舟渡国際法律事務所

不起訴になるには|嫌疑不十分と起訴猶予の違い、前科・前歴、不起訴を獲得する弁護活動

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不起訴になるには|嫌疑不十分と起訴猶予の違い、前科・前歴、不起訴を獲得する弁護活動

不起訴になるには|嫌疑不十分と起訴猶予の違い、前科・前歴、不起訴を獲得する弁護活動

2026/10/16

最終更新:2026年10月16日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

不起訴になるには、否認事件では「起訴できるだけの証拠がそろっていない」ことを検察官に示し、罪を認める事件では示談・被害弁償・反省・環境調整などで「起訴の必要がない」事情を積み上げることが必要です。不起訴は前科になりませんが、身柄事件では勾留満期までの限られた期間に判断されるため、早い段階の弁護活動が結果を左右します。

この記事の要点

  • 不起訴には主に「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の区分があり、どれを目指すかで弁護活動の中身が変わります。
  • 否認事件では、取調べで不利な供述調書を作らせず、証拠の弱さを具体的に指摘して嫌疑不十分を目指します。
  • 罪を認めている事件では、示談・被害弁償・反省・環境調整・贖罪寄付によって起訴猶予(刑事訴訟法248条)を目指します。
  • 不起訴は前科になりませんが、捜査を受けた記録(前歴)は捜査機関に残ります。
  • 身柄事件は逮捕から最長23日程度で処分が決まるため、勾留満期から逆算して動く必要があります。

不起訴にはどのような種類がありますか

実務で主に問題になる不起訴の区分は「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3つで、どれに当たるかによって意味が大きく異なります。

検察官が事件を裁判にかけないと決める処分が不起訴です。不起訴の理由は法務省の事件事務規程で細かく区分されていますが、刑事弁護の現場で主に問題になるのは次の3つです。不起訴処分の仕組みそのものは「不起訴処分とは」の記事で説明していますので、本記事では「どうすれば不起訴になるか」という弁護活動の側から整理します。

嫌疑なしと嫌疑不十分は、いずれも「犯罪を立証できない」という判断で、事実を争う否認事件で目指す区分です。これに対して起訴猶予は「犯罪の嫌疑はあるが、あえて起訴しない」という判断で、事実を認めている事件で目指す区分です。同じ不起訴でも、依頼者が事実を争っているのか、認めているのかによって、弁護人がやるべきことはほとんど正反対になります。

なお、不起訴となった方について、罪を犯さなかったと認めるに足りる充分な事由があるときは、被疑者補償規程(法務省訓令)に基づき、身体拘束を受けた期間について補償を受けられる場合があります。嫌疑なしに近い事件では、不起訴の後にこの補償まで視野に入れて対応します。

区分意味主に目指す場面弁護活動の中心
嫌疑なし犯人でないことが明白、または犯罪の成否を認定すべき証拠がないことが明白人違い、身に覚えのない容疑客観的な事情の提示、被疑者補償の検討
嫌疑不十分犯罪の成立を認定する証拠が不十分故意・共謀を否認する事件、証拠が乏しい事件供述の一貫性の維持、証拠の弱点の指摘、検察官への意見書
起訴猶予犯罪の嫌疑はあるが、情状などから訴追を必要としない(刑事訴訟法248条)事実を認めている事件示談・被害弁償、反省、環境調整、贖罪寄付

否認事件で不起訴になるには何が必要ですか

否認事件では、取調べで不利な供述調書を作らせないことと、検察官に「この証拠では公判で有罪を立証できない」と判断させることが必要です。

否認事件で不起訴を目指す場合、目標は嫌疑不十分、場合によっては嫌疑なしです。検察官は、公判で有罪を立証できる見込みがあるかどうかを見て起訴を決めます。そのため弁護人は、証拠のどこが弱いのかを早く把握し、その弱さが捜査段階のうちに埋められてしまわないよう手を打ちます。

最初に取り組むのは取調べへの対応です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されない権利を保障し、刑事訴訟法198条2項は取調べの前に供述を拒むことができる旨を告げるよう定めています。故意や共謀を争う事件では、言い回しのわずかな違いが「認識があった」と読める調書につながることがあります。弁護人は接見(刑事訴訟法39条1項)を重ね、黙秘するのか、話すならどの範囲をどう話すのかを事件ごとに決め、依頼者の供述が最後まで一貫するよう支えます。

次に、証拠と裁判例の検討です。故意や共謀が問題になる事件では、過去の裁判例がどのような事情から認識を認め、どのような事情から認めなかったのかを分析し、依頼者に有利な事情を拾い出します。不利に見える事情についても、別の説明が十分に成り立つことを具体的に示します。こうした検討の結果は、検察官への意見書として、処分が決まる前に届けます。

身体拘束からの解放も並行して進めます。勾留の裁判に対しては準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)で争うことができます。身体拘束が解ければ、依頼者は落ち着いて取調べに臨むことができ、供述の一貫性も保ちやすくなります。不当な逮捕や、違法・不当な取調べがあれば、その場で抗議します。

罪を認めている事件で不起訴になるには何が必要ですか

罪を認めている事件では、示談・被害弁償・反省・環境調整などを通じて、刑事訴訟法248条にいう「訴追を必要としない」事情を処分前にそろえることが必要です。

刑事訴訟法248条は「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」と定めています。これが起訴猶予の根拠です。事実を認めている事件では、この条文に挙げられた事情、とりわけ「犯罪後の情況」を弁護活動で一つずつ積み上げていきます。

被害者のいる事件では、示談が最も大きな意味を持ちます。謝罪と被害弁償を行い、被害者が処罰を望まない旨(宥恕)を示談書に明記してもらえれば、起訴猶予の判断に強く働きます。告訴が必要な罪では、告訴の取消しは公訴の提起があるまでしかできません(刑事訴訟法237条1項)。起訴前に示談をまとめることの意味は、この点でも大きくなります。

示談を拒否されても、そこで終わりではありません。被害弁償の申し出を続ける、謝罪文を届ける、弁護士会などへ贖罪寄付をして反省を形にする、家族による監督や生活・就労の状況を整える(環境調整)といった方法があります。法的に争える点があれば、事実を認める姿勢は保ちながら、補足的に主張することもあります。これらをまとめて意見書にし、処分が決まる前に検察官へ提出します。

  • 示談:謝罪、被害弁償、宥恕の文言、接触禁止などの条項を備えた示談書を作成する
  • 被害弁償:示談に至らなくても弁償の申し出を続け、その経過を検察官に伝える
  • 反省:謝罪文や本人の反省文により、事件と向き合っていることを示す
  • 環境調整:家族の監督、生活・就労環境の見直し、再発防止の取組みを整える
  • 贖罪寄付:示談ができない場合などに、弁護士会等への寄付で反省を示す
  • 意見書:これらの事情をまとめ、処分前に検察官へ提出する

不起訴になれば前科はつきませんか

不起訴になれば前科はつきませんが、捜査を受けたという記録(前歴)は捜査機関に残ります。

前科とは、一般に有罪判決を受けた経歴をいいます。罰金も刑罰ですので、略式手続で罰金を納めた場合も前科になります。不起訴は裁判にかけないという判断ですから、嫌疑不十分でも起訴猶予でも前科にはなりません。

一方、逮捕や取調べを受けたという記録は、前歴として捜査機関に残ります。前歴は戸籍や住民票に記載されるものではなく、一般の人が閲覧できるものでもありません。ただ、将来ふたたび事件に関わった場合には、検察官が処分を決める際の事情として考慮されることがあります。

「罰金で済むなら同じことだ」と考えて、示談や弁護活動をあきらめてしまう方がいます。しかし、罰金でも前科になる以上、不起訴との違いは小さくありません。資格や職業、外国籍の方であれば在留資格に影響することもあります。検察官から罰金を示唆された段階でも、不起訴を目指す余地がないかを検討する価値は十分にあります。

処分前科になるか前歴が残るか
不起訴(嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予)ならない残る
略式手続による罰金なる残る
公判での有罪判決(執行猶予付きを含む)なる残る

不起訴かどうかはいつ決まりますか

逮捕・勾留されている事件では原則として勾留満期までに処分が決まり、在宅事件では法律上の期限がないため数か月以上かかることもあります。

逮捕された場合、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し(刑事訴訟法203条1項)、検察官は受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます(同法205条1項・2項)。勾留は10日間で、やむを得ない事由があれば最大10日間延長されます(同法208条)。検察官は勾留期間が満了するまでに、起訴するか、不起訴にするか、処分を保留して釈放するかを決めます。

つまり身柄事件では、逮捕から処分まで最長でも23日程度しかありません。示談をまとめる、意見書を出すといった弁護活動は、この期間内に終えなければ効果が薄れます。満期の直前に依頼を受けて間に合った例もありますが、早く動くほど打てる手は増えます。

在宅事件(逮捕されていない事件や、釈放された後の事件)には、処分までの期限が法律で定められていません。数か月、場合によってはそれ以上待つこともあります。時間をかけて示談や環境調整に取り組める反面、何もしないまま呼出しが続き、不安な状態が長引くことにもなりかねません。

段階期間の目安根拠弁護人の主な対応
逮捕から送致まで48時間以内刑事訴訟法203条1項初回接見、取調べへの助言
送致から勾留請求まで24時間以内(逮捕から72時間以内)刑事訴訟法205条1項・2項勾留請求をしないよう検察官に意見、裁判官に意見書
勾留10日間刑事訴訟法208条準抗告、示談交渉、証拠の検討
勾留延長最大10日間刑事訴訟法208条示談成立の報告、満期前の意見書提出
在宅事件期限の定めなし該当規定なし示談・環境調整、処分の見通しの確認

外国人の場合、不起訴は在留資格にどう影響しますか

外国籍の方にとって不起訴は、有罪判決や罰金による在留資格への不利益を避けるうえで大きな意味を持ちます。

外国籍の方が刑事事件の被疑者になった場合、刑事処分の結果は、その後の在留資格の更新や変更の審査、場合によっては退去強制の判断にも関わってきます。罰金で済んだとしても在留上の不利益につながることがあるため、日本人の事件以上に不起訴を目指す意味が大きくなります。

当事務所では、初回接見の段階で、刑事処分が在留資格にどう影響しうるかを依頼者に正しく理解してもらうことを重視しています。接見には中国語専属通訳または中国律師(中国の弁護士資格者)が同行し、全国の警察署へ出張接見しています。また、外国人の事件では取調べへの弁護人の立会いを積極的に求めています。立会いが認められることは現状ほとんどありませんが、取調べの直前に警察官と協議して牽制したことが、有利な処分につながった例は多くあります。

罪を認める事件で起訴猶予を求める際には、在留資格への不利益を処分にあたって考慮すべきだと主張することもあります。後述の中国人留学生の事件のように、示談を拒否されながらも不起訴となり、在留資格を維持できた例があります。中国語でのご相談は、微信(WeChat)ID matsumura1119でも受け付けています。

松村大介弁護士の解決事例

旧1万円札の偽造通貨行使事件で、嫌疑不十分により不起訴

海外でカジノを経営する依頼者が、客が持ち込んだ聖徳太子の旧1万円札を日本で換金したところ、後日、数名が逮捕された事件です。依頼者は換金の際、金融機関や買取店で本物であるとの鑑定を受けていました。偽造通貨行使罪は裁判員裁判の対象事件で、偽造であることの認識が安易に認定されかねない類型です。そこで過去の裁判例を分析して有利な事情を抽出し、不利に見える事情にも一つずつ防御を尽くしました。身体拘束からの解放のために最高裁への特別抗告を含む弁護活動も行い、結果として嫌疑不十分で不起訴となりました。

持続化給付金詐欺の疑いで、不当逮捕に抗議して釈放、不起訴

依頼者は「第三者に無理やり申請させられ、犯罪の認識はなかった」と一貫して主張していました(故意の否認)。受任後、取調べへの対処法を具体的に助言しました。依頼者は任意出頭に応じる姿勢を示していたにもかかわらず突然逮捕されたため、直ちに不当逮捕であると抗議し、釈放を実現しました。その後の検察官の取調べでも依頼者は一貫した主張を貫き、不起訴となりました。

コンビニでの窃盗の疑い、弁護人交代後に示談が成立し不起訴

依頼者は家庭の事情から長時間の取調べに耐えられない状況にありましたが、高圧的な取調べが続いていました。前任の弁護士のもとでは被害店舗に示談を拒絶されていたため、弁護人を交代して受任しました。違法・不当な取調べに強く抗議するとともに、被害店舗への謝罪と示談交渉をあきらめずに続けた結果、示談が成立して被害届が取り下げられ、不起訴となりました。

中国人留学生の万引き事件、示談を拒否されても不起訴となり在留資格を維持

中国人留学生の依頼者が、雑貨店で約3万円相当の万引きをした疑いで逮捕された事件です。過去にも万引き歴があり、国選弁護人による示談の申入れは会社の方針として拒否され、検察官は罰金刑を示唆していました。処分の直前に依頼を受けて再度示談を申し入れましたが、やはり拒否されました。そこで、依頼者が認める事実関係を基礎にしつつ、法的には犯罪の成立も補足的に争い、在留資格への不利益を量刑上考慮すべきとする判例を引用しました。さらに罰金相当額を弁護士会に贖罪寄付し、すでに社会的制裁を受けていると主張しました。結果は不起訴で、在留資格も維持できました。

監禁の疑いで勾留、満期前に示談をまとめて釈放、不起訴

依頼者と相手方の言い分が食い違い、勾留満期を迎えれば起訴される危険がある事件でした。私選弁護人として受任して直ちに弁護人選任届を提出し、接見を重ねて、勾留期間内の示談成立を最優先にしました。主張すべき点は主張しつつ、身柄拘束中に関係を清算することが被害者にとっても利益になると説明し、家族と連絡を取って示談金を準備しました。示談書には謝罪と解決金の支払、宥恕と不起訴を求める旨を明記し、守秘義務・接触禁止の条項と、紛争の原因に今後関与しない旨の条項を設けました。示談の成立を直ちに検察官に報告し、勾留満期を待たずに釈放、不起訴となりました。

無免許運転過失致傷、速度超過、ポイント不正取得の各事件で不起訴

無免許運転による過失致傷の事件で不起訴となった例、速度超過(道路交通法違反)の事件で不起訴となり在留資格を維持した例、職務上の地位を利用したポイント不正取得の事件で不起訴となった例があります。交通事件から財産事件まで、事案ごとに不起訴を目指す弁護活動を行っています。

ほかの解決事例は解決事例の一覧をご覧ください。

こんなときは弁護士に相談を

  • 家族が逮捕され、勾留満期までに不起訴を目指したいとき
  • 身に覚えがない、または犯罪の認識がなかったのに、取調べで認めるよう迫られているとき
  • 被害者に示談を拒否された、または前任の弁護士では示談がまとまらなかったとき
  • 検察官から罰金刑を示唆されたが、前科を避けたいとき
  • 在宅事件で呼出しが続き、処分の見通しがわからないとき
  • 外国籍で、刑事処分が在留資格に影響しないか心配なとき

よくある質問

不起訴になるには何をすればよいですか。

否認事件では、取調べで不利な調書を作らせず、証拠の弱さを検察官に示すことが中心になります。罪を認めている事件では、示談・被害弁償・反省・環境調整などの事情を処分前にそろえます。身柄事件ではいずれも勾留満期までに行う必要があるため、早めに弁護士へ相談してください。

不起訴なら前科はつきませんか。前歴は残りますか。

不起訴であれば前科はつきません。逮捕や取調べを受けた記録(前歴)は捜査機関に残りますが、戸籍や住民票に載るものではなく、一般に公開されるものでもありません。

示談と不起訴の違いは何ですか。示談が成立すれば不起訴になりますか。

示談は被害者との合意で、不起訴は検察官が下す処分です。示談は起訴猶予の判断に強く働きますが、事件の内容や前歴によっては、示談が成立しても起訴されることがあります。宥恕の文言を含む示談書の内容や、示談以外の情状もあわせて整えることが大切です。

示談を拒否されたら起訴されてしまいますか。

示談を拒否されたことだけで起訴が決まるわけではありません。被害弁償の申し出、謝罪文、贖罪寄付、環境調整などで反省を示し、不起訴となった例もあります(本記事の中国人留学生の万引き事件など)。

不起訴かどうかはいつわかりますか。

逮捕・勾留されている事件では、勾留満期(逮捕から最長23日程度)までに判断されます。在宅事件には法律上の期限がなく、数か月以上かかることもあります。

嫌疑不十分と起訴猶予の違いは何ですか。

嫌疑不十分は、犯罪の成立を認定する証拠が足りないという判断です。起訴猶予は、犯罪の嫌疑はあるものの、情状などから訴追を必要としないという判断です(刑事訴訟法248条)。どちらも前科にはなりません。

根拠条文・出典

  • 刑事訴訟法248条(起訴便宜主義・起訴猶予)
  • 刑事訴訟法203条1項、205条1項・2項、208条(逮捕・勾留の時間制限と期間)
  • 刑事訴訟法237条1項(告訴の取消しは公訴の提起があるまで)
  • 刑事訴訟法39条1項(弁護人の接見交通)、198条2項(取調べ前の黙秘権の告知)、429条1項2号(勾留に関する裁判への準抗告)
  • 憲法38条1項(自己に不利益な供述の強要の禁止)
  • 事件事務規程(法務省訓令。不起訴の区分)
  • 被疑者補償規程(法務省訓令)

関連する解説

ご相談・お問い合わせ

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本ページは一般的な情報提供であり、個別の事案の結果を保証するものではありません。

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