舟渡国際法律事務所

取調べへの弁護人立会いとは|外国人の刑事事件で当事務所が立会いを求める理由と、認められないときの対処

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取調べへの弁護人立会いとは|外国人の刑事事件で当事務所が立会いを求める理由と、認められないときの対処

取調べへの弁護人立会いとは|外国人の刑事事件で当事務所が立会いを求める理由と、認められないときの対処

2026/10/12

最終更新:2026年10月12日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

取調べへの弁護人立会いとは、警察官や検察官が被疑者を取り調べる場に、弁護人が同席することをいいます。日本の刑事訴訟法には弁護人の立会いを被疑者の権利として定めた規定がなく、立会いを認めるかどうかは捜査機関の判断に委ねられており、現状ではほとんど認められていません。当事務所は、外国人の刑事事件では立会いを積極的に求め、認められない場合でも取調べの直前に担当の警察官と協議して、取調べの進め方に歯止めをかける方針をとっています。

この記事の要点

  • 日本では、取調べへの弁護人立会いは法律上の権利として保障されていません。日本弁護士連合会は、立会い権の保障を制度改正の課題として求めています。
  • EUの指令(2013/48/EU)や韓国の刑事訴訟法は、取調べへの弁護人の立会い・参与を制度として定めています。日本の現状は国際的に見ると例外的です。
  • 外国人の被疑者は、通訳を介した取調べ、日本語でしか作られない供述調書、在留資格への影響という三重の不利を抱えており、弁護人が取調べに関与する必要が特に高いといえます。
  • 当事務所は、立会いの申入れに加え、取調べの直前に担当警察官と協議し、黙秘の意思・通訳の確保・調書の作り方について申し入れます。この協議が取調べへの牽制となり、有利な処分につながった例が多くあります。
  • 立会いが認められなくても、黙秘権(憲法38条1項)、調書への署名押印の拒否(刑事訴訟法198条5項)、弁護人との立会人なしの接見(同法39条1項)は使えます。

取調べへの弁護人立会いは、日本の法律で認められていますか

認められていません。刑事訴訟法は、被疑者の黙秘権の告知(198条2項)や調書の読み聞け・署名押印(198条4項・5項)を定めていますが、弁護人が取調べに同席する権利を定めた条文はありません。

弁護人は、逮捕・勾留されている被疑者と立会人なしで面会する権利(接見交通権、刑事訴訟法39条1項)を持っています。しかし接見は取調べの合間に行うもので、取調べ室の中で何が起きているかを弁護人がその場で確かめることはできません。裁判員裁判の対象事件などでは取調べの録音・録画が義務付けられていますが(同法301条の2)、対象は一部の事件に限られ、外国人の事件の多くを占める窃盗・詐欺・入管法違反・薬物事件の多くは対象外です。日本弁護士連合会は、2025年7月の会長声明で、取調べの録音・録画を全事件・全過程に拡大することなどと並んで、今後の制度設計の課題として「弁護人を取調べに立ち会わせる権利の保障」を挙げています。

海外では取調べへの弁護人立会いはどう扱われていますか

欧州連合(EU)は、被疑者が取り調べられる際に弁護人が立ち会い、実効的に関与する権利を加盟国に保障させています(指令2013/48/EU 3条3項(b))。韓国の刑事訴訟法も、弁護人が被疑者の尋問に参与する制度を設けています(243条の2)。

米国では、身柄拘束下の取調べに先立って弁護人の援助を受ける権利が告げられ(ミランダ判決)、被疑者が弁護人を求めれば取調べは中断されます。日本の制度は、起訴前に保釈がなく、原則として最長23日間の身柄拘束のもとで、弁護人のいない取調べが連日続き得るという点で、国際的に見て例外的な位置にあります。この比較は、立会いを求める申入れや、取調べの違法・不当を争う場面で、当事務所が実際に用いている論拠です。

外国人の刑事事件で、弁護人立会いが特に必要なのはなぜですか

外国人の被疑者は、言葉の壁・制度の違い・在留資格への影響という三つの点で、日本人の被疑者よりも取調べで不利な立場に置かれやすいからです。

外国人に特有の不利取調べで起きやすいこと弁護人が関与する意味
通訳を介した取調べ方言・専門用語・ニュアンスが訳し落とされ、本人の意図と違う内容で調書が作られる通訳の質や訳し方に問題があれば、その場で指摘・記録できる
供述調書は日本語で作成本人は調書の文面を読めず、通訳の読み聞けだけを頼りに署名する署名前の確認方法や、署名押印を拒む選択肢を事前に伝えられる
母国と制度が異なる「協力すれば早く出られる」「黙ると不利になる」と誤解して供述してしまう黙秘権の意味と日本の手続の見通しを、取調べの前に正確に伝えられる
在留資格への影響罪名や供述内容次第で、刑事処分とは別に退去強制事由に当たる入管手続への影響まで見越して、何をどう話すかを助言できる

とくに在留資格への影響は見落とされがちです。たとえば薬物事件は罰金や執行猶予でも退去強制事由になり得ますし(出入国管理及び難民認定法24条4号チ)、就労・留学などの在留資格の方は、窃盗・詐欺・傷害などの罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても退去強制事由に当たります(同法24条4号の2)。取調べで認めた事実が、入管手続でも使われることがあります。

当事務所は、具体的にどのように立会いを求めていますか

受任後の初回接見で本人の意向を確認したうえで、捜査機関に立会いを申し入れ、取調べの直前には担当の警察官と協議します。立会いは現状ほとんど認められませんが、この協議そのものが取調べへの牽制となり、有利な処分につながった例が多くあります。

  1. 初回接見での説明:黙秘権、調書への署名押印を拒めること、在留資格を失うおそれがどの罪名・どの処分で生じるかを、本人が理解できる言語で説明します。
  2. 立会いの申入れ:取調べへの弁護人立会いを捜査機関に求めます。認められない場合も、申入れをした事実と拒否された経過を記録に残します。
  3. 取調べ直前の協議:担当の警察官と直接話し、本人が黙秘する意思であること、通訳の確保、調書の作成方法、取調べ時間について申し入れます。弁護人が取調べの状況を注視していることを捜査機関に伝える意味があります。
  4. 接見の頻度を上げる:取調べの前後に接見し、その日の取調べで何を聞かれ何を答えたかを確認して、次の取調べへの対応を一緒に決めます。
  5. 問題があれば抗議:威圧的な取調べ、長時間の取調べ、通訳の不備などがあれば、捜査機関に書面で抗議し、必要に応じて裁判所への不服申立ても検討します。

立会いが認められないとき、被疑者は何ができますか

黙秘する、調書に署名押印しない、弁護人との接見を求める、被疑者ノートに取調べの内容を記録する、の四つが基本です。どれも立会いがなくても被疑者自身が行使できます。

  • 黙秘権:憲法38条1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と定め、取調べではその告知が義務付けられています(刑事訴訟法198条2項)。黙秘すること自体を理由に不利に扱うことは許されません。
  • 署名押印の拒否:調書の内容が自分の話と違えば訂正を求めることができ(同法198条4項)、署名押印を拒むこともできます(同条5項)。
  • 接見の要求:取調べ中でも、弁護人に会いたいと求めることができます。逮捕・勾留中の接見は立会人なしで行われます(同法39条1項)。
  • 被疑者ノート:弁護人が差し入れるノートに、取調べの日時・取調官・聞かれた内容・自分の答えを記録します。後に取調べの違法や調書の信用性を争う資料になります。

逮捕されていない在宅事件の取調べは任意であり、被疑者はいつでも退去できます(同法198条1項ただし書)。在宅事件では、弁護人が警察署まで同行し、取調べの合間に助言を受けられるようにする方法もとられます。

取調べへの立会いを求めると、捜査機関の心証が悪くなりませんか

弁護人が立会いを求めることは、被疑者の正当な防御活動であり、それを理由に処分を重くすることは許されません。当事務所の経験でも、立会いの申入れや取調べ前の協議が不利に働いたことより、取調べが慎重になり、結果として有利な処分につながったことの方が多いといえます。

「弁護士を付けると否認していると思われる」「黙っていると反省していないと見られる」という不安はよく聞かれます。しかし、取調べで不正確な供述調書が作られてしまうと、後から覆すのは容易ではありません。外国人の事件では、その調書が刑事処分だけでなく入管手続でも使われます。最初の取調べの前に弁護人が関与することが、きわめて重要です。

よくある質問

弁護士が取調べ室に一緒に入ることはできますか

日本では法律上の権利としては認められておらず、捜査機関が拒否することがほとんどです。当事務所は申入れを行い、認められない場合は取調べ直前の協議や頻繁な接見で被疑者を支えます。

立会いが認められないのに申し入れる意味はありますか

あります。弁護人が取調べの在り方を注視していることが捜査機関に伝わり、取調べの進め方への牽制になります。申入れと拒否の経過は記録に残り、後に取調べの適法性や調書の信用性を争う材料にもなります。

通訳の訳し方がおかしいと感じたらどうすればよいですか

その場で「意味が違う」と伝え、調書への署名押印を控えてください。次の接見で弁護人に具体的に伝えれば、弁護人から捜査機関に通訳の交代や確認方法について申し入れます。

黙秘すると在留資格に不利になりますか

黙秘したこと自体が退去強制事由になることはありません。在留資格に影響するのは、最終的な処分(不起訴か、罰金か、拘禁刑か)と罪名です。不起訴処分を得るために何を話し何を話さないかは、事件ごとに弁護人と決めるべき事柄です。

家族が中国にいても、立会いの申入れなどを依頼できますか

できます。中国にいるご家族からの依頼も受け付けており、微信(WeChat)で連絡を取りながら進めます。逮捕直後の最初の取調べに間に合わせることが重要ですので、できるだけ早くご連絡ください。

根拠条文・出典

  • 日本国憲法38条1項(自己に不利益な供述の強要の禁止)
  • 刑事訴訟法39条1項(接見交通権)、198条(被疑者の取調べ・供述拒否権の告知・調書の閲覧・署名押印)、301条の2(取調べの録音・録画)
  • 出入国管理及び難民認定法24条4号チ・4号リ・4号の2(退去強制事由)
  • Directive 2013/48/EU of the European Parliament and of the Council, Article 3(3)(b)
  • 大韓民国刑事訴訟法243条の2(弁護人の参与)
  • 日本弁護士連合会 会長声明(2025年7月)の報道:弁護士ドットコムニュース

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