微罪処分とは|検察官に送致されない事件(検察官不送致)の要件、前科・前歴と在留資格への影響
2026/10/15
微罪処分とは、検察官があらかじめ指定した犯情の特に軽微な事件について、警察が事件を検察官に送致せず、月ごとに一括して報告するだけで手続を終える処分をいう(刑事訴訟法246条ただし書、犯罪捜査規範198条・199条)。警察は捜査した事件を原則としてすべて検察官に送致しなければなりませんが(全件送致主義)、微罪処分はその例外です。起訴されることがないため前科はつきませんが、警察の記録には前歴として残ります。
この記事の要点
- 警察は原則として事件を検察官に送致するが、検察官が指定した軽微な事件は送致しないで済ませられる(刑事訴訟法246条ただし書)。
- 一般に、被害が軽微で弁償済み、被害者が処罰を望まない、偶発的な犯行で前歴がないといった事件が対象とされる。
- 告訴・告発・自首があった事件や、逮捕して身柄を送致した事件は対象にならない。
- 微罪処分は有罪の裁判ではないため前科にならず、それ自体は退去強制事由に当たらない。ただし前歴は残る。
- 早期の被害弁償と示談、身元引受人の確保が、微罪処分で終えるための現実的な手段である。
微罪処分は、どのような制度ですか。
警察段階で事件を終わらせる制度です。刑事訴訟法246条は、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは、速やかに書類と証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならないと定めつつ、「検察官が指定した事件については、この限りでない」としています。これを受けて犯罪捜査規範198条は、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定された犯情の特に軽微な事件は、送致しないことができると定め、同規範199条は、処理年月日、被疑者の氏名、罪名、犯罪事実の要旨などを1か月ごとに一括して検察官に報告することとしています。
微罪処分の対象になるのは、どのような事件ですか。
具体的な基準は各地方検察庁の検事正の指定によりますが、一般に、被害額が少なく、被害が回復され、被害者が処罰を望んでおらず、犯行が偶発的で、本人に前歴がない事件が対象とされています。罪名としては、少額の万引きなどの窃盗、詐欺、横領、盗品等に関する罪、賭博などが典型として挙げられます。指定の内容は公表されていないため、個別の事件が対象になるかどうかは、事件の内容と処理の実情を踏まえて見通しを立てることになります。
微罪処分の対象にならないのは、どのような場合ですか。
告訴・告発や自首があった事件、逮捕して身柄を検察官に送致した事件、少年事件などです。告訴・告発・自首があった事件は、警察は書類と証拠物を検察官に送付しなければなりません(刑事訴訟法242条・245条)。少年の事件は、家庭裁判所に送致する仕組みが別に定められています(少年法41条・42条)。被害額が大きい事件、悪質な手口の事件、前歴がある場合も、通常は対象外です。
| 処理の種類 | 検察官への送致 | 前科 | 前歴 | 在留への影響 |
|---|---|---|---|---|
| 微罪処分 | しない | つかない | 残る | それ自体は退去強制事由にならない |
| 交通反則通告制度(反則金の納付) | しない(反則金を納めれば公訴を提起されない) | つかない | 記録は残る | 原則として影響は小さい |
| 送致後の不起訴(起訴猶予など) | する | つかない | 残る | それ自体は退去強制事由にならない |
| 略式命令(罰金) | する | つく | 残る | 薬物事犯は退去強制事由になり得る。更新・永住で考慮される |
微罪処分になると、何をされるのですか。
警察から訓戒を受け、家族や雇用主など監督する人を呼び出して将来の監督を約束させるといった措置がとられます。犯罪捜査規範200条は、微罪処分をするときは、被疑者を厳重に訓戒し、親権者や雇主などを呼び出して将来の監督を約させ、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講じさせるなどの処置をとるものとしています。身元引受人として家族が呼ばれることが多いのはこのためです。
微罪処分になると、前科や前歴はつくのですか。
前科はつきませんが、前歴は残ります。前科は有罪の裁判を受けた経歴をいい、微罪処分は裁判ではないため前科にはなりません。他方で、警察に事件として扱われた記録は前歴として残り、後に別の事件を起こした場合には、処分を決める際に考慮されることがあります。
外国籍の方の在留には、どのような影響がありますか。
微罪処分は有罪の判決ではないため、それ自体が退去強制事由に当たることはありません。出入国管理及び難民認定法24条の退去強制事由の多くは「刑に処せられた」ことや「有罪の判決を受けた」ことを要件としているからです。もっとも、在留期間の更新や永住許可の申請で過去の処分歴をどう扱うかは事案によって異なるため、申請の前に弁護士に確認することをお勧めします。また、不法残留など入管法違反の事件では、刑事処分とは別に退去強制手続が進むことがあります。
微罪処分で終えるために、何ができますか。
警察が送致するかどうかを判断する前に、被害弁償と示談を済ませ、身元引受人を確保することです。被害の回復と被害者の処罰感情は、微罪処分の判断で特に重視されます。外国籍の方は、住居や勤務先が明らかであること、家族や雇用主が監督を約束できることを具体的に示すことが大切です。弁護士が早い段階で被害者との連絡を取り、警察に意見書を出すことで、送致を避けられる場合があります。
よくある質問
微罪処分と不起訴は、どう違うのですか。
微罪処分は警察の段階で手続を終えるもので、検察官に送致されません。不起訴は、検察官に送致された後に検察官が起訴しないと決める処分です。どちらも前科はつきません。
万引きで捕まった場合、必ず微罪処分になりますか。
必ずではありません。被害額、被害の回復、前歴の有無、犯行の態様によって判断されます。前歴がある場合や被害額が大きい場合は、検察官に送致されるのが通常です。
逮捕された場合でも、微罪処分になりますか。
逮捕して身柄を検察官に送致した事件は、微罪処分の対象になりません。逮捕されずに捜査が進む事件や、逮捕後に送致前に釈放された事件で検討されます。
微罪処分を受けたことは、会社や学校に知られますか。
警察から会社や学校に通知する制度はありません。ただし、身元引受人として家族や雇用主が呼ばれることがあります。
外国籍でも微罪処分になりますか。
なります。国籍による区別はありません。ただし住居や身元が明らかでないと判断が厳しくなるため、身元引受人や住居の資料を早めに用意してください。
根拠条文・出典
- 刑事訴訟法242条、245条、246条(e-Gov法令検索で確認)
- 犯罪捜査規範198条、199条、200条
- 少年法41条、42条
- 道路交通法125条以下(交通反則通告制度)
- 出入国管理及び難民認定法24条
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最終更新日:2026年10月15日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)