在留特別許可とは|入管法50条の考慮事情と申請手続、不許可後の対応
2026/09/04
在留特別許可とは、退去強制事由に該当すると認められた外国人に対し、法務大臣が特別に日本での在留を認める処分をいう。入管法50条に定めがあり、令和5年改正により、これを求める申請手続が法定化され、考慮すべき事情が同条5項に明示された。改正法は令和6年6月10日から施行されている。
この記事の要点
- 在留特別許可は、退去強制事由に該当することを前提としたうえで、なお在留を認める例外的な処分である。
- 令和5年改正により、本人が許可を求めて申請できることが法律上明確になった。
- 考慮事情として、家族関係、素行、在留期間、人道上の配慮の必要性などが法律に明示された。
- 無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者などについては、特別の事情がある場合に限られる。
- 不許可となれば退去強制令書が発付され、その後は取消訴訟と執行停止の申立てが問題となる。
在留特別許可とは何か
在留特別許可は、退去強制手続の最終段階で、退去強制事由に該当すると認められた外国人について、なお日本での在留を認める処分である。違反審査、口頭審理、異議の申出という手続を経たうえで判断される。
従来は、異議の申出に対する裁決の際に法務大臣が職権で判断するものと位置づけられ、本人の側から許可を求める申請権は法律上明確ではなかった。令和5年改正により、退去強制対象者が在留特別許可を求める旨の申請をすることができることとされ、判断の枠組みが条文上整理された。
在留特別許可はどのような場合に認められるか
入管法50条5項は、許可の判断において考慮すべき事情を明示しており、これらを総合して判断される。
条文が挙げるのは、在留を希望する理由、家族関係、素行、日本に入国することとなった事情、在留の期間とその間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性、内外の諸情勢その他の事情である。あわせて、出入国在留管理庁が公表する在留特別許可に係るガイドラインが、判断の際の積極要素と消極要素を示している。
| 方向 | 考慮される主な事情 |
|---|---|
| 積極要素 | 日本人や永住者との婚姻の実態、日本人の実子の親権と現実の監護養育、本邦で育った子の就学状況、長期の在留と定着性、本国で治療が困難な疾病 |
| 消極要素 | 重大な犯罪による処罰、薬物に関する法令違反、不法就労助長への関与、偽装婚姻、過去の退去強制歴、長期にわたる不法残留 |
在留特別許可はどのように申請するか
申請は、退去強制手続の中で、在留特別許可を求める旨を明らかにして行う。
実務上は、違反審査から口頭審理、異議の申出へと進む過程で、在留を希望する理由と資料を提出していくことになる。提出する資料は、戸籍謄本や住民票などの身分関係を示すもの、婚姻の実態を示す写真や生活の記録、子の在学証明、納税や社会保険の状況、身元保証書、本人と家族の陳述書などである。事実の主張だけでは足りず、それを裏づける資料を積み上げられるかどうかが結果を左右する。
刑事処分が重い場合はどう扱われるか
入管法50条1項ただし書は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者などについて、在留を許可すべき特別の事情があると認めるときに限って許可することができる旨を定めている。
したがって、実刑の内容によっては、家族関係などの積極要素があっても、それだけでは足りず、特別の事情といえる程度の事情を示す必要がある。刑事事件の段階での量刑の見通しが、そのまま在留の見通しに直結する構造になっており、刑事弁護と入管手続を切り離して考えることはできない。
在留特別許可が認められないとどうなるか
不許可となった場合には退去強制令書が発付され、収容と送還の手続に進む。
これに対しては、退去強制令書発付処分の取消しを求める訴訟を提起し、あわせて送還を止めるための執行停止の申立てを行うことが考えられる。取消訴訟には行政事件訴訟法14条の出訴期間の定めがあり、執行停止は同法25条に基づいて申し立てる。判断の前提となる事実の誤りや、考慮すべき事情を考慮していない点を具体的に示すことが中心となる。
外国人の刑事事件で在留特別許可が問題になるのはどのような場面か
刑事事件で有罪となり、在留資格を失った方が、家族とともに日本での生活を続けたいと考える場面が典型である。
この場合、刑事手続の段階で作成した示談書、被害弁償の資料、家族の陳述書、就労先の受入れ意思を示す書面などは、そのまま在留特別許可を求める際の資料として使える。退去強制事由のどれに該当するのか、出国命令を選ぶ余地があるのかを見極めたうえで、早い段階から資料を整えることが重要である。
よくあるご質問
Q1 どのくらいの期間で結論が出ますか。
事案により大きく異なり、数か月で判断されることもあれば、それ以上かかることもあります。資料の提出状況や事実関係の確認に要する時間によって変わりますので、早めに準備を始めることが結果的に近道になります。
Q2 許可されるとどのような在留資格になりますか。
事案に応じて、定住者や日本人の配偶者等といった在留資格と在留期間が指定されます。永住が認められるわけではなく、その後は通常の更新手続を行うことになります。
Q3 不法残留の期間が長いと不利になりますか。
長期の不法残留は消極的な事情として考慮されます。他方で、日本での在留期間の長さや生活の定着は積極的な事情にもなりえます。事情の評価は一面的ではありませんので、経緯を丁寧に説明することが大切です。
Q4 子どもが日本の学校に通っていることは考慮されますか。
考慮されます。子の年齢、日本で育った期間、就学の状況、本国での生活経験の有無などは、人道上の配慮の必要性を判断するうえで重要な事情です。在学証明や通知表など、具体的な資料を用意してください。
Q5 不許可になったら、もう手段はありませんか。
退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起し、あわせて執行停止を申し立てる方法があります。出訴期間の定めがありますので、不許可の連絡を受けたら速やかに弁護士にご相談ください。
おわりに
在留特別許可は、家族と暮らし続けられるかどうかが一度の判断で決まる手続です。事実を並べるだけでは足りず、なぜこの家族にとって日本での生活が必要なのかを、資料に裏づけられた形で示す必要があります。刑事事件を経た方の場合は、刑事手続の段階からの準備が結論を左右します。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。
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