
Q48.罰金刑なら日本に残れますか。
薬物犯罪と、旅券法違反などの一部の入管関係の罪を除けば、罰金刑は退去強制事由に当たりません。ただし、就労・留学・家族滞在などの在留資格では、在留期間の更新や変更の審査で素行が考慮され、罰金の前科が理由で不許可になることがあります。罰金でも、反省や再発防止の資料をそろえて更新に臨むことが大切です。
Q49.執行猶予付きの判決なら日本に残れますか。
在留資格の種類と罪名によります。永住者・日本人の配偶者等・定住者などの身分系の在留資格の人は、薬物犯罪を除き、執行猶予なら退去強制事由に当たりません。一方、就労・留学・家族滞在などの在留資格の人は、窃盗・傷害・詐欺・住居侵入・文書偽造などで拘禁刑に処せられると、執行猶予付きでも退去強制事由に当たります(入管法24条4号の2)。
Q50.入管法24条4号の2の対象になるのは、どの罪ですか。
刑法の住居を侵す罪、通貨・文書・有価証券・支払用カード・印章の偽造の罪、賭博の罪、殺人の罪、傷害の罪、逮捕・監禁の罪、略取・誘拐・人身売買の罪、窃盗・強盗の罪、詐欺・恐喝の罪、盗品等に関する罪のほか、自動車運転処罰法の危険運転致死傷などの罪、暴力行為等処罰法・盗犯等防止法の一部の罪などです。過失運転致死傷や不同意わいせつなどの性犯罪は列挙されていませんが、更新の審査では当然に不利に働きます。
Q51.執行猶予判決を受けた後、入管に収容されますか。
退去強制事由に当たる場合や在留資格がない場合は、判決の後に入管に収容されることがあります。収容を避けるには、判決前から監理措置(入管法44条の2)の準備を進め、監理人となる家族や支援者を確保しておくことが有効です。在留資格があり退去強制事由に当たらない人は、収容されません。
Q52.不起訴(起訴猶予)でも、在留期間の更新に影響しますか。
不起訴なら前科はつかず、退去強制事由にも当たりません。ただ、在留期間の更新では素行が審査されるため、事件の内容が考慮される可能性は残ります。更新の際には、示談書や不起訴処分告知書などで事件が解決したことを示せるよう、資料を保管しておいてください。なお、オーバーステイなど在留資格のない人は、不起訴でも退去強制手続に進みます。
Q53.刑の一部執行猶予を受けた場合はどうなりますか。
刑の一部の執行を猶予された場合、実際に服役する部分の期間が1年を超えるかどうかで、入管法24条4号リの該当性が判断されます。服役部分が1年以下であれば同号には当たりませんが、就労・留学などの在留資格の人で特定の罪であれば、4号の2に当たります。
Q54.控訴するか、判決を確定させるかで、在留への影響は変わりますか。
変わることがあります。1年を超える実刑(入管法24条4号リ)や同条4号の2は、刑に「処せられた」こと、つまり判決の確定によって該当するため、控訴すれば確定までの間はこれらの事由は生じません。ただし、薬物犯罪(同条4号チ)は条文が「有罪の判決を受けた者」となっているため、確定を待たずに該当すると扱われるおそれがあります。控訴審の間も勾留が続いたり在留期限が来たりするため、控訴の利益と身柄・在留への影響を比べて決める必要があります。控訴期間は判決の翌日から14日です。
Q55.逮捕されただけで、在留資格が取り消されることはありますか。
逮捕を理由に在留資格が取り消される制度はありません。ただし、勾留が長引いて勤務先を解雇されたり学校を除籍されたりし、在留資格に応じた活動を一定期間行わない状態が続くと(就労・留学などは3か月、日本人の配偶者等などは配偶者としての活動について6か月)、在留資格の取消しの対象になり得ます(入管法22条の4第1項6号・7号)。身柄拘束が長引きそうなときは、勤務先や学校との関係を保つ手当てを弁護人と考えます。
Q56.勾留中に在留期限が来てしまいます。更新はできますか。
できます。在留期限の前に更新を申請すれば、結果が出るまで、または期限から2か月を経過するまでは、適法に在留できます(入管法20条6項)。本人が入管に出頭できないため、届出をした弁護士や行政書士による申請の取次ぎなどの方法で申請します。期限を過ぎるとオーバーステイになり、刑事事件の結果とは別に退去強制の対象になるため、最優先で対応すべき事項です。
Q57.保釈中に在留期限が来たらどうすればよいですか。
保釈中でも、期限前に自分で入管に行って更新を申請できます。申請書の犯罪歴の欄には、係属中の事件を正直に記載し、弁護人の意見書を添えることが考えられます。処分が出るまで(ただし期限から2か月を経過するまで)は特例期間として在留が続くため、判決の時期と更新の結果の時期を見比べて準備します。
Q58.服役中に在留期限が切れたら、どうなりますか。
服役中は在留期間の更新は難しく、刑期を終えた時点で在留資格がなかったり退去強制事由に当たったりすれば、入管に引き渡されます。1年を超える実刑なら退去強制事由に当たるため、出所前から在留特別許可を求める準備(家族の資料、雇用の見込み、反省と更生の資料)を整えておくことが大切です。
在留資格の種類によって、結論はどう変わりますか
永住者・日本人の配偶者等などの身分系と、就労・留学などの資格とでは、退去強制になる範囲が大きく異なります。
Q59.永住者でも強制送還されることはありますか。
あります。永住者でも、薬物犯罪で有罪判決を受けた場合(執行猶予でも)や、1年を超える実刑判決を受けた場合は、退去強制事由に当たります。一方、窃盗や傷害などで執行猶予にとどまれば、永住者は退去強制事由に当たりません。日本での生活の長さや家族関係は在留特別許可で重く考慮されます。
Q60.日本人の配偶者がいる場合、結論は変わりますか。
日本人の配偶者等の在留資格は身分系のため、就労資格の人より退去強制事由に当たる範囲が狭くなります。また、退去強制事由に当たっても、日本人配偶者や子との家族関係は在留特別許可で重く考慮されます(入管法50条5項)。夫婦の同居や子の養育の実態を示す資料を早めにそろえることが大切です。
Q61.留学生が逮捕されたら、強制送還されますか。学業はどうなりますか。
留学は就労資格と同じ別表第一の在留資格のため、窃盗・傷害・詐欺などで拘禁刑に処せられると、執行猶予でも退去強制事由に当たります。罰金や不起訴であっても、退学・除籍になれば在留資格の基礎を失います。学校への説明と、出席・単位の扱いについての相談を、早い段階で弁護人と進めることが重要です。
Q62.「技術・人文知識・国際業務」で働いています。執行猶予でも残れますか。
罪名によります。窃盗・傷害・詐欺など入管法24条4号の2の罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予でも退去強制事由に当たり、在留特別許可を求めることになります。列挙されていない罪(過失運転致傷など)の執行猶予なら退去強制事由には当たりませんが、更新の審査で厳しく見られます。起訴前に不起訴を得ることが、在留を守る最も確実な方法です。
Q63.家族滞在の家族は、扶養者が強制送還されたらどうなりますか。
家族滞在は扶養者の在留を前提とする在留資格のため、扶養者が退去強制されると、配偶者や子は在留の基礎を失います。日本で育った子がいる場合は、子の在留資格の変更や、家族全体として在留特別許可を求めることを検討します。扶養者の刑事弁護の段階から、家族全体の在留を見通した方針を立てることが大切です。
Q64.技能実習生や特定技能の人が逮捕されたら、仕事はどうなりますか。
受入れ企業や監理団体は、実習や雇用を続けられない事情を所定の機関に届け出る必要があり、逮捕をきっかけに帰国を求められることがあります。帰国に応じると、刑事手続の途中であっても日本に戻れなくなるおそれがあるため、会社や監理団体から帰国を迫られたら、応じる前に弁護人に相談してください。在留への影響は、就労資格の人と同じ基準で判断されます。
Q65.外国人の従業員が逮捕されました。雇用を続けても問題ありませんか。
逮捕されただけで解雇する理由にはならず、解雇には客観的に合理的な理由が必要です(労働契約法16条)。雇用を続けることは、勾留や保釈、在留特別許可の判断で本人に有利な事情になります。ただし、本人が在留資格の範囲外の仕事をしていた場合などは、会社側の責任(不法就労助長)も問題になり得るため、確認が必要です。
Q66.特別永住者はどうなりますか。
特別永住者の退去強制は、入管特例法22条の限られた場合に限られ、無期または7年を超える拘禁刑の実刑で日本国の重大な利益が害されたと認められる場合などに当たらない限り、退去強制されません。通常の刑事事件では、在留を失うことは原則としてありません。
Q67.仮放免中や監理措置中に逮捕されました。入管への出頭日が来たらどうなりますか。
身柄拘束中は出頭できないため、弁護人から入管に事情を連絡し、出頭日の変更などを求めます。無断で出頭しないと、仮放免や監理措置の取消しの理由にされるおそれがあります。刑事事件の結果は、その後の在留特別許可の判断にも影響します。
Q68.難民認定申請中に逮捕されました。難民の手続はどうなりますか。
難民認定申請中は原則として送還が停止されますが、3回目以降の申請(相当の理由がある資料を提出した場合を除く)や、3年以上の実刑判決を受けた人には、この停止の効力が及びません(入管法61条の2の9第4項)。刑事事件の結果が難民手続にも影響するため、本国への領事通報を含め、早めに弁護人に事情を伝えてください。
Q69.経営管理ビザの経営者が、不法就労助長で問題になった場合はどうなりますか。
事業に関して外国人に不法就労をさせた場合、刑事処罰とは別に、そのような行為をしたこと自体が退去強制事由になります(入管法24条3号の4)。経営者本人の在留と会社の存続の両方に関わるため、在留カードの確認状況など「知らなかった」ことに過失がなかったかが重要な争点になります。
罪名ごとに、在留への影響と注意点はどう違いますか
薬物は執行猶予でも、窃盗・傷害・詐欺は就労・留学などの資格なら執行猶予でも、退去強制事由になります。
Q70.薬物事件(覚醒剤・大麻など)では、執行猶予でも強制送還されますか。
退去強制事由に当たります。麻薬・大麻・覚醒剤・あへんなどの薬物犯罪は、有罪判決を受ければ執行猶予でも、永住者や日本人の配偶者等であっても(特別永住者を除く)退去強制事由になります(入管法24条4号チ)。在留を守るには、起訴前の不起訴(鑑定結果・故意・押収手続の適法性を争うことを含む)が決定的に重要です。
Q71.覚醒剤と大麻では、どちらが重い罪ですか。所持と輸入では違いますか。
法定刑は、覚醒剤の方が大麻より重く、単純所持より営利目的、所持より輸入の方が重くなります。輸入事件は税関・空港での発覚が多く、運び役として依頼されただけで中身を知らなかったと主張される事件では、故意の有無が最大の争点になります。いずれも在留への影響は重大です。
Q72.万引き(窃盗)で捕まりました。罰金なら在留は大丈夫ですか。
罰金なら退去強制事由には当たりませんが、就労・留学などの在留資格では更新の審査で不利になります。窃盗で拘禁刑になれば、執行猶予でも入管法24条4号の2により退去強制事由に当たります。被害店舗との示談や被害弁償を早く進め、不起訴を目指すことが最善です。
Q73.特殊詐欺の受け子・出し子をしてしまいました。在留はどうなりますか。
詐欺は入管法24条4号の2の対象のため、就労・留学などの在留資格の人は、執行猶予でも退去強制事由に当たります。受け子事件は組織的な犯行として実刑の可能性も高く、1年を超える実刑なら在留資格の種類を問わず退去強制事由になります。詐欺と知らなかった、つまり故意を争えるかどうかの見極めが重要です。
Q74.銀行口座や在留カードを他人に売ってしまいました。どうなりますか。
口座の譲渡は犯罪収益移転防止法違反として処罰され、詐欺に使われれば詐欺の幇助を問われることもあります。行使の目的で、他人名義の在留カードを提供・収受したり、偽造のカードを所持・提供・収受したりする行為は、刑事処罰とは別に、行為そのものが退去強制事由になります(入管法24条3号の5)。帰国前に口座を売るよう勧誘される例が多く、早めの相談が必要です。
Q75.偽造の在留カードを持っていて逮捕されました。
偽造在留カードの所持・行使・提供などは入管法の罪として処罰され、行使の目的での提供・収受・所持などは、行為そのものが退去強制事由にもなります(入管法24条3号の5)。本人が偽造と知っていたかどうか、どのように入手したかが処分の分かれ目になります。在留資格のない人がカードを買った事件では、刑事事件の後に退去強制手続に進むのが通常です。
Q76.オーバーステイ(不法残留)で逮捕されました。どうなりますか。
不法残留は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象で(入管法70条1項5号)、初めての事件で罪を認めていれば、執行猶予や不起訴となることが多いです。ただし、刑事手続の後は入管に引き渡され、退去強制手続に進みます。日本人や永住者の家族がいるなど在留を求める事情があれば、在留特別許可を申請します。
Q77.外国人を雇った会社(雇用主)も処罰されますか。
処罰されることがあります。不法就労をさせた人やあっせんした人は不法就労助長罪として、現在は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象で(入管法73条の2)、法人にも罰金が科されます。令和6年の法改正により、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその併科に引き上げられることが決まっており、令和9年4月1日に施行される予定です。在留カードを確認しなかったなど過失がある場合も、知らなかったことを理由に処罰を免れることはできません(同条2項)。
Q78.交通事故や交通違反で、在留資格に影響はありますか。
交通違反の反則金や罰金だけで退去強制事由になることはありません。ただし、過失運転致死傷で1年を超える実刑になれば退去強制事由に当たり、罰金や執行猶予でも更新の審査では不利に働きます。また、危険運転致死傷罪になれば、就労・留学などの在留資格の人は執行猶予でも退去強制事由に当たります(入管法24条4号の2)。飲酒運転や無免許運転(国際運転免許の有効期間切れを含む)は悪質と評価されやすいため、注意が必要です。
Q79.不同意わいせつなどの性犯罪では、在留はどうなりますか。
性犯罪は入管法24条4号の2に列挙されていないため、執行猶予であれば就労資格の人も直ちに退去強制事由にはなりません。ただし、1年を超える実刑なら退去強制事由に当たり、執行猶予でも更新の審査では極めて不利です。被害者との示談の成否が処分を大きく左右し、故意や同意の有無を争う事件も少なくありません。
Q80.傷害・暴行事件では、在留はどうなりますか。
傷害罪と暴行罪は、いずれも刑法の「傷害の罪」の章に含まれ、入管法24条4号の2の対象です。就労・留学などの在留資格の人が拘禁刑に処せられると、執行猶予でも退去強制事由に当たります。罰金にとどまれば退去強制事由には当たりませんが、更新の審査では不利に働きます。正当防衛や、相手の怪我との因果関係を争える事件もあるため、最初の取調べから慎重な対応が必要です。
Q81.母国で処方された薬を持ち込んで問題になりました。
日本で規制されている成分を含む医薬品は、母国で処方されたものでも、量や手続によっては麻薬及び向精神薬取締法などの違反になります。持込みの目的が治療で、規制を知らなかった事情があれば、故意や違法性の認識を争い、不起訴を目指せることがあります。薬物犯罪として有罪になると在留への影響が非常に大きいため、早期の相談が必要です。
強制送還(退去強制)を避ける方法と、再入国の可否は
在留特別許可、監理措置、取消訴訟と執行停止を、刑事手続の段階から見据えて準備します。
Q82.退去強制事由に当たっても、日本に残る方法はありますか。
あります。法務大臣が在留を特別に許可する在留特別許可の制度があり(入管法50条)、家族関係、日本での在留期間、素行、人道上の事情などが考慮されます(同条5項)。1年を超える実刑判決を受けた人でも、特別の事情があれば許可され得ます(同条1項ただし書)。当事務所は、刑事手続の段階から在留特別許可を見据えた資料づくりを進め、許可を得た実績があります。
Q83.在留特別許可の申請は、いつまでにしなければなりませんか。
収容令書で収容されたとき(仮放免中を含む)または監理措置に付されたときから、退去強制令書が発付されるときまでに申請します。退去強制令書が出た後は申請できなくなるため、刑事事件の判決前後から準備を始めておく必要があります。申請は原則として本人が行い、16歳未満や病気などで本人ができないときは家族が代わりに申請できます。
Q84.有罪判決を受けても、在留特別許可が認められた例はありますか。
あります。出入国在留管理庁の公表事例には、刑事処分を受けた後でも、日本人の配偶者や子との家族関係、長期の在留、更生の状況などを理由に許可された例が含まれています。もっとも、1年を超える実刑の事案で許可された公表事例は、定着性の強い身分系の在留資格の人に偏っています。本件と事情の近い公表事例を探し、同種の事案との均衡を主張するのが有効です。
Q85.監理措置とは何ですか。仮放免とどう違いますか。
監理措置は、収容せずに、監理人の監督の下で社会で生活しながら退去強制手続を進める制度で、令和6年6月10日施行の改正入管法で設けられました(入管法44条の2・52条の2)。仮放免は収容を一時的に解く制度で、改正後は主に健康上・人道上の理由がある場合に用いられます。刑事手続の後に入管へ移される見込みがある人は、監理人となる家族や支援者を事前に確保しておくことが大切です。
Q86.監理人には誰がなれますか。どんな責任がありますか。
監理人は、本人の監理を引き受け、その責任を理解している人の中から選ばれ、家族や支援者のほか弁護士がなることもあります。監理人は、本人の生活状況を把握して指導・監督し、本人が逃亡したり条件に違反したりしたことを知ったとき、本人が死亡したときなどには入管に届け出なければなりません。届出をしなかったり虚偽の届出をしたりすると10万円以下の過料の対象になるため、引き受ける前に内容をよく確認してください。
Q87.退去強制令書が出てしまいました。もう何もできませんか。
できることはあります。退去強制令書の発付処分に対し、6か月以内に取消訴訟を起こすことができ(行政事件訴訟法14条1項)、送還を止めるには執行停止の申立ても必要です(同法25条)。家族関係などの事情が大きく変わった場合には、再審情願という方法もあります。送還は予告なく行われることもあるため、すぐに相談してください。
Q88.強制送還された後、また日本に来ることはできますか。
退去強制された人は原則として5年間(2回目以降は10年間)、出国命令で出国した人は1年間、日本に上陸できません(入管法5条1項9号)。さらに、1年以上の拘禁刑に処せられたことがある人や、薬物犯罪で刑に処せられたことがある人は、期間の定めなく上陸を拒否され得ます(同項4号・5号)。それでも、日本人の家族がいるなどの事情があれば、上陸特別許可が認められる場合があります。
Q89.執行猶予判決の確定前に、自分で帰国した場合はどうなりますか。
注意が必要です。就労・留学などの在留資格の人が、窃盗・傷害・詐欺など入管法24条4号の2と同じ罪で拘禁刑の判決を受け、出国して国外にいる間に判決が確定すると、確定の日から5年間は上陸を拒否されます(入管法5条1項9号の2)。また、1年以上の拘禁刑に処せられたことがあれば、執行猶予付きでも同項4号の上陸拒否事由に当たり得ます(猶予期間を無事に終えて刑の言渡しが効力を失った後の扱いは、個別に確認が必要です)。帰国のタイミングは、再来日の希望の有無とあわせて弁護人と決めてください。
Q90.出国命令とは何ですか。強制送還(退去強制)とどう違いますか。
出国命令は、オーバーステイの人が自ら入管に出頭し、一定の要件を満たす場合に、収容されずに出国できる制度です(入管法24条の3)。上陸拒否期間が1年に短くなる点で、退去強制より有利です。ただし、窃盗などの罪で拘禁刑に処せられたことがある人は対象外となるため、刑事事件を抱えている人は事前の確認が必要です。
Q91.強制送還されたら、日本の家族や財産はどうなりますか。
送還されても、日本に残る家族の在留資格は、それぞれの資格の要件に従って判断されます。預金や不動産などの財産は送還によって失われるわけではありませんが、出国後の管理が難しくなるため、送還前に口座の整理や管理の委任をしておく必要があります。未払いの賃金や敷金の返還などは、代理人を通じて請求できます。
Q92.在留特別許可が不許可になったら、争えますか。
争えます。改正後の制度では、在留特別許可をしない処分に対して行政上の不服申立ての手段はありませんが、裁判所に取消訴訟や義務付け訴訟を起こすことができます。退去強制令書の取消訴訟とあわせて、送還を止める執行停止を申し立てるのが通常です。当事務所は行政事件で多くの解決実績があり、その一部は学術誌で取り上げられています。
前科は、更新・永住・帰化にどう影響しますか
申請書には正直に記載し、刑の消滅までの期間を意識して手続の時期を選びます。
Q93.在留期間の更新申請書の「犯罪を理由とする処分」の欄は、どう書けばよいですか。
日本国外でのものや交通違反等による処分を含めて、該当する処分は正直に記載してください。虚偽の記載は、それ自体が在留資格の取消しや更新不許可の理由になり得ます。不起訴や少年時代の処分をどう書くかは事案によって判断が分かれるため、記載の前に弁護士と確認し、必要なら事情を説明する書面を添えるのが安全です。
Q94.前科があると、永住許可は受けられませんか。
永住許可では素行が善良であることが要件とされ、拘禁刑や罰金の前科があると、刑の消滅(刑法34条の2・27条)までは許可が難しいのが実務の傾向です。罰金なら刑の執行を終えてから5年、執行猶予なら猶予期間を無事に終えることが一つの目安になります。交通違反の反復なども審査で考慮されます。
Q95.前科があると、帰化(日本国籍の取得)はできませんか。
帰化でも素行が善良であることが条件とされ(国籍法5条1項3号)、前科の内容と経過した年数が審査されます。罰金や執行猶予の後、一定の期間を問題なく過ごしてから申請するのが一般的です。申請前に、前科の記録と処分の確定日を整理しておくことが大切です。
Q96.前科は何年で消えますか。
罰金以下の刑は刑の執行を終えて(または執行の免除を得て)から罰金以上の刑に処せられずに5年、拘禁刑は同じく10年を経過すると、刑の言渡しは効力を失います(刑法34条の2)。執行猶予は、猶予期間を取り消されることなく経過すれば、その時点で刑の言渡しが効力を失います(刑法27条)。ただし、入管の上陸審査や在留審査で、過去の事実が一切考慮されなくなるとは限りません。
Q97.外国人の少年(未成年)が事件を起こした場合、在留はどうなりますか。
少年の事件は家庭裁判所の保護処分が中心で、保護処分は刑罰ではないため、それだけで退去強制事由にはなりません。ただし、長期3年を超える拘禁刑に処せられた少年は退去強制事由に当たります(入管法24条4号ト)。保護処分の内容は在留の更新で考慮されることがあるため、家族の監督体制を具体的に示すことが大切です。
外国人の刑事事件は、どんな弁護士に頼むべきですか
刑事弁護と入管手続の両方を扱え、本人・家族と母語で連絡が取れる弁護士を選ぶことをお勧めします。
Q98.外国人の刑事事件では、いつ弁護士に相談すべきですか。
逮捕直後、遅くとも勾留が決まる前に相談するのが最善です。起訴されるかどうかで在留への影響が大きく変わるため、起訴前の弁護活動が最も重要です。在宅事件で警察から連絡を受けた段階でも、取調べを受ける前に相談してください。
Q99.外国人の刑事事件は、どのような弁護士に頼むべきですか。
刑事弁護と入管手続(在留資格・退去強制・在留特別許可・行政訴訟)の両方を扱える弁護士に依頼することをお勧めします。刑事事件の結果だけを見て弁護方針を立てると、判決の後に在留を失うことがあるからです。通訳の体制や、本人・家族と母語で連絡が取れるかも確認してください。
Q100.弁護士費用はどのくらいかかりますか。通訳費用は別ですか。
事件の内容、身柄拘束の有無、接見の場所によって異なるため、ご依頼の前に、活動の範囲と費用の内訳をご説明し、お見積りをお示しします。当事務所では、外国人の刑事事件の接見に中国語の専属通訳または中国律師が同行します。
Q101.すでに別の弁護士に依頼していますが、相談できますか。
相談できます。現在の弁護方針が在留への影響を踏まえたものかどうかを確認したいという、いわゆるセカンドオピニオンのご相談もお受けしています。弁護人を替えるかどうかは、ご相談の結果を踏まえてご判断ください。
Q102.東京以外の警察署に勾留されていても依頼できますか。
依頼できます。当事務所は全国の警察署へ出張して接見しており、東京以外の裁判所での事件も取り扱っています。遠方の事件でも、初回の接見から通訳を同行させます。
Q103.中国語で相談できますか。微信(WeChat)で連絡できますか。
中国語で相談できます。当事務所には中国の弁護士資格を持つ中国律師が在籍し、中国語の専属通訳もいます。微信(WeChat)ID matsumura1119 で、夜間・土日も相談を受け付けています。
一覧表で確認する
| 刑の種類 | 就労・留学・家族滞在など(別表第一) | 永住者・日本人の配偶者等・定住者など(別表第二) | 特別永住者 |
|---|---|---|---|
| 不起訴 | 該当しない(更新審査で事件が考慮されることはある) | 該当しない | 該当しない |
| 罰金 | 該当しない(更新・変更で不利) | 該当しない | 該当しない |
| 拘禁刑・執行猶予(窃盗・傷害・詐欺など4号の2の罪) | 該当する(24条4号の2) | 該当しない(更新では不利) | 該当しない |
| 拘禁刑・執行猶予(性犯罪・過失運転致死傷など列挙外の罪) | 該当しない(更新で不許可のおそれ大) | 該当しない | 該当しない |
| 1年以下の実刑(4号の2の罪) | 該当する(24条4号の2) | 該当しない(更新は困難) | 該当しない |
| 1年を超える実刑 | 該当する(24条4号リ) | 該当する(24条4号リ) | 原則該当しない(入管特例法22条) |
薬物犯罪(麻薬・大麻・覚醒剤・あへん等)は、有罪判決であれば執行猶予でも、別表第一・第二を問わず該当する(入管法24条4号チ)。「該当する」場合も、在留特別許可の余地がある。
| 段階 | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 警察での留置・送致 | 逮捕から48時間以内 | 刑事訴訟法203条 |
| 検察官の勾留請求 | 送致から24時間以内 | 同法205条 |
| 勾留 | 原則10日 | 同法208条1項 |
| 勾留延長 | 最大10日 | 同法208条2項 |
| 合計 | 最長23日程度 |
| 出国の形 | 上陸拒否期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 出国命令で出国 | 1年 | 入管法5条1項9号 |
| 退去強制(1回目) | 5年 | 同号 |
| 退去強制(2回目以降) | 10年 | 同号 |
| 就労・留学などの資格で4号の2の罪の判決を受け、出国中に確定 | 確定から5年 | 同項9号の2 |
| 1年以上の拘禁刑に処せられたことがある | 期間の定めなし(上陸特別許可の余地あり) | 同項4号 |
| 薬物犯罪で刑に処せられたことがある | 期間の定めなし(同上) | 同項5号 |
根拠法令
出入国管理及び難民認定法(入管法)5条・20条・22条の4・24条・24条の3・44条の2・50条・52条の2・61条の2の9・70条・73条の2、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法22条、刑法1条・18条・27条・28条・34条の2、刑事訴訟法30条・37条の2・39条・88条・123条・175条・198条・203条・205条・208条・222条・301条の2・373条・429条・461条・465条、行政事件訴訟法14条・25条、領事関係に関するウィーン条約36条、領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定8条、中華人民共和国刑法7条・10条(いずれも2026年10月18日時点)。
本ページは一般的な説明であり、個別の事件の結論は事実関係によって異なります。
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- 監理措置とは
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- よくある質問(事務所)
- 解決事例
- 中文版:外国人刑事案件问答103问
執筆者・更新日
最終更新 2026年10月18日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所