執行停止とは|退去強制令書の送還・収容を止める申立ての要件と手続を弁護士が解説
2026/10/05
最終更新日:2026年10月5日
執行停止とは、取消訴訟を起こしたうえで、判決が出るまでの間、処分の効力や執行(収容・送還)を裁判所に止めてもらう申立てです(行政事件訴訟法25条2項)。
この記事の要点
- 退去強制令書の取消訴訟を起こしても、送還は自動的には止まりません。執行停止の申立てが必要です。
- 要件は、本案(取消訴訟)が係属していること、重大な損害を避けるため緊急の必要があること、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと、本案について理由がないとみえないことです(同法25条2項・4項)。
- 内閣総理大臣は、執行停止の決定の前後を問わず異議を述べることができ、異議があると執行停止はできず、決定は取り消されます(同法27条)。
- 申立ては、送還が差し迫る前に行う必要があります。
執行停止は、何のための手続ですか。
取消訴訟の判決までには時間がかかります。その間に送還されてしまうと、勝訴しても意味を失いかねません。執行停止は、その空白を埋めるための仮の救済手続です。
「重大な損害」とは、どのような場合ですか。
行政事件訴訟法25条3項は、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質・程度と処分の内容・性質も勘案するとしています。退去強制では、日本で形成された家族・生活基盤の喪失、送還先での身体・生命への危険、収容の継続などを具体的に主張します。
裁判所はどのように判断しますか。
申立人は、重大な損害と緊急の必要を疎明します。裁判所は、本案について理由がないとみえるかどうかも併せて見ます。認められた場合も、内閣総理大臣の異議の可能性が残ります。
執行停止の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 本案の係属 | 取消訴訟が裁判所に係属していること |
| 重大な損害 | 回復困難な損害を避ける緊急の必要があること |
| 公共の福祉 | 重大な影響を及ぼすおそれがないこと |
| 本案の見込み | 理由がないとみえるときでないこと |
| 内閣総理大臣の異議 | 異議があれば停止できない(27条) |
よくある質問(FAQ)
執行停止は、いつまでに申し立てますか。
取消訴訟の提起と同時、または提起後すみやかにです。送還が差し迫っていれば、時間の余裕は多くありません。
認められれば、収容も解かれますか。
執行の停止の範囲は裁判所の決定によります。収容の解除は、仮放免・監理措置の手続も検討します。
認められなかった場合は、どうなりますか。
決定には即時抗告ができます。送還の時期との関係で、抗告の時期の判断が重要です。
取消訴訟に勝てる見込みがなくても申し立てられますか。
本案について理由がないとみえるときは、認められません。本案の見込みの検討が前提です。
根拠条文と一次資料
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所/微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については事実関係を踏まえた検討が必要です。
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