収容令書とは|主任審査官が発付する収容の根拠と期間・監理措置との関係
2026/09/04
収容令書とは、退去強制事由に該当する容疑のある外国人の身柄を収容するために、主任審査官が発付する令書をいう。入国警備官の請求に基づいて発付され、退去強制手続の審査を行う間、容疑者の身柄を確保することを目的とする。
この記事の要点
- 収容令書は主任審査官が発付し、入国警備官がこれを執行して容疑者を収容する。
- 発付の要件は、退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があることである。
- 収容期間は原則30日以内で、延長されても最長60日である。
- 令和6年6月10日以降は、収容に代えて監理措置に付される場合がある。
- 退去強制令書が発付されると、以後は退去強制令書による収容に切り替わる。
収容令書とは何か
収容令書は、退去強制手続の審査を進める間、容疑者の身柄を確保するために発付される行政上の令書である。犯罪の嫌疑に基づいて裁判官が発付する逮捕状とは異なり、収容令書は入管の内部で発付される。発付権者は主任審査官であり、これは上級の入国審査官のうちから法務大臣が指定する職である。
収容令書には、容疑者の氏名、国籍、容疑事実の要旨、収容すべき場所、有効期間などが記載される。執行するのは入国警備官であり、収容令書を容疑者に示したうえで身柄を収容する。収容先は、入国者収容所または地方出入国在留管理局の収容場である。
収容令書はどのような場合に発付されるか
収容令書は、容疑者が退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときに発付される。入国警備官が違反調査を行った結果、その判断に至った場合に、主任審査官に対して発付を請求する。
ここで注意すべきは、疑うに足りる相当の理由という要件が、退去強制事由に確実に該当することまでは求めていない点である。したがって、最終的に退去強制事由に該当しないと判断される事案でも、その前段階で収容されることがありうる。この構造が、収容の必要性をめぐる議論の背景にある。
収容令書による収容の期間はどのくらいか
結論として、収容令書による収容は最長でも60日である。入管法上、収容令書による収容は原則として30日以内とされ、やむを得ない事由があると認められるときに限り、主任審査官が30日を限度として延長することができるとされている。
もっとも、この上限は収容令書による収容の上限にすぎない。手続が進み退去強制令書が発付されると、以後の収容は退去強制令書に基づくものとなり、送還が可能となるまで続きうる。長期収容が問題とされてきたのは、主としてこの退去強制令書による収容の局面である。
なお、令和5年改正入管法により、収容を継続する必要があるかどうかを一定期間ごとに見直す仕組みが設けられた。
収容令書と退去強制令書は何が違うか
両者はいずれも収容の根拠となる令書であるが、発付される段階も、収容の性質も異なる。
| 比較の視点 | 収容令書 | 退去強制令書 |
|---|---|---|
| 発付の段階 | 審査の前。違反調査の結果として | 審査がすべて終わった後 |
| 目的 | 審査の間の身柄の確保 | 送還の実施と、それまでの身柄の確保 |
| 発付権者 | 主任審査官 | 主任審査官 |
| 収容期間 | 原則30日以内、延長して最長60日 | 送還が可能となるまで。上限の定めがない |
| 送還の可否 | この段階では送還されない | 送還が実施される |
収容から解放される方法にはどのようなものがあるか
結論として、主な方法は監理措置と仮放免である。いずれも収容を解く仕組みであるが、位置づけが異なる。
| 制度 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 監理措置 | 収容せず、監理人の監理の下で社会内での生活を認める | 令和6年6月10日施行。収容の前段階でも収容後でも用いられる |
| 仮放免 | 収容されている者を一時的に収容場所の外に出す | 健康上の理由その他の事情を考慮して判断される |
どちらの制度を求めるべきかは、収容の段階、家族や住居の状況、逃亡のおそれをどう説明できるかによって異なる。詳しくは監理措置および仮放免の解説をご覧いただきたい。
収容令書の発付に納得できないときはどうするか
実務上は、収容令書そのものを争うよりも、身柄の解放を求める申請と、続く審査での主張に力を注ぐことが多い。収容令書は審査の前段階の処分であり、これを争っている間にも手続は進んでいくからである。
もっとも、そもそも退去強制事由に該当しないと考えられる事案では、収容の根拠を欠くことを早い段階で書面にして示す意味がある。その主張は、続く違反審査および口頭審理でも一貫して維持する必要がある。
外国人の刑事事件で収容令書が問題になるのはどのような場面か
刑事手続が終わった直後の場面が典型である。勾留が解かれ、あるいは刑期が満了して釈放されると同時に、入管が身柄を引き継いで収容するという流れが実務上しばしば見られる。本人や家族は釈放されると考えていたのに、そのまま収容が続くことになる。
そのため、刑事事件の見通しが立った段階で、収容を避けるための住居と身元引受人の準備、監理措置の候補者の検討を並行して進めておくことが望ましい。刑事弁護と入管対応を切り離して考えると、この局面で対応が遅れる。
よくあるご質問
Q1 収容令書が出たら何日間収容されますか。
収容令書による収容は原則として30日以内で、やむを得ない事由があるときは主任審査官が30日を限度に延長できます。したがって最長でも60日です。ただし、その間に退去強制令書が発付されると、以後は退去強制令書による収容に切り替わり、期間の上限はなくなります。
Q2 収容令書が出ても収容されない場合はありますか。
あります。令和6年6月10日に施行された監理措置の制度により、収容せずに監理人の監理の下で社会内での生活を認める取扱いが導入されました。逃亡や証拠隠滅のおそれの程度、家族関係、住居の安定などが考慮されます。
Q3 収容令書に書かれた容疑事実が違うときはどうすればよいですか。
収容の段階で争うよりも、続く違反審査や口頭審理の場で事実関係を主張し、資料を提出することが基本になります。ただし、容疑事実が明らかに誤っている場合は、早い段階で書面を提出して指摘しておく意味があります。
Q4 収容中に家族と面会できますか。
面会は認められていますが、時間や人数、回数について施設ごとの運用があります。弁護士との面会は、一般の面会とは別の扱いを受けるのが通例です。実際の運用は収容先によって異なりますので、事前に確認することをお勧めします。
Q5 収容令書と逮捕状は同じものですか。
違います。逮捕状は犯罪の捜査のために裁判官が発付する令状であるのに対し、収容令書は退去強制手続を進めるために入管の主任審査官が発付する行政上の令書です。裁判官の審査を経ない点が大きな違いです。
おわりに
収容令書は、身体の自由を奪う処分でありながら、裁判官の審査を経ずに発付される。当事者にとっては、ある日突然、期限の見えない収容が始まるように感じられる。収容を解く手立てと、その後の審査に向けた準備は、いずれも早い段階で着手するほど選択肢が広い。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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