舟渡国際法律事務所

残業代請求とは|技能実習・特定技能・就労ビザの方の未払賃金の請求(労基法37条・時効3年)

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残業代請求とは|技能実習・特定技能・就労ビザの方の未払賃金の請求(労基法37条・時効3年)

残業代請求とは|技能実習・特定技能・就労ビザの方の未払賃金の請求(労基法37条・時効3年)

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

残業代請求とは、法定労働時間を超える労働、休日労働、深夜労働に対して使用者が支払わなければならない割増賃金(労働基準法37条)のうち、支払われていない分を請求することをいいます。技能実習生、特定技能、技術・人文知識・国際業務などどの在留資格であっても、日本で働く労働者には労働基準法が適用され、請求する権利があります。

この記事の要点

  • 時間外・休日・深夜の労働には法定の割増率による割増賃金の支払が義務付けられています(労働基準法37条)。
  • 賃金は全額を支払わなければならず(労働基準法24条)、使用者が勝手に控除したり、合意なしに減額したりすることはできません。
  • 未払賃金の請求権は当分の間3年で時効にかかります(労働基準法115条・附則143条)。古い分から順に消えていくため、早く動く必要があります。
  • 技能実習生にも労働基準法と最低賃金法が適用され、技能実習法は実習生の保護を目的としています。
  • 残業代を請求すること自体は在留資格に影響しません。労働基準監督署への申告を理由とする不利益な取扱いは禁止されています(労働基準法104条)。

こんな場面で問題になります

  • 技能実習生として働く中国籍の方が、毎日遅くまで残業しているのに、残業の時給が通常の時給より低く計算されている。
  • 特定技能で飲食店に勤める方が、給与に固定残業代が含まれていると言われ、何時間働いても給料が変わらない。
  • 中国系企業の社員が、肩書きが主任や店長だから管理職で残業代は出ないと説明されている。
  • タイムカードがなく、微信のグループで出勤と退勤を報告しているだけで、労働時間の記録が会社に残っていない。

残業代はどのような場合に発生しますか

法定労働時間(労働基準法32条)を超えて働いた時間、法定休日の労働、深夜の労働には割増賃金が発生します(労働基準法37条)。

使用者が法定労働時間を超えて働かせるには労使協定の締結と届出(労働基準法36条)が必要ですが、協定があっても、また協定がなくても、割増賃金の支払義務は免れません。残業代の計算は、基礎となる時給に法定の割増率を掛け、時間外の時間数を乗じて行います。基礎となる時給には基本給のほか各種手当が含まれ、除外できる手当は法令で限定されています。計算のやり直しだけで請求額が大きく変わることがあります。

技能実習生や特定技能の方も請求できますか

請求できます。技能実習生も特定技能の方も日本法上の労働者であり、労働基準法・最低賃金法が全面的に適用されます。

技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)は、技能実習生が労働関係法令の保護を受けることを前提に、実習実施者や監理団体の義務を定めています。残業代の不払や最低賃金を下回る時給は、労働基準法違反であると同時に、技能実習法上の問題として外国人技能実習機構への申告や監理団体への相談の対象にもなります。特定技能の方も、受入れ機関には日本人と同等以上の報酬を支払う義務があり、残業代の不払は受入れ機関としての適格性に関わります。「実習だから」「外国人だから」という理由で賃金を低くすることは、国籍による差別的取扱いの禁止(労働基準法3条)に反します。

どのような証拠が必要ですか

実際に働いた時間を示す記録が中心で、タイムカードがなくても、自分の記録や通信の履歴で立証できます。

使用者には労働時間を適正に把握する義務があり、賃金台帳や出勤簿などの記録を保存する義務もあります(労働基準法109条)。会社がタイムカードを出さない場合でも、訴訟や労働審判では弁護士が開示を求めることができ、記録を残していない不利益は会社側に働きます。本人の側では、微信での出退勤報告の送信時刻、業務メールの時刻、交通系ICカードの乗降記録、スマートフォンの位置情報履歴、手帳のメモなどが証拠になります。雇用契約書、就業規則、給与明細は請求額の計算に必要です。在職中にこつこつ保存しておくことが、後に大きな差になります。

会社側のよくある反論法律上の考え方
固定残業代を払っている何時間分の残業代かが明確に区分され、超過分が別に支払われていなければ有効と認められません
管理職だから残業代はない労働基準法41条の管理監督者に当たるかは、肩書きではなく権限・勤務の裁量・待遇で実質的に判断されます
残業を命じていない黙認していた残業や、こなせない業務量を前提にした残業は労働時間と認められます
年俸制だから残業代込み年俸制でも時間外労働には割増賃金が必要です

いつまでに請求しなければなりませんか

賃金の請求権は当分の間3年で時効にかかります(労働基準法115条・附則143条)。

時効は給料日ごとに進行するため、相談が遅れるほど古い月の分から順に請求できなくなります。内容証明郵便などで請求の意思を会社に通知すると、時効の完成を一定期間猶予する効果があるため、弁護士はまず請求の通知を送り、その間に証拠と計算を固めます。

残業代請求はどのような手続で行いますか

弁護士による交渉、労働基準監督署への申告、労働審判、訴訟があり、証拠の状況と会社の対応を見て選びます。

交渉は、受任通知と計算書を会社に送り、支払を話し合う方法です。労働基準監督署への申告(労働基準法104条)は、監督署が会社を調査して是正を勧告するもので、本人に代わって金銭を取り立てる手続ではありません。労働審判は地方裁判所で原則3回以内の期日で審理を終結する手続で(労働審判法15条2項)、早期の解決が期待できます。訴訟では、裁判所が未払額と同額までの付加金の支払を命じることがあり(労働基準法114条)、会社にとっては交渉段階で解決する動機になります。

残業代を請求すると在留資格に影響しますか

残業代の請求は労働者の正当な権利行使であり、それ自体が在留資格の更新や変更で不利に扱われることはありません。

注意が必要なのは、請求をきっかけに会社との関係が悪化し、解雇や技能実習の中止に発展する場合です。技能実習生の場合、実習先を変わることに制約があるため、請求の時期と転籍の見通しをあわせて考える必要があります。また、在留資格で認められた範囲を超えて働いていた場合、その事実が明らかになると資格外活動(入管法19条)の問題が生じ得るため、請求の前に弁護士と事情を整理してください。

中国籍の方に特有の留意点

  • 帰国後の請求:帰国しても請求権は消えません。弁護士を代理人とすれば、中国にいながら交渉や労働審判の申立てを進められます。帰国前に委任状と証拠を整えておくことが重要です。
  • 微信の記録:出退勤の報告、シフトの連絡、残業の指示が微信に残っていることが多く、有力な証拠です。アカウントを消したり機種変更でデータを失ったりしないよう、画面の保存を先に行ってください。
  • 送り出し機関や仲介者:技能実習の送り出し機関や仲介者から、請求すると帰国させられる、家族に迷惑がかかると言われることがあります。技能実習法は実習生に対する人権侵害行為を禁じており、こうした圧力はそれ自体が通報の対象です。
  • 言語:給与明細や雇用契約書は日本語で、中国語の説明と内容が違うことがあります。日本語の書面が基準になるため、翻訳して確認してください。
  • 会社からの反撃:請求すると、会社が本人の資格外活動や経歴の不一致を入管に申告すると言ってくることがあります。本人に落ち度があるかどうかを事前に点検し、刑事・入管の問題を含めて対応できる体制で臨む必要があります。

弁護士に相談すべき場面

  • 残業の時給が通常の時給より低い、または最低賃金を下回っていると感じるとき。
  • 固定残業代や管理職を理由に残業代が一切支払われていないとき。
  • タイムカードがなく、自分の記録で立証できるか不安なとき。
  • 帰国や転職の予定があり、その前に請求を終えたいとき。
  • 請求したことを理由に解雇や実習中止をほのめかされたとき。

舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。労働事件は、解雇や未払賃金の問題と在留資格の問題が同時に進むことが多いため、労働事件と入管事件を一体で扱い、全国からご相談を承ります。行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。

よくある質問

技能実習生でも残業代を請求できますか

請求できます。技能実習生は日本法上の労働者であり、労働基準法・最低賃金法が全面的に適用されます。技能実習法は実習生の保護を目的としており、不払は外国人技能実習機構への申告の対象にもなります。

タイムカードがありません。請求は無理ですか

無理ではありません。微信やLINEの送信時刻、メール、ICカードの乗降記録、位置情報、手帳のメモなどで労働時間を立証できます。労働時間を記録していない不利益は会社側に働きます。

何年前の分まで請求できますか

賃金の請求権は当分の間3年で時効にかかります(労働基準法115条・附則143条)。給料日ごとに古い分から消えていくため、早めに請求の通知を送ることが大切です。

残業代を請求したら在留資格の更新に不利になりますか

なりません。正当な権利行使であり、入管の審査で不利に扱われることはありません。ただし、在留資格の範囲を超えて働いていた事実がある場合は別途の検討が必要です。

中国に帰国してからでも請求できますか

できます。弁護士を代理人とすれば、中国にいながら交渉や労働審判の申立てを進められます。帰国前に委任状と証拠を整えてください。

根拠条文・出典

  • 労働基準法3条(国籍等による差別的取扱いの禁止)、24条(賃金の全額払)、32条(労働時間)、36条(時間外及び休日の労働)、37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
  • 労働基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外・管理監督者)、104条(監督機関に対する申告)、109条(記録の保存)、114条(付加金)、115条・附則143条(賃金請求権の消滅時効・当分の間3年)
  • 最低賃金法4条(最低賃金の効力)
  • 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)
  • 労働審判法15条2項(原則3回以内の期日での審理終結)
  • 出入国管理及び難民認定法19条(活動の範囲)、21条(在留期間の更新)

関連する解説

ご相談・お問い合わせ

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)
中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。全国からご相談を承ります。
電話:050-7587-4639
微信(WeChat)ID:matsumura1119
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

本ページは一般的な情報提供であり、個別の事案の結果を保証するものではありません。

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