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無罪判決とは|一部無罪の意味、無罪を目指す刑事弁護、無罪判決後の補償と控訴

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無罪判決とは|一部無罪の意味、無罪を目指す刑事弁護、無罪判決後の補償と控訴

無罪判決とは|一部無罪の意味、無罪を目指す刑事弁護、無罪判決後の補償と控訴

2026/10/16

最終更新:2026年10月16日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

無罪判決とは、裁判所が「被告事件が罪とならないとき」又は「被告事件について犯罪の証明がないとき」に言い渡す判決です(刑事訴訟法336条)。無罪を目指すには、検察官の証拠のどこに合理的な疑いが残るかを早い段階から見極め、証拠開示・反対尋問・弁論を通じて裁判所に示していく必要があります。

この記事の要点

  • 無罪判決には「罪とならない」場合と「犯罪の証明がない」場合の2類型があります(刑事訴訟法336条)。
  • 一部無罪とは、複数の公訴事実の一部や、共謀・故意など犯罪の成立に必要な事実の一部が認められない場合をいいます。
  • 無罪を目指す弁護では、証拠開示請求、検察側証拠の弱点の検討、反対尋問、被告人の供述方針の判断、弁論が中心になります。
  • 起訴前に嫌疑不十分などで不起訴となれば、そもそも公判で争う必要がなくなるため、捜査段階から争うことが大切です。
  • 無罪判決が確定すると、身体拘束を受けた日数などに応じて刑事補償法による補償を請求できます。一方で、検察官が控訴することもあります。

無罪判決とは何ですか?

無罪判決とは、起訴された事実について有罪と認められないときに裁判所が言い渡す判決で、刑事訴訟法336条が「罪とならないとき」と「犯罪の証明がないとき」の2つの場合を定めています。

刑事裁判では、被告人が罪を犯したことを証明する責任は検察官にあります。被告人の側が「やっていない」ことを証明する必要はありません。検察官の立証によっても、起訴された事実が合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されたといえなければ、裁判所は無罪を言い渡すことになります。

「罪とならないとき」とは、検察官が主張する事実をそのまま前提にしても、法律上犯罪が成立しない場合です。たとえば、問題とされた行為がそもそも処罰の対象となる行為に当たらない場合や、正当防衛などにより違法性が否定される場合がこれに当たります。

「犯罪の証明がないとき」とは、犯罪の成立に必要な事実(行為をしたこと、故意があったこと、共謀があったことなど)について、証拠による証明が足りない場合です。実際の無罪判決の多くは、この類型で争われます。犯人であることの証明が不十分な場合のほか、行為自体はあっても故意や共謀の証明が足りない場合も含まれます。

類型内容争い方の例
罪とならないとき検察官の主張する事実を前提にしても、法律上犯罪が成立しない構成要件に当たらない、正当防衛が成立する等の法律論・評価の主張
犯罪の証明がないとき犯罪の成立に必要な事実の証明が足りない犯人性、故意、共謀などを裏付ける証拠の弱さを指摘する

一部無罪とはどういう意味ですか?

一部無罪とは、起訴された内容のうち一部について有罪と認められず、その部分について無罪と判断されることをいいます。

一部無罪には、大きく分けて2つの場面があります。1つ目は、複数の公訴事実(複数の事件)がまとめて審理され、そのうち一部の事件について犯罪の証明がないとして無罪とされる場合です。この場合、判決主文で一部の公訴事実について無罪が言い渡されます。

2つ目は、1つの事件の中で、検察官が主張した事実の一部が認められない場合です。たとえば、共謀や故意など犯罪の成立に関わる一部の事実が否定され、検察官が主張したよりも狭い範囲でしか事実が認定されないことがあります。このような判断は、判決の結論や刑の重さに直接影響します。

一部無罪の場合、残りの部分について有罪判決が言い渡されていれば、その部分は前科になります。しかし、認定される事実の範囲が狭まれば、刑が軽くなるなど被告人にとって大きな意味があります。否認事件では、全面的に争う部分と、事実を認めつつ評価を争う部分を整理し、どこで裁判所の判断を得るかを見極めることが弁護活動の出発点になります。

無罪を目指す刑事弁護では何をしますか?

無罪を目指す弁護では、検察官が持っている証拠をできる限り開示させ、その弱点を検討したうえで、反対尋問と弁論によって合理的な疑いが残ることを裁判所に示します。

まず行うのが証拠の開示を求めることです。起訴後、検察官は自らが請求する証拠を弁護人に開示しますが、それだけでは捜査機関が集めた証拠の全体はわかりません。公判前整理手続における証拠開示の制度などを使い、検察官が請求していない証拠(類型証拠や、弁護側の主張に関連する証拠)の開示を求めます。被告人に有利な事情は、検察官が請求しない証拠の中に含まれていることが少なくありません。

次に、開示された証拠を一つ一つ検討し、検察官の主張を支える証拠がどこまで確かなものかを見極めます。目撃者の供述が変遷していないか、共犯者とされる人物の供述に自分の責任を軽くしようとする動機がないか、客観的な証拠(通信記録、防犯カメラ映像、鑑定など)と供述が食い違っていないかといった点を確認します。

公判では、検察側証人への反対尋問が大きな山場になります。供述の矛盾や、記憶・認識の不確かさ、供述の動機を具体的に明らかにすることで、その証言に頼って有罪と認定することの危うさを示します。

被告人自身が法廷で話すかどうかも慎重に判断します。被告人には黙秘権があり(憲法38条1項、刑事訴訟法311条1項)、黙秘したことを不利益に扱うことは許されません。一方で、被告人の説明が無罪の根拠として必要な事件もあります。証拠の状況を踏まえ、話す内容と時期を弁護人と十分に検討します。

最後に、弁論で証拠全体を整理し、検察官の立証のどこに合理的な疑いが残るのかを、裁判所が判決で採用できる形で論じます。外国籍の被告人の事件では、通訳を介した供述調書の正確性も争点になり得るため、当事務所では中国語専属通訳や中国律師(中国の弁護士資格者)と連携して、供述の経過を確認しています。

  • 証拠開示請求(公判前整理手続における証拠開示など)
  • 検察側証拠の信用性・客観的証拠との整合性の検討
  • 検察側証人への反対尋問
  • 被告人の黙秘・供述についての方針決定
  • 証拠全体を整理した弁論

なぜ起訴前の段階から争うことが大切なのですか?

起訴前の捜査段階で嫌疑不十分などにより不起訴となれば、公判で無罪を争う負担を負わずに事件を終えることができるからです。

検察官は、捜査の結果を踏まえて起訴するかどうかを決めます。証拠が足りないと判断されれば「嫌疑不十分」、犯罪の疑いが認められなければ「嫌疑なし」として不起訴になります。不起訴になれば裁判は開かれず、前科もつきません(捜査を受けた記録である前歴は捜査機関に残ります)。

捜査段階では、取調べでの供述が後の裁判で重要な証拠になります。取調べの前には黙秘権が告知されることになっており(刑事訴訟法198条2項)、記憶と異なる内容の供述調書に署名する必要はありません。逮捕直後から弁護人が接見し、取調べへの対応を助言することで、不本意な調書が作られることを防ぎ、検察官に対して証拠の不十分さを具体的に指摘することができます。

また、身体拘束が続くと、精神的な負担から事実と異なる供述をしてしまう危険が高まります。勾留に対する準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)などによって早期の釈放を求めることも、否認を貫くための大切な活動です。不起訴となった人で罪を犯さなかったと認めるに足りる充分な事由があるときは、被疑者補償規程による補償の対象となる場合もあります。

無罪判決が出た後はどうなりますか?

無罪判決が確定すれば、身体拘束を受けていた人は刑事補償法に基づく補償を請求できますが、判決に対して検察官が控訴することもあり、その場合は控訴審で引き続き争うことになります。

無罪判決が言い渡されると、勾留されていた被告人は勾留状の効力が失われ、釈放されます。もっとも、無罪判決は言渡しの時点ではまだ確定していません。検察官は判決に不服があれば、判決の言渡しから14日以内に控訴を申し立てることができ、実際に控訴されることもあります。控訴審では、第一審の判断に誤りがあるかどうかが審理されるため、弁護側も第一審の判決理由を踏まえた反論を準備します。

無罪判決が確定した場合、未決の抑留・拘禁を受けていた人は、刑事補償法に基づいて国に補償を請求することができます。請求は、無罪の裁判をした裁判所に対し、無罪の裁判が確定した日から3年以内に行います。補償の額は、拘束の日数に応じて法律で定められた範囲内で、裁判所が事情を考慮して決めます。

一部無罪の場合は、身体拘束がどの事実を理由とするものだったかなどによって、補償の範囲が個別に判断されることがあります。また、無罪が確定した場合には、刑事訴訟法上の費用補償の制度により、裁判に要した費用の一部の補償を求めることができる場合もあります。どの制度を使えるかは事件ごとに異なるため、判決後の手続も弁護人と確認しておくことをおすすめします。

判決後の場面主な内容
無罪判決の言渡し勾留状が効力を失い、勾留されていた被告人は釈放される
検察官控訴判決の言渡しから14日以内に控訴されることがあり、その場合は控訴審で審理が続く
無罪判決の確定控訴されずに期間が過ぎる等により確定し、前科はつかない
刑事補償抑留・拘禁を受けていた人は、確定日から3年以内に無罪の裁判をした裁判所へ請求できる

松村大介弁護士の解決事例

覚醒剤取締法違反で共謀を否認し、無罪判決(一部無罪)を獲得した事例

20代の女性が、身に覚えのない覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されました。依頼者は捜査段階から一貫して関与を否定し、共謀を否認しました。起訴後の公判でも無罪を主張して争い、無罪判決(一部無罪)を獲得しました。

旧1万円札の偽造通貨行使事件で、嫌疑不十分により不起訴となった事例

海外でカジノを経営する依頼者が、客が持ち込んだ聖徳太子の旧1万円札を日本で換金したところ、後日数名が逮捕された事件です。換金の際には金融機関や買取店で本物との鑑定を受けていました。偽造通貨行使罪は裁判員裁判の対象事件で、偽造であるとの認識が安易に認定されかねないため、過去の裁判例を分析して有利な事情を抽出し、不利に見える事情にも防御を尽くしました。身体拘束からの解放を求めて最高裁判所への特別抗告を含む弁護活動を行い、嫌疑不十分で不起訴となりました。

持続化給付金詐欺の疑いで故意を否認し、釈放・不起訴となった事例

依頼者は「第三者に無理やり申請させられ、犯罪の認識はなかった」と一貫して主張していました。取調べへの対処法を助言していたところ、任意出頭の姿勢を示していたにもかかわらず突然逮捕されたため、直ちに不当な逮捕であると抗議して釈放を実現しました。その後の検察官の取調べでも一貫した主張を貫き、不起訴となりました。

身に覚えのない暴行の疑いで、勾留請求却下・不起訴となった事例

暴行の被疑者として出頭を求められた依頼者は、全く身に覚えがありませんでした。証拠は、犯行現場に残された携帯電話番号が依頼者名義と一致することだけでしたが、出頭直後に逮捕されました。来日初期の外国人同士で携帯電話番号を貸し借りする慣習があることを裁判所に伝え、被疑事実の立証ができていないと主張した結果、勾留請求が却下されて釈放され、その後は取調べもなく不起訴となりました。

ほかの解決事例は解決事例の一覧をご覧ください。

こんなときは弁護士に相談を

  • 身に覚えのない容疑で逮捕された、又は警察から出頭を求められているとき
  • 共謀や故意を否定したいのに、取調べで認める内容の調書を作られそうなとき
  • 起訴されたが、公判で無罪を主張して争いたいとき
  • 複数の事件で起訴され、一部の事実だけでも争いたいとき
  • 無罪判決を受けた後、検察官の控訴や刑事補償の請求について知りたいとき
  • 家族が外国籍で、通訳を介した取調べや在留資格への影響が心配なとき

よくある質問

無罪判決が出たら補償は受けられますか?

無罪判決が確定し、それまでに逮捕・勾留などの身体拘束を受けていた場合は、刑事補償法に基づいて補償を請求できます。請求先は無罪の裁判をした裁判所で、確定した日から3年以内に請求する必要があります。

無罪判決に対して検察官は控訴できますか?

できます。検察官は判決の言渡しから14日以内に控訴を申し立てることができ、実際に控訴されることもあります。控訴された場合は控訴審で引き続き審理されます。

一部無罪の場合、前科はつきますか?

一部無罪の場合でも、残りの部分について有罪判決が確定すれば、その部分は前科になります。ただし、認定される事実の範囲が狭くなれば、刑が軽くなるなどの影響があります。

否認していると保釈は難しいですか?

否認していることだけを理由に保釈が許されないわけではありません。保釈は刑事訴訟法89条・90条に基づいて判断されます。罪証隠滅のおそれがないことなどを具体的な事情に基づいて主張し、保釈を求めていきます。

無罪を争うなら、いつ弁護士に依頼すべきですか?

できるだけ早く、逮捕直後や出頭を求められた段階での依頼をおすすめします。捜査段階の供述調書は公判で重要な証拠になるうえ、起訴前に嫌疑不十分などで不起訴となる可能性もあるためです。

根拠条文・出典

  • 刑事訴訟法336条(無罪の判決)
  • 憲法38条1項(自己に不利益な供述の強要の禁止)
  • 刑事訴訟法311条1項(被告人の黙秘権)
  • 刑事訴訟法198条2項(取調べ前の黙秘権の告知)
  • 刑事訴訟法429条1項2号(勾留に関する裁判に対する準抗告)
  • 刑事訴訟法89条・90条(保釈)
  • 刑事訴訟法248条(起訴便宜主義)
  • 刑事補償法(無罪の裁判が確定した場合の補償)
  • 被疑者補償規程(法務省訓令)
  • 事件事務規程(不起訴の区分:嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予)

関連する解説

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