収容の長期化とは|期間の上限がない入管収容の構造と令和5年改正
2026/09/04
収容の長期化とは、退去強制手続における入管収容が、送還の見通しが立たないまま数か月から数年にわたって続く状態をいう。退去強制令書による収容に法律上の期間の上限が定められていないことが、その構造的な背景として指摘されてきた。
この記事の要点
- 退去強制令書による収容は、送還することができるときまで続くものとされている。
- 収容の要否について、あらかじめ裁判官の審査を受ける仕組みは設けられていない。
- 帰国できない事情がある場合に、収容が長期に及びやすい。
- 自由権規約との関係で、国際的な機関から懸念が示されてきた。
- 令和5年改正入管法により、監理措置と収容の見直しの仕組みが設けられた。
収容の長期化とは何か
収容の長期化とは、送還が実現しないまま入管施設への収容が続くことをいう。退去強制手続では、まず違反審査などのために収容令書による収容が行われ、退去強制令書が発付されると、今度は送還までの間の収容に切り替わる。後者には期間の定めがないため、送還が実現しない限り収容が続く構造になっている。長期化は、その構造から生じる現象であり、特定の個人の事情だけによるものではないと考えられている。
収容期間に上限はあるか
二つの収容のうち、上限が定められているのは収容令書による収容だけである。
| 項目 | 収容令書による収容 | 退去強制令書による収容 |
|---|---|---|
| 目的 | 違反審査などの手続を進めるための収容 | 送還までの間の収容 |
| 期間 | 30日以内。やむを得ない事由があるときは30日を限度に延長できる | 送還することができるときまでとされ、上限の定めがない |
| 解放の手段 | 仮放免、監理措置 | 仮放免、監理措置、執行停止 |
なぜ収容が長期化するのか
送還が実現しない事情が続く限り、収容を終わらせる契機が生じないためである。難民認定申請中で送還が停止されている場合、送還先とされる国が渡航文書の発給に応じない場合、日本に配偶者や子がいるために帰国を選べない場合などがこれに当たる。本人が送還を拒んでいるとみられる事案では、仮放免が認められにくい傾向があるとも指摘されてきた。その結果、争いが長引くほど収容も長引くという関係が生じやすい。
収容から解放される手段は何か
実務上の中心は、仮放免の許可申請と監理措置の申出である。いずれも、住居が定まっていること、生活を支える人がいること、逃亡のおそれがないことを具体的な資料で示す必要がある。これに加えて、退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起し、収容部分や送還部分について執行停止を申し立てるという方法もある。行政事件訴訟法25条は、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに執行停止を認めている。
収容の長期化についてどのような議論があるか
期間の上限がないことと司法審査を経ないことの2点をめぐって、議論が続いている。自由権規約9条は恣意的な抑留を禁じており、国際的な人権機関からは、収容の必要性が個別に判断されているか、期間の上限がないことが規約に適合するかについて懸念が示されてきた。学説からは、収容の必要性と期間の相当性を比例原則に照らして審査すべきとの主張がある。他方、政府は退去強制の実効性を確保する必要があると説明してきた。いずれの立場に立つにせよ、個別の事案では、収容を続ける必要性が現に存在するかを具体的に問うことになる。
令和5年改正入管法は何を変えたか
収容しないまま手続を進める選択肢を設けた点が最も大きい。令和6年6月10日から施行された監理措置は、監理人の監理の下で社会内での生活を認める制度であり、収容に代わる仕組みとして位置づけられている。あわせて、収容が続いている場合に、一定の期間ごとに監理措置に付するかどうかを見直す仕組みも設けられた。制度の運用がどの程度長期化の解消につながるかについては、今後の運用と裁判例の集積を見る必要がある。
長期の収容が続く場合に取りうる法的手段は何か
仮放免や監理措置の申請を重ねるだけでなく、訴訟による解決を並行して検討することになる。具体的には、退去強制令書発付処分の取消訴訟と執行停止の申立て、収容の違法を理由とする国家賠償請求などが考えられる。国家賠償法1条は、公務員の違法な職務行為による損害の賠償を定めている。いずれの手段も、収容の必要性がないこと、健康状態が悪化していること、生活の受け皿があることを、資料で示せるかどうかが分かれ目になる。
外国人の刑事事件で収容の長期化が問題になるのはどのような場面か
刑事手続が終わった後に、そのまま入管収容へ移行する場面で問題になる。刑の執行を終えた場合や不起訴で釈放された場合であっても、退去強制事由があれば収容されうる。とりわけ、日本に家族がいて帰国を選べない方の場合、刑事事件の終結が収容の始まりになることがある。刑事弁護の段階から、監理人となる方の確保や生活状況を示す資料の準備を進めておくことが、収容期間を左右することがある。
関連する語として、主任審査官、入国警備官、送還忌避も併せてご覧ください。
よくあるご質問
Q1 入管の収容に期間の上限はありますか。
収容令書による収容は30日以内とされ、やむを得ない事由があるときに30日を限度として延長できるとされています。これに対し、退去強制令書による収容は送還することができるときまでとされており、法律上の期間の上限は定められていません。
Q2 何年も収容されることがあるのですか。
送還の見通しが立たない場合には、収容が長期に及ぶことがあります。難民認定申請中である、送還先の国が受入れに応じない、日本に家族がいて帰国できないといった事情があると、期間が延びやすい傾向にあります。
Q3 収容中に体調を崩した場合はどうすればよいですか。
まずは職員に医療の申出をしてください。診療の状況や病状は、仮放免や監理措置を求める際の重要な事情になります。診断書などの資料を家族や弁護士を通じて整えることが有益です。
Q4 仮放免と監理措置は、どちらを求めるべきですか。
事案の段階や監理人を引き受ける方がいるかどうかによって異なります。監理措置は監理人の選任が前提となりますので、身近に協力していただける方がいるかどうかがまず問題になります。
Q5 収容が長すぎることを理由に国に賠償を求められますか。
収容の違法を理由とする国家賠償請求が提起され、裁判所の判断が示された例があります。もっとも、認められるかどうかは収容の必要性や個別の事情によりますので、資料に基づく検討が必要です。
おわりに
収容が長引くと、体調を崩し、家族との関係が損なわれ、争う気力そのものが削られていく。終わりが見えないことが、収容そのもの以上に重くのしかかる。制度の議論とは別に、目の前の一人ひとりについて、収容を続ける必要が本当にあるのかを具体的に問い直していくほかない。資料を積み上げて申請を重ねることが、その問い直しの手段になる。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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