不法就労助長罪の弁護士|経営者が捜査を受けたとき・外国人が「助長」とされたとき、刑事と入管の両面で争う方法
2026/10/12
最終更新:2026年10月12日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
不法就労助長罪とは、就労資格のない外国人を働かせたり、そのあっせんをしたりした者を処罰する犯罪で、出入国管理及び難民認定法(入管法)73条の2に定められています。経営者が日本人なら刑事責任が、外国人なら刑事責任に加えて退去強制(入管法24条3号の4)が問題となるため、刑事手続と入管手続を同時に見通せる弁護士に早期に相談することが重要です。
この記事の要点
- 不法就労助長罪の法定刑は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。令和6年の法改正で5年以下・500万円以下に引き上げられ、2027年4月1日の施行が予定されています。
- 「在留資格がないとは知らなかった」という主張は、それだけでは処罰を免れる理由になりません。ただし、知らなかったことに過失がなければ処罰されません(入管法73条の2第2項ただし書)。
- 会社の従業員が業務に関して行った場合、会社自体も罰金刑を受けることがあります(両罰規定、入管法76条の2)。
- 外国人が不法就労を「させた」「助けた」とされると、刑事裁判の結果とは別に、入管が退去強制事由に当たると認定することがあります(入管法24条3号の4)。この条文には過失を要件とするただし書がなく、過失がなくても退去強制できるのかが裁判で争われています。
- 当事務所は、不法就労助長を理由とする違反認定の取消しを求める訴訟を担当しています。その争点(不利益処分に故意・過失を要するか)は、自治研究102巻6号3頁〔阿部泰隆「不利益処分と故意過失の要否」〕で取り上げられました。
不法就労助長罪では、どのような行為が処罰されますか
入管法73条の2第1項は、①事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせること、②不法就労活動をさせるために外国人を自己の支配下に置くこと、③業として①②の行為をあっせんすること、の三つを処罰対象としています。
「不法就労活動」には、在留資格のない人(オーバーステイ等)を働かせることだけでなく、在留資格はあっても認められた範囲の外で働かせること(たとえば留学生を資格外活動許可の範囲を超えて働かせる、就労制限のある在留資格の人を許可されていない業務に就かせる)も含まれます。飲食店・工場・建設・人材派遣・農業など、外国人を雇用するあらゆる業種で問題になります。
「知らなかった」と主張すれば処罰を免れますか
知らなかったというだけでは免れません。入管法73条の2第2項は、在留資格がないことなどを「知らないことを理由として」処罰を免れることはできないと定めています。ただし同項ただし書により、知らなかったことについて過失がないときは処罰されません。
実際の弁護では、雇用時にどこまで確認したかが中心的な争点になります。在留カードの原本を確認したか、裏面の資格外活動許可欄を見たか、出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会を使ったか、外国人雇用状況の届出(労働施策総合推進法28条)をしていたか、偽造カードを見抜くことが可能だったか、といった事情を一つずつ証拠化し、過失がないこと、または故意がないことを主張します。
経営者・会社・外国人では、何が違いますか
同じ不法就労助長でも、誰が問われているかによって、刑事手続で受ける処分と、在留資格への影響が大きく異なります。
| 立場 | 刑事手続 | 入管手続・在留への影響 |
|---|---|---|
| 日本人の経営者・従業員 | 入管法73条の2で処罰(3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金等) | なし |
| 会社(法人) | 両罰規定により罰金刑(入管法76条の2) | 外国人材の受入れ(特定技能の受入れ機関、技能実習・育成就労の実施者等)で欠格事由が問題となり得る |
| 外国人の経営者(経営・管理など) | 入管法73条の2で処罰 | 有罪かどうかとは別に、入管法24条3号の4の退去強制事由として違反認定を受けるおそれ |
| 不法就労を手伝ったとされる外国人(紹介・口座や名義の貸与など) | 共犯・幇助として処罰される場合がある | 入管法24条3号の4は「唆し、又はこれを助けた者」も対象とし、退去強制のおそれ |
外国人が「不法就労を助長した」とされた場合、退去強制は争えますか
争えます。入管法24条3号の4は、不法就労をさせた者・唆した者・助けた者を退去強制の対象としていますが、刑罰規定の73条の2第2項のような過失に関するただし書を置いていません。国はこれを理由に「過失がなくても退去強制できる」と主張しますが、当事務所はこの解釈を正面から争っています。
刑罰であれば過失がなければ処罰されないのに、生活の基盤そのものを失わせる退去強制が、過失すらなくても課されるというのは、責任主義の観点から均衡を欠きます。当事務所が担当する不法就労助長を理由とする違反認定の取消訴訟では、在留資格取消事由の「偽りその他不正の手段」が明文がなくとも解釈上故意を要するとされていることとの比較、欧米の行政制裁における責任主義の扱い、自由権規約に適合的な解釈などを積み重ねて主張しています。この争点は、阿部泰隆神戸大学名誉教授が自治研究102巻6号(令和8年6月号)3頁「不利益処分と故意過失の要否」で取り上げています。
入管手続では、違反調査・違反審査の段階から、本人が事情を知らなかったこと、関与の程度が低いこと、家族関係や定着性などを主張し、口頭審理、在留特別許可の申請、さらに違反認定・退去強制令書発付処分の取消訴訟まで、段階に応じて争います。
捜索や任意出頭を求められたら、まず何をすべきですか
取調べを受ける前に弁護士に相談し、雇用時の確認資料を確保したうえで、何を話すかを決めてください。最初の取調べで作られた供述調書が、刑事処分と入管手続の両方に使われます。
- 資料の確保:雇用契約書、在留カードの写し、雇用時の確認記録、外国人雇用状況届出の控え、シフト表、給与記録を保全します。捜索で押収された場合は、何が押収されたか押収品目録で確認します。
- 取調べへの準備:黙秘権があること、調書に署名押印を拒めることを確認し、過失の有無に関わる事実をどう説明するかを弁護士と決めます。外国人の経営者・従業員の場合、当事務所は取調べへの弁護人立会いを求め、取調べ前に担当警察官と協議します。
- 在留手続への手当て:外国人の場合は、在留期間の更新時期、入管からの呼出し、違反調査への対応を並行して準備します。
- 処分の見通しと示談・再発防止:不起訴や罰金にとどめるため、確認体制の改善策、関与の程度、初犯であることなどをまとめた意見書を検察官に提出します。
よくある質問
偽造の在留カードを見せられて雇った場合も処罰されますか
偽造であることに気付けなかったことについて過失がなければ処罰されません(入管法73条の2第2項ただし書)。ただし、原本を確認したか、失効情報照会をしたかなど、確認の具体的な内容が問われます。
留学生を週28時間を超えて働かせた場合も不法就労助長罪になりますか
資格外活動許可の範囲を超える就労は不法就労活動に当たり、それをさせた雇用主は不法就労助長罪に問われ得ます。他の勤務先での就労時間との合計も問題になるため、確認方法が争点になります。
外国人の経営者が罰金で済めば、在留資格は守れますか
罰金で済んでも、入管法24条3号の4の退去強制事由に当たると判断されるおそれがあり、在留期間の更新でも不利に扱われるおそれがあります。刑事処分の見通しと入管手続の対応を同時に検討する必要があります。
2027年の厳罰化は、それ以前の行為にも適用されますか
刑罰法規は行為の時点の法律で処罰されるのが原則で(憲法39条、刑法6条)、施行前の行為に引き上げ後の法定刑が適用されることはありません。ただし、施行後の行為には引き上げ後の法定刑が適用されます。
違反認定を受けた後に在留特別許可が出た場合でも、取消訴訟を続ける意味はありますか
違反認定は不法就労を助長したという法的な評価として残り、その後の在留手続で不利に働くことがあります。在留特別許可の有無とは別に、違反認定そのものを争う意味があると当事務所は考えています。
根拠条文・出典
- 出入国管理及び難民認定法73条の2(不法就労助長罪)、76条の2(両罰規定)、24条3号の4(退去強制事由)、19条(活動の範囲)
- 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律28条(外国人雇用状況の届出)
- 阿部泰隆「不利益処分と故意過失の要否」自治研究102巻6号(2026年)3頁
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