仮滞在許可とは|難民認定申請者の退去強制手続を停止する制度と除外事由
2026/09/04
仮滞在許可とは、不法残留などにより退去強制手続の対象となりうる外国人が難民認定申請をした場合に、その申請についての判断が出るまでの間、退去強制手続を停止し、本邦に仮に滞在することを認める制度をいう。入管法61条の2の4に定められており、平成16年の入管法改正により設けられた。在留資格を与えるものではなく、暫定的に滞在を認める許可である。
この記事の要点
- 正規の在留資格を持たない難民認定申請者の立場を暫定的に安定させる制度である。
- 許可されると退去強制手続が停止し、収容されないまま申請の結果を待つことができる。
- 就労は認められず、住居や行動範囲について条件が付されるのが通常である。
- 上陸から6か月を経過した後の申請や再度の申請など、除外事由に当たると許可されない。
- 在留資格ではないため、在留カードも住民票も交付されない。
仮滞在許可とは何か
仮滞在許可とは、退去強制手続の対象となりうる難民認定申請者について、その手続を止めて仮の滞在を認める行政上の許可である。難民認定申請は在留資格の有無を問わず行えるため、不法残留の状態で申請する例が少なくない。この場合、申請者は難民認定手続の当事者であると同時に退去強制手続の対象者でもあり、判断が出る前に収容されるおそれがある。そこで平成16年の改正により、一定の要件を満たす申請者の法的地位を暫定的に安定させる仕組みが設けられた。
仮滞在許可の要件は何か
本邦にある外国人が難民認定申請をした場合、法律上の除外事由に当たらない限り仮滞在が許可されるという構造になっている。許可するかどうかが全くの白紙の裁量に委ねられているわけではなく、除外事由の有無が判断の中心となる。もっとも除外事由の範囲は広く、許可される例は限られている。主な除外事由は次のとおりである。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 申請の時期 | 本邦に上陸した日から6か月を経過した後に難民認定申請をしたとき |
| 入国の経路 | 迫害を受けるおそれのあった領域から直接本邦に入ったものでないとき |
| 手続の段階 | 既に退去強制令書の発付を受けているとき |
| 犯罪歴 | 一定の重大な罪により刑に処せられたことがあるとき |
| 逃亡のおそれ | 逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるとき |
| 再度の申請 | 過去に難民認定申請をして不認定とされた後、再び申請したとき |
仮滞在許可を受けるとどのような地位になるか
仮滞在許可を受けると退去強制手続が停止し、収容されないまま結果を待つことができる。もっとも在留資格が与えられるわけではなく、住民基本台帳に記録されず、在留カードも交付されない。就労は認められておらず、資格外活動許可の対象にもならない。許可には住居及び行動範囲の制限などの条件が付され、違反すれば取り消される。収容を免れる意味は大きいが、収入を得る手段がないという問題が残る。
仮滞在許可の手続はどう進むか
仮滞在許可は、難民認定申請を受けた入管が職権で除外事由の有無を審査して判断する。仮滞在を求める別個の申請書を出すのではなく、難民認定申請の受理に伴って審査される点に特徴がある。除外事由に当たらないと判断されれば仮滞在許可書が交付され、当たると判断されれば許可しない旨が通知される。許可されない場合でも難民認定手続は進むが、これと並行して違反審査などの退去強制手続が進行する。
仮滞在許可の期間はどのくらいか
仮滞在許可には期間が定められ、許可書に記載される。難民認定の一次審査には長い期間を要することが多く、審査請求まで含めると数年に及ぶ例もあるため、期間の満了ごとに更新の判断がされるのが通常である。更新の際に条件違反や新たな除外事由が明らかになれば、そこで終了することもある。難民と認定された場合や在留特別許可により在留資格が与えられた場合には、仮滞在の状態は解消される。
仮滞在許可が認められないとどうなるか
仮滞在が許可されない場合、難民認定手続と退去強制手続が並行して進む。違反審査を経て退去強制事由が認定されれば、収容令書による収容や退去強制令書の発付に至ることがある。この段階で身柄の解放を求める手段は仮放免又は監理措置である。難民認定申請中は原則として送還が停止されるが、令和5年改正入管法により、3回目以降の申請者など一定の場合には送還停止効の例外が設けられた。
仮滞在許可と仮放免・監理措置は何が違うか
いずれも収容を避けるための仕組みであるが、前提となる場面と効果が異なる。仮滞在許可は退去強制手続そのものを止めるものであり、仮放免と監理措置は手続の進行を前提に身柄の拘束を解くものである。
| 項目 | 仮滞在許可 | 仮放免 | 監理措置 |
|---|---|---|---|
| 場面 | 難民認定申請者の手続を停止する | 収容中の者を一時的に解放する | 収容に代えて社会内での生活を認める |
| 前提 | 収容されていない段階から用いる | 収容されていることが前提 | 収容しないこと又は解除が前提 |
| 手続の進行 | 停止する | 進む | 進む |
| 就労 | 認められない | 原則として認められない | 一定の場合に認められることがある |
| 支える人 | 不要 | 保証人と保証金の制度がある | 監理人の選任が必要 |
外国人の刑事事件で仮滞在許可が問題になるのはどのような場面か
刑事事件で処分を受けた難民認定申請者について、除外事由に当たるかどうかが問題になる。一定の重大な罪により刑に処せられたことがある場合は除外事由に当たるため、刑事手続の帰趨は、その後に仮滞在を受けられるかどうかに影響しうる。また、摘発されて身柄を拘束された後に申請する例もあるが、既に退去強制令書の発付を受けていれば仮滞在は許可されない。刑事弁護と入管手続を切り離して考えると、刑事事件で不起訴処分を得ても、仮滞在も監理措置も得られないまま収容が続くという事態が生じうる。
関連する語として、収容の長期化、主任審査官、出頭申告も併せてご覧ください。
よくあるご質問
Q1 仮滞在許可を受けている間、アルバイトはできますか。
できません。仮滞在許可は在留資格を与えるものではなく、就労は認められていません。資格外活動許可の対象にもならないため、働いた場合には許可が取り消されるおそれがあります。
Q2 難民認定申請をすれば必ず仮滞在許可を受けられますか。
いいえ。上陸から6か月を経過した後の申請、不認定とされた後の再度の申請などは除外事由に当たります。除外事由の範囲が広いため、許可を受けられる方は限られています。
Q3 仮滞在許可を受けると在留カードはもらえますか。
いいえ。仮滞在許可書が交付されますが、在留カードは交付されず、住民票も作成されません。住居の契約や口座開設で支障が生じることがあります。
Q4 仮滞在中に引っ越すことはできますか。
住居や行動範囲について条件が付されるのが通常ですので、事前に入管へ申し出て指定の変更を受ける必要があります。無断で住居を移すと条件違反として許可が取り消されるおそれがあります。
Q5 仮滞在が許可されなかった場合、争うことはできますか。
許可しない判断そのものを直接争う手段は限られています。実務上は、その後の退去強制令書発付処分の取消訴訟と執行停止の申立て、監理措置や仮放免の申請によって対応します。
おわりに
仮滞在許可は、難民認定申請者の立場を安定させるために設けられた制度であるが、除外事由が広く、実際に許可を受けられる方は限られている。許可されないまま長く不安定な立場に置かれ、収容の可能性を抱えたまま結果を待つ方が少なくない。制度の入口で何が判断されているのかを理解したうえで、次の手を早い段階から検討しておくことが大切である。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
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