口頭審理とは|特別審理官による審理の請求期間と立会い・判定の効果
2026/09/04
口頭審理とは、入国審査官の認定に服さない外国人の請求により、特別審理官が改めて退去強制事由に該当するかどうかを審理する手続をいう。退去強制手続における3段階の審査のうち第2段階に当たる。
この記事の要点
- 口頭審理は、入国審査官の認定に服さない場合に、本人の請求によって開かれる。
- 請求は、認定の通知を受けた日から3日以内にしなければならない。
- 審理を行うのは特別審理官であり、入国審査官とは別の職である。
- 容疑者は証拠を提出し、証人の尋問を請求し、親族または知人の立会いを申請することができる。
- 判定に服さない場合、3日以内に法務大臣への異議の申出をすることになる。
口頭審理とは何か
口頭審理は、違反審査における入国審査官の認定を、改めて審理し直す手続である。入管法は、認定に服さない容疑者に口頭審理の請求権を認め、その審理を特別審理官が行うものとしている。
もっとも、口頭審理は裁判ではない。特別審理官は入管の職員であり、外部の中立な第三者ではない。この点で、刑事事件における控訴審とは性質が異なる。それでも、容疑者が自ら述べ、証拠を提出できる機会としては、退去強制手続の中で最もまとまった場である。
口頭審理はどのように請求するか
結論として、認定の通知を受けた日から3日以内に、口頭審理の請求をしなければならない。この期間は極めて短く、しかも収容された状態で判断を迫られることが多い。
実務上、この場面で最も避けるべきは、認定に服する旨の文書に署名してしまうことである。署名すれば口頭審理を請求する権利を失い、主任審査官が退去強制令書を発付できる状態になる。日本での生活を続けたいという希望があるのであれば、まず口頭審理を請求し、審理の場で事情を述べるべきである。
口頭審理はどのように行われるか
口頭審理は、入管の庁舎内で非公開により行われる。特別審理官が容疑者に事実関係を尋ね、提出された資料を検討したうえで判定する。日本語を理解できない場合には、通訳を介して行われるのが通例である。
入管法上、容疑者は、証拠を提出し、証人の尋問を請求することができるとされ、また、親族または知人の立会いを申請することができるとされている。実務上は、代理人である弁護士の立会いが認められる運用が広く行われている。審理の内容は調書にまとめられ、後の段階でも資料として用いられる。
口頭審理の判定にはどのような種類があるか
結論として、判定は認定に誤りがあるかどうかで分かれ、その後の道筋が変わる。
| 判定の内容 | その後の取扱い |
|---|---|
| 認定が事実に相違する | 直ちに放免される |
| 認定に誤りがない | 本人に通知される。服する場合は退去強制令書が発付され、服さない場合は3日以内に異議の申出ができる |
判定に服する旨の文書に署名すると、その先の異議の申出ができなくなる。在留特別許可は異議の申出を経た裁決の段階で判断されるため、ここで署名することは、在留を求める道を閉ざすことを意味する。
違反審査と口頭審理は何が違うか
結論として、担当する職と手続の密度が異なる。もっとも、審理の対象が退去強制事由該当性である点は共通する。
| 比較の視点 | 違反審査 | 口頭審理 |
|---|---|---|
| 担当する職 | 入国審査官 | 特別審理官 |
| 開始のきっかけ | 入国警備官からの引渡し | 容疑者の請求(3日以内) |
| 立会い | 制度上の定めがない | 親族または知人の立会いを申請できる |
| 証拠の提出 | 資料の提出は可能 | 証拠の提出と証人尋問の請求ができる |
| 結論の呼び方 | 認定 | 判定 |
| 不服の申立て | 口頭審理の請求 | 異議の申出 |
口頭審理では何を主張すべきか
主張の柱は二つある。第1は、そもそも退去強制事由に該当しないという主張である。事実関係に誤りがある場合、または入管法の解釈上その事由に当たらない場合には、証拠を示して具体的に述べる必要がある。
第2は、退去強制事由には該当するとしても、日本での在留を認めるべき事情があるという主張である。これは判定の対象そのものではないが、口頭審理の調書に残ることで、後の在留特別許可の判断における資料となる。家族関係、在留期間、就労と納税の状況、子の就学状況など、生活の実態を示す資料を整理して提出しておくことが実務上重要である。
外国人の刑事事件で口頭審理が問題になるのはどのような場面か
刑事事件で有罪判決を受けた後の退去強制手続で、口頭審理が実質的な主戦場となることが多い。刑の重さそのものを争うことはできないが、事件の経緯、被害弁償の状況、再犯防止のための環境、家族の監督といった事情を、資料とともに示す場になるからである。
そのため、刑事弁護の段階で作成した示談書、身元引受書、反省文、家族の陳述書などは、口頭審理でもそのまま資料として活かせる。刑事事件が終わってから資料を集め直すのでは、3日という請求期間に間に合わないことがある。
よくあるご質問
Q1 口頭審理はいつまでに請求すればよいですか。
入国審査官の認定の通知を受けた日から3日以内です。この期間を過ぎると請求できなくなり、退去強制令書が発付されうる状態になります。収容されている場合は特に時間の余裕がありませんので、通知を受けたらすぐに対応してください。
Q2 口頭審理に弁護士が立ち会うことはできますか。
入管法上、容疑者は親族または知人の立会いを申請することができるとされており、実務上は代理人である弁護士の立会いが認められる運用が広く行われています。もっとも取扱いには幅がありますので、事前に確認して申請しておくことが大切です。
Q3 口頭審理で在留を認めてもらうことはできますか。
口頭審理の判定そのものは、退去強制事由に該当するかどうかについての判断です。在留特別許可は、その後の異議の申出に対する法務大臣の裁決の段階で判断されます。ただし、口頭審理で述べた事情は調書に残り、その後の判断の資料になります。
Q4 口頭審理では証拠を出せますか。
出せます。入管法上、容疑者は証拠を提出し、証人の尋問を請求することができるとされています。家族の陳述書、在職証明書、住民票、子の在学証明書など、生活の実態を示す資料を整理して提出することが実務上重要です。
Q5 口頭審理の日に日本語が分からない場合はどうなりますか。
通訳を介して行われるのが通例です。ただし、専門用語の訳がずれると、意図と異なる内容が調書に残ることがあります。分からない点はその場で確認を求め、調書の読み聞かせの際にも遠慮なく訂正を申し出てください。
おわりに
口頭審理は、退去強制手続の中で当事者が最もまとまって話すことのできる場である。しかし、請求できる期間は3日しかなく、収容されていれば資料を集める手立ても限られる。この場に何を持ち込めるかは、その前の段階でどれだけ準備できていたかで決まってしまう。
外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。
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