窃盗で逮捕された外国人の方へ|勾留を防ぎ不起訴を得ることが在留資格を守る理由
2026/10/04
執筆:松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 舟渡国際法律事務所 更新日:2026年10月4日 微信ID:matsumura1119
勾留請求却下とは、検察官が裁判官に求めた最長10日間の身体拘束を、裁判官が認めずに被疑者を直ちに釈放させる判断をいいます(刑事訴訟法207条1項・5項、60条)。外国籍の方が窃盗の疑いで逮捕された場合、この段階で釈放を得て、そのまま不起訴処分に至ることができれば、在留資格への影響を避けられる可能性が大きく広がります。
この記事の要点
- 勾留請求却下とは、検察官の勾留請求を裁判官が退け、被疑者を直ちに釈放させる判断である。勝負は逮捕から72時間以内に決まる。
- 別表第一の在留資格(就労・留学・家族滞在など)の方は、窃盗で拘禁刑の判決を受けると、執行猶予が付いても退去強制事由(入管法24条4号の2)に当たりうる。起訴前の不起訴処分が決定的に重要である。
- 身体拘束が続くと、取調べに加えて捜索・押収などが行われる場面が増え、窃盗以外の問題を抱えている場合には影響が大きくなる。
- 早期の示談と、勾留の要件がないことを資料で示す弁護活動によって、釈放と不起訴につなげた事案がある。
窃盗事件として扱われていた事案で、何が起きたのか
当事務所が扱った事案を、依頼者が特定されないよう内容を改めて紹介します。個別の事実関係の細部は、依頼者保護のため省略しています。
外国籍の依頼者が、窃盗の疑いで逮捕されました。捜査機関は、この件を窃盗事件として把握していました。ところが依頼者には、窃盗とは別に、薬物に関する事情がありました。
当事務所は、早期に被害者側との示談交渉を行い、あわせて勾留の必要がないことを具体的に主張しました。その結果、裁判官は検察官の勾留請求を却下し、依頼者は釈放されました。その後も事件は窃盗の事件として扱われ、不起訴処分となりました。窃盗を超えて捜査が広がることはなく、在留資格への影響も生じませんでした。
なぜ、窃盗の段階で身体拘束を避けることが重要なのか
勾留されると、逮捕から数えて最長で23日ほど身体を拘束され得ます。その間は取調べが続き、住居や所持品の捜索、押収、鑑定といった捜査が行われる場面も増えます。仕事を失う、学校に通えなくなるといった生活上の打撃も、日を追うごとに大きくなります。
外国籍の方にとっての問題は、それだけではありません。拘束が長引くほど、疑われている事件以外の事情が捜査の視野に入る可能性が高まります。窃盗の事件であっても、別の問題を抱えている場合には、拘束を避けられるかどうかが、その後の見通しを大きく左右します。
なお、弁護人は証拠を隠したり、事実を偽ったりすることはしません。弁護人が行うのは、黙秘権をはじめとする法的な権利の説明、取調べへの対応の助言、そして勾留の要件を欠くことの主張です。窃盗は窃盗として、法の定める範囲で適正に判断されるべきだと考えています。
勾留はどのような手順で決まるのか
逮捕から勾留までの流れと期限は、次のとおりです。
| 段階 | 期限 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 警察が事件を検察官に送致 | 逮捕から48時間以内 | 刑事訴訟法203条 |
| 検察官が裁判官に勾留を請求 | 送致から24時間以内、かつ逮捕から72時間以内 | 同法205条 |
| 裁判官が勾留の可否を判断 | 請求の当日 | 同法207条 |
| 勾留期間 | 10日。やむを得ない事由があれば最長10日の延長 | 同法208条 |
| 検察官の終局処分(起訴・不起訴) | 勾留期間の満了まで | 同法248条 |
裁判官は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、かつ住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかがある場合に勾留を認めます(同法60条1項)。勾留の必要性がないときは勾留請求が却下され、被疑者は直ちに釈放されます(同法207条5項)。勾留が認められた場合でも、準抗告によって取消しを求めることができます(同法429条1項2号)。
勾留請求を却下してもらうために、弁護人は何をするのか
最初の72時間が勝負ですので、受任後はできるだけ早く動きます。まず被疑者本人から事実関係を確認し、取調べへの対応を助言します。並行して、被害者側に謝罪と被害弁償を申し入れ、示談交渉を進めます。窃盗は被害者が特定される事件ですから、示談が成立すれば、罪証隠滅のおそれが小さいことを示す事情になるうえ、検察官が起訴するか否かを判断する際にも重視されます(起訴便宜主義、同法248条)。
次に、住居、家族、仕事など生活の基盤があり、逃亡のおそれがないことを資料で示します。そのうえで、検察官に勾留請求をしないよう意見書を提出し、請求された場合は裁判官に意見書を出して面談を求めます。それでも勾留が認められたときは、準抗告で争います。当事務所は、逮捕・勾留の段階から争う弁護に継続的に取り組んでおり、勾留請求の却下や準抗告による釈放を得てきました。
不起訴になると、在留資格はどうなるのか
窃盗は、入管法24条4号の2が定める特定犯罪の一つです。この規定は別表第一の在留資格の方にだけ適用されるため、在留資格の種類によって結論が分かれます。主な場合を整理すると、次のようになります。
| 刑事手続の結果 | 別表第一(就労・留学・家族滞在など) | 別表第二(永住者・日本人の配偶者等・定住者など) |
|---|---|---|
| 不起訴処分 | 有罪の前科はつかず、退去強制事由に当たらない | 同左 |
| 罰金刑 | 退去強制事由には当たらないが、更新・変更の審査で素行を問われ、不許可となるおそれがある | 退去強制事由には当たらない |
| 拘禁刑(執行猶予付き) | 窃盗は4号の2の対象であり、執行猶予が付いても退去強制事由に当たる | 4号の2は適用されず、退去強制事由に当たらない |
| 1年を超える拘禁刑の実刑 | 4号リに該当 | 4号リに該当 |
つまり、別表第一の方は、窃盗という比較的軽い罪でも、拘禁刑の判決を受けた時点で在留を失う方向に傾きます。だからこそ、起訴される前に不起訴処分を得ることが決定的に重要になります。薬物関係の法令に違反して有罪となった場合は、別表の区別を問わず、執行猶予付きであっても退去強制事由となります(入管法24条4号チ)。薬物に関する問題があるときは、窃盗の処分以上に、その点への対応が在留の帰趨を左右します。
なお、不起訴であれば刑事上の前科はつきませんが、在留期間の更新などの場面では、入管が在留状況を総合的に審査します。不起訴になった後の手続まで見据えた準備が必要です。
よくあるご質問
勾留請求却下とは何ですか。却下されると釈放されますか。
検察官が請求した勾留を裁判官が認めない判断です。却下されると、被疑者は直ちに釈放されます(刑事訴訟法207条5項)。釈放後も捜査は続き、在宅のまま処分が決まります。
弁護士は、いつまでに依頼すべきですか。
勾留の可否は逮捕から72時間以内に判断されます。この期間内に弁護人が動けるかどうかで、結果が変わります。逮捕を知った時点で、できるだけ早くご相談ください。
示談が成立すれば、必ず不起訴になりますか。
必ずではありません。ただし、示談の成立は、検察官が起訴するか否かを判断する際の重要な事情です。前科前歴、事案の内容、再犯のおそれなども併せて考慮されます。
不起訴になれば、在留資格に影響はありませんか。
不起訴であれば有罪の前科はつかず、窃盗を理由とする退去強制事由には当たりません。もっとも、更新の際には入管が在留状況を審査しますので、不起訴後の手続も見据えて対応します。
家族が逮捕されました。家族から弁護士を頼めますか。
頼めます。被疑者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は、被疑者とは独立して弁護人を選任できます(刑事訴訟法30条2項)。当事務所は中国語の通訳に対応しています。微信(WeChat)ID:matsumura1119 からもご連絡いただけます。
根拠条文・参考資料
刑事訴訟法203条、205条、207条、208条、248条、259条、30条、60条、429条/出入国管理及び難民認定法24条4号チ・4号リ・4号の2・別表第一・別表第二
舟渡国際法律事務所 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会) ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------