舟渡国際法律事務所

技能実習・特定技能の転籍・転職とは|トラブル時の相談先と在留資格(やむを得ない事情・育成就労制度)

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技能実習・特定技能の転籍・転職とは|トラブル時の相談先と在留資格(やむを得ない事情・育成就労制度)

技能実習・特定技能の転籍・転職とは|トラブル時の相談先と在留資格(やむを得ない事情・育成就労制度)

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

技能実習の転籍とは実習先(実習実施者)を変更することをいい、現行制度では原則として認められず、実習先の倒産や人権侵害などやむを得ない事情がある場合に限られます。これに対し特定技能は、同じ分野であれば受入れ機関を変える転職が認められています。どちらも在留資格に直結する手続であり、職場を離れる前に正しい順序で進めることが欠かせません。

この記事の要点

  • 技能実習生は日本法上の労働者であり、労働基準法・最低賃金法の保護を受けます。国籍による差別的取扱いは禁止されています(労働基準法3条)。
  • 技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)は、暴行・脅迫、旅券の取上げなどの人権侵害行為を禁じ、実習生に外国人技能実習機構への申告の権利を認めています。
  • 技能実習の転籍は原則として認められず、やむを得ない事情がある場合に監理団体と外国人技能実習機構が転籍先の調整を行います。
  • 特定技能は同一分野内での転職が可能ですが、受入れ機関を変えるときは在留資格変更許可申請(入管法20条)が必要で、許可が出るまで新しい職場で働くことはできません。
  • 2024年に技能実習制度を廃止して育成就労制度を創設する法改正が成立し、本人の意向による転籍が一定の要件のもとで認められる方向です(施行時期と要件の細部は公表資料で確認してください)。

こんな場面で問題になります

  • 技能実習生として働く中国籍の方が、実習先で暴言や暴力を受け、他の会社に移りたいが、監理団体が取り合ってくれない。
  • 特定技能で働く方が、より条件のよい会社から誘われたが、在留資格の手続を知らないまま退職しそうになっている。
  • 残業代の未払を監理団体に相談したところ、帰国させると言われ、旅券を返してもらえない。
  • 実習先から逃げて知人の紹介で別の工場で働いていたところ、不法就労として警察に逮捕された。

技能実習生は実習先を変えられますか

現行の技能実習制度では、本人の希望だけで転籍することはできず、やむを得ない事情がある場合に限って転籍が認められます。

技能実習は認定を受けた特定の実習実施者のもとで技能を修得する制度であるため、転籍は制度上の例外とされています。やむを得ない事情とは、実習実施者の倒産や実習計画の認定取消し、実習実施者による人権侵害や労働関係法令違反など、実習生の責めによらない事由です。この場合、監理団体が新しい実習先を探し、外国人技能実習機構が転籍先の調整を支援します。また、技能実習2号から3号に移行する際には、実習先を変更することができます。監理団体が動かないときは機構の母国語相談窓口に直接申告でき、申告を理由とする不利益な取扱いは技能実習法で禁じられています。

2024年の法改正で転籍はどう変わりますか

技能実習制度に代えて育成就労制度を創設する改正法が2024年に成立し、本人の意向による転籍が一定の要件のもとで認められる方向です。

改正の柱は、人材確保と人材育成を目的とする育成就労制度への移行、やむを得ない事情がある場合の転籍の範囲の明確化、そして同一の受入れ機関での一定の就労期間や技能・日本語能力の要件を満たした場合に本人の意向による転籍を認めることです。施行時期、転籍までに必要な就労期間、分野ごとの要件などの細部は、出入国在留管理庁や厚生労働省の公表資料で確認する必要があります。現在技能実習中の方には経過措置が設けられるため、どちらの制度の適用を受けるかを含めて確認してください。

特定技能の方はどのように転職しますか

同一分野内で、新しい受入れ機関との雇用契約を結んだうえで在留資格変更許可申請(入管法20条)を行い、許可を得てから働き始めます。

特定技能は、受入れ機関と業務の内容が指定された在留資格であるため、会社が変われば在留資格の変更手続が必要です。他の分野に移るには、その分野の技能試験に合格している必要があります。退職後は所属機関に関する届出(入管法19条の16)を行い、新しい受入れ機関が書類を整えて申請します。許可が出る前に働き始めると資格外活動(入管法19条)となり、雇った側は不法就労助長(入管法73条の2)に問われます。退職後に一定期間活動しないままでいると在留資格取消し(入管法22条の4)の対象になり得るため、退職の時期と申請の時期をそろえることが大切です。

項目技能実習(現行)特定技能育成就労(2024年改正)
本人の意向による転籍原則不可同一分野内で可能一定の要件のもとで可能とする方向(細部は公表資料で確認)
やむを得ない事情による転籍可能(監理団体・機構が調整)受入れ機関の倒産等でも転職扱い範囲を明確化する方向
在留資格の手続実習計画の変更・認定在留資格変更許可申請(入管法20条)公表資料で確認
相談先監理団体、外国人技能実習機構登録支援機関、出入国在留管理庁公表資料で確認

実習先で人権侵害や賃金不払があるときはどこに相談しますか

監理団体、外国人技能実習機構の母国語相談、労働基準監督署、そして弁護士が相談先であり、証拠を残したうえで並行して動くことが有効です。

技能実習法は、実習生に対する暴行・脅迫・監禁、旅券や在留カードの保管、外出や通信の不当な制限、保証金や違約金の約束を禁じています。これらがあれば転籍のやむを得ない事情に当たり得るとともに、機構への申告の対象です。賃金の不払や最低賃金違反は労働基準監督署への申告(労働基準法104条)ができ、未払分は労働審判(原則3回以内の期日。労働審判法15条2項)や訴訟で請求できます。暴行があれば刑事事件として警察への被害届も検討します。いずれも、微信の記録、録音、けがの写真、給与明細などの証拠を先に確保してください。

実習先から逃げて別の場所で働くとどうなりますか

正規の転籍手続を経ずに別の職場で働けば資格外活動となり、刑事処罰や退去強制の対象になり得ます。

実習先を無断で離れると、実習実施者から行方不明として届け出られ、技能実習の継続が困難になります。その状態で他の職場で働けば、資格外活動(入管法19条)として刑事事件になり得るほか、退去強制事由(入管法24条)に該当すると判断されるおそれがあります。実習先に問題があるときほど、逃げるのではなく、機構や弁護士を通じて正規のルートで転籍を求めることが在留を守る近道です。既に職場を離れてしまった方も、出頭の仕方と説明の内容で結果が変わるため、入管に出向く前にご相談ください。

中国籍の方に特有の留意点

  • 送り出し機関との契約:中国の送り出し機関との間で保証金や違約金を定めた契約があっても、技能実習法はこれらの徴収を禁じています。帰国後の請求をおそれて日本で声を上げられないという状況は、それ自体が申告の対象です。
  • 旅券・在留カードの預かり:実習先や監理団体が旅券を保管することは技能実習法で禁じられています。返還を求め、応じなければ機構に申告します。
  • 微信を通じた圧力:監理団体や仲介者から、相談したら帰国させる、家族に連絡するなどのメッセージが届くことがあります。削除せず保存し、弁護士に見せてください。
  • 言語と情報:手続は日本語の書類で進みます。内容を理解しないまま署名した書類が、後に本人の意思による退職の証拠として扱われることがあります。
  • 刑事事件と在留の一体性:不法就労や逃亡をめぐって逮捕された場合、刑事弁護と入管手続を切り離して考えることはできません。事務所では外国人の刑事事件で取調べへの弁護人の立会いを求める方針です(認められることは現状ほとんどありません)。

弁護士に相談すべき場面

  • 実習先で暴力・暴言・賃金不払があり、監理団体に相談しても動いてくれないとき。
  • 特定技能で転職したいが、退職と在留資格変更の順序や時期がわからないとき。
  • 実習先の倒産や事業縮小で、残りの実習期間の見通しが立たないとき。
  • 既に実習先を離れてしまい、在留資格や刑事事件の心配があるとき。
  • 送り出し機関や仲介者から違約金や保証金を請求されているとき。

舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。労働事件は、解雇や未払賃金の問題と在留資格の問題が同時に進むことが多いため、労働事件と入管事件を一体で扱い、全国からご相談を承ります。行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。

よくある質問

技能実習生は自分の希望で実習先を変えられますか

現行制度では本人の希望だけでは転籍できず、実習先の倒産や人権侵害などやむを得ない事情がある場合に限られます。2024年改正で創設される育成就労制度では一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められる方向ですが、細部は公表資料で確認してください。

特定技能で転職するとき、退職してから新しい会社を探してもよいですか

退職後に一定期間活動しないままでいると在留資格取消し(入管法22条の4)の対象になり得ます。新しい受入れ機関を決めてから退職し、在留資格変更許可申請(入管法20条)の時期をそろえることをおすすめします。

実習先で暴力を受けています。どこに相談すればよいですか

外国人技能実習機構の母国語相談、労働基準監督署、警察、弁護士が相談先です。暴行は技能実習法が禁じる人権侵害行為であり、転籍のやむを得ない事情にも当たり得ます。証拠を保存したうえでご相談ください。

送り出し機関から違約金を請求されると言われました。転籍すると払わなければなりませんか

技能実習法は保証金や違約金の約束を禁じており、こうした請求をおそれて申告できない状況自体が制度上問題とされます。契約の内容を確認のうえ、対応をご相談ください。

実習先から逃げて別の工場で働いています。今から正規の手続に戻れますか

資格外活動として刑事事件や退去強制の対象になり得る状態です。出頭の仕方と説明の内容で結果が変わるため、入管や警察に出向く前にご相談ください。

根拠条文・出典

  • 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法):人権侵害行為の禁止、旅券等の保管の禁止、保証金等の徴収の禁止、実習生による申告と不利益取扱いの禁止
  • 2024年成立の技能実習法・入管法改正(育成就労制度の創設):施行時期・要件の細部は出入国在留管理庁・厚生労働省の公表資料で確認
  • 労働基準法3条(国籍等による差別的取扱いの禁止)、104条(監督機関に対する申告)、労働審判法15条2項(原則3回以内の期日での審理終結)
  • 出入国管理及び難民認定法19条(活動の範囲)、19条の16(所属機関等に関する届出)、20条(在留資格の変更)、22条の4(在留資格の取消し)、24条(退去強制事由)、73条の2(不法就労助長)
  • 出入国管理及び難民認定法 別表第一(技能実習・特定技能)

関連する解説

ご相談・お問い合わせ

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)
中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。全国からご相談を承ります。
電話:050-7587-4639
微信(WeChat)ID:matsumura1119
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

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