舟渡国際法律事務所

帰国後も請求できるか|中国に帰国した後の交通事故の損害賠償請求の進め方(委任状・認証・送金)

お問い合わせはこちら

帰国後も請求できるか|中国に帰国した後の交通事故の損害賠償請求の進め方(委任状・認証・送金)

帰国後も請求できるか|中国に帰国した後の交通事故の損害賠償請求の進め方(委任状・認証・送金)

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

日本で交通事故の被害に遭った後に中国へ帰国しても、加害者や保険会社に対する損害賠償請求権はなくなりません。日本の弁護士を代理人に選任すれば、自賠責への被害者請求、任意保険会社との交渉、訴訟のいずれも、本人が中国にいたまま進めることができます。鍵になるのは、時効の管理、委任状の公証・認証、中国での治療の立証、そして賠償金の受取方法です。

この記事の要点

  • 人身損害の賠償請求権は損害と加害者を知った時から5年(民法724条の2)、物損は3年(民法724条)で時効にかかり、帰国しても期間は変わりません。
  • 加害車両の自賠責保険への被害者請求(自賠法16条)と任意保険会社との交渉は、日本の弁護士が代理人として進められます。
  • 中国から日本の弁護士に委任するときは、委任状に中国の公証機関による公証と所定の認証が求められることがあります。
  • 中国で続けた治療の費用や後遺障害も、診断書・領収書の翻訳を添えて請求の対象にできます。
  • 賠償金は代理人の口座で受け取って中国へ送金する方法が一般的で、送金の方法は事前に決めておきます。

こんな場面で問題になります

  • 留学や技能実習の期間が終わり、治療の途中で帰国した。保険会社との話は終わっていない。
  • 帰国後に痛みが続き、中国の病院で治療を受けている。日本の保険会社に費用を請求できるのか知りたい。
  • 帰国後に保険会社から示談案が郵送されてきたが、金額の根拠がわからず、日本に戻って交渉することもできない。
  • 家族が日本で交通事故により亡くなり、中国にいる遺族が賠償を請求したい。
  • 帰国から時間が経ってしまい、まだ請求できるのかわからない。

帰国すると請求権はなくなりますか

なくなりません。請求権は事故の時に日本法に基づいて発生しており、帰国や在留資格の喪失によって消えることはなく、消滅するのは時効が完成したときだけです。

人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から5年で時効にかかります(民法724条の2)。物損は3年です(民法724条)。いずれも不法行為の時から20年を経過すると請求できなくなります。帰国後に請求を考える方の多くは、事故から時間が経っていますので、まず事故日と治療の経過から残りの期間を確認します。保険会社と交渉中であっても時効は進みますので、交渉が続いている場合は、保険会社から債務を承認する書面を得るか、時効完成前に訴訟を提起して時効の完成を防ぎます。

帰国後の手続は誰がどう進めますか

日本の弁護士を代理人に選任し、弁護士が保険会社・加害者との交渉、自賠責への被害者請求、必要なら訴訟を本人に代わって行います。

段階帰国後にできること本人が用意するもの
委任弁護士との委任契約、委任状の作成公証・認証を受けた委任状、パスポートの写し
資料収集交通事故証明書、日本の診療記録、保険会社とのやり取りの取り寄せ事故時の資料、保険会社の担当者名と連絡先
被害者請求自賠責保険への請求(自賠法16条)中国での治療資料とその日本語訳
交渉任意保険会社との示談交渉示談内容の確認と承諾(微信・メール等で可)
訴訟日本の裁判所への提訴、期日への出頭は代理人本人尋問が必要な場合の来日または方法の検討
受領代理人の口座で受領し中国へ送金受取口座の情報

相談から委任までは、微信やビデオ通話で中国語により行えます。事故当時の資料が手元になくても、交通事故証明書や診療記録は代理人が取り寄せることができますので、保険会社名、担当者名、事故日、通院した病院名を伝えてください。

中国からの委任状はどのように作りますか

弁護士が作成した委任状の案に本人が署名し、中国の公証機関で署名の公証を受け、所定の認証を経て日本へ送付します。委任状と本人確認書類の日本語訳も添えます。

保険会社や自賠責保険会社、裁判所は、委任状の署名が本人のものであることの確認を求めます。日本国内であれば印鑑証明書や本人確認書類で足りますが、中国にいる本人については、中国の公証機関による公証を受けた委任状が一般的に用いられ、提出先によっては認証も求められます。公証・認証の手続は中国側で行い、原本を国際郵便で日本の代理人に送ります。死亡事故で遺族が請求する場合は、相続人であることを示す親族関係の公証書も必要になります。相続の準拠法は被相続人の本国法とされており(法の適用に関する通則法36条)、中国籍の方が亡くなった事故では中国法により相続人を確定します。

中国で治療を続けた場合、治療費や後遺障害は請求できますか

請求できます。中国の医療機関の診断書・診療明細・領収書を日本語に翻訳して提出し、事故との因果関係と治療の必要性を示します。後遺障害は、日本の様式に対応する内容の診断書を用意する必要があります。

保険会社は、中国での治療が日本の事故によるものか、治療内容が相当かを厳しく確認します。日本で治療を受けていた期間の診療記録と、帰国後の治療の記録が連続していることが重要で、帰国前に日本の医師から紹介状や診療情報提供書をもらっておくと有利です。治療費は人民元で支払われますので、為替の換算時点や方法が争点になることもあります。後遺障害の等級認定は損害保険料率算出機構が日本の様式の後遺障害診断書をもとに行うため、中国の医師に同じ検査項目を記載してもらうか、来日して日本の医師の診断を受ける方法を検討します。

訴訟になったら中国にいても進められますか

進められます。訴状の提出や期日への出頭は代理人である弁護士が行い、書類の送達も代理人宛てになりますので、本人が来日する必要があるのは本人尋問など限られた場面です。

保険会社の提示が裁判基準と大きく離れている場合や、過失割合に争いがある場合は、日本の裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。訴訟の当事者が外国に住んでいても、日本国内で起きた事故について日本の裁判所に訴えることができ、代理人がついていれば裁判所からの書類は代理人に送達されます。本人の供述が必要になる場合は、裁判所と協議のうえ来日して尋問を受けるか、陳述書で代替できるかを検討します。和解で終わる事件も多く、その場合も代理人が和解条項を確認して成立させます。

賠償金はどのように受け取りますか

保険会社や加害者からの支払は代理人の預り金口座で受領し、報酬等を精算したうえで本人の指定する口座へ送金する方法が一般的です。

保険会社は原則として日本国内の口座に日本円で支払います。本人が日本の口座を解約している場合は、代理人の口座で受領し、国際送金で中国の口座に送ります。送金には銀行所定の手数料がかかり、受取側の銀行で外貨の受取に関する手続が必要になることがあります。送金先の口座名義は本人または相続人と一致させ、第三者の口座への送金は避けます。送金の方法と時期は、示談の成立前に代理人と決めておいてください。

中国籍の方に特有の留意点

  • 帰国前の準備:交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、保険会社の担当者の連絡先、事故現場や車両の写真を帰国前に揃え、日本の医師から診療情報提供書を受け取っておくと、帰国後の請求が格段に進めやすくなります。
  • 再来日の必要:在留期限が切れた後に本人尋問や診断のために来日するときは、短期滞在の査証が必要になります。来日の要否と時期は代理人と相談して決めます。
  • 時効の管理:帰国後は連絡が途切れがちで、気づいたときには時効が迫っていることがあります。帰国前に代理人を選任し、時効完成の時期を共有しておきます。
  • 遺族による請求:遺族が中国にいる死亡事故では、相続人を確定する中国法上の親族関係の証明、公証・認証を経た委任状、遺族固有の慰謝料の整理が必要になります。
  • 言語:保険会社や裁判所とのやり取りはすべて日本語で行われます。代理人が中国語で経過を報告し、示談案は中国語訳を添えて確認を取ります。

弁護士に相談すべき場面

  • 治療の途中で帰国することになり、その後の請求を誰に任せるか決めたいとき。
  • 帰国後に保険会社から示談案が届き、妥当かどうか判断したいとき。
  • 中国での治療費や後遺障害を請求したいが、資料の作り方がわからないとき。
  • 事故から時間が経っており、時効が迫っている可能性があるとき。
  • 家族が日本で亡くなり、中国にいる遺族として請求を進めたいとき。

舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。交通事故の損害賠償請求は、加害者側の刑事手続や在留資格の問題と結びつくことが多いため、刑事弁護と入管事件を一体で扱う体制のもとで対応します。行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。

よくある質問

帰国してから何年まで請求できますか

人身損害は損害と加害者を知った時から5年(民法724条の2)、物損は3年(民法724条)で時効にかかります。帰国しても期間は変わらないため、残りの期間を確認して早めに代理人を選任してください。

日本に戻らずに手続を全部終えられますか

多くの事案では可能です。交渉・被害者請求・訴訟の提起は代理人が行い、本人の来日が必要になるのは本人尋問や日本の医師による後遺障害の診断など限られた場面です。

委任状には公証が必要ですか

提出先により異なりますが、中国にいる本人の署名であることを示すため、中国の公証機関による公証を受けた委任状が一般的に用いられ、認証が求められることもあります。弁護士が委任状の案と手順を案内します。

中国の病院の領収書で治療費を請求できますか

できます。診断書・診療明細・領収書の日本語訳を添え、日本での治療との連続性と事故との因果関係を示します。帰国前に日本の医師から診療情報提供書を受け取っておくと有利です。

賠償金は中国の口座で受け取れますか

保険会社は原則として日本国内の口座に支払いますので、代理人の口座で受領して中国の口座へ国際送金する方法が一般的です。手数料と受取側の手続を事前に確認します。

根拠条文・出典

  • 民法709条(不法行為)、722条(過失相殺)、724条・724条の2(損害賠償請求権の消滅時効)
  • 自動車損害賠償保障法3条(運行供用者責任)、16条(被害者請求)
  • 法の適用に関する通則法36条(相続の準拠法)
  • 道路交通法72条(交通事故の場合の措置)

関連する解説

ご相談・お問い合わせ

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)
中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。全国からご相談を承ります。
電話:050-7587-4639
微信(WeChat)ID:matsumura1119
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

本ページは一般的な情報提供であり、個別の事案の結果を保証するものではありません。

简体中文版

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。