逮捕された家族はどこにいる?勾留場所の調べ方と、弁護士なら調べられることが多い理由
2026/10/13
家族が逮捕されたのに、どこの警察署にいるのかわからない。警察に電話しても教えてもらえない。このような場合でも、弁護士が「弁護人となろうとする者」として警察署・検察庁・裁判所に照会すれば、多くの場合、勾留場所を突き止めることができる。
この記事の要点
- 逮捕・勾留された被疑者は、通常、警察署の留置施設に収容される。逮捕した警察署と別の警察署に収容されることもある。
- 逮捕の段階で警察が家族に知らせる法律上の規定はない。勾留されると、弁護人または本人が指定した親族一人に通知される(刑事訴訟法79条)。
- 家族が電話で問い合わせても、警察は回答しないことが多い。
- 家族から依頼を受けた弁護士は、接見の申入れを前提に警察署・検察庁・裁判所へ照会でき、所在を確認できることが多い。
- 中国籍の方が逮捕された場合、日本の当局は遅くとも4日以内に中国の領事機関へ通報する(日中領事協定8条1項(b))。
逮捕された人は、どこに身柄を置かれるのか?
結論:逮捕から起訴までは、ほとんどの場合、警察署の留置施設(いわゆる留置場)に収容される。
刑事収容施設法は、本来、勾留された被疑者を拘置所などの刑事施設に収容することを予定しているが、実務では警察署の留置施設を刑事施設に代えて用いる運用(代用刑事施設)が大半を占める。勾留状には勾留すべき場所が記載され、その場所が「勾留場所」である。
注意すべきは、逮捕した警察署と、実際に収容される警察署が一致するとは限らない点である。留置施設の収容状況、男女の別、共犯者どうしを分けて収容する必要などから、別の警察署に収容されることは珍しくない。起訴後には拘置所へ移ることもある。
| 段階 | 期間の目安 | 身柄の場所 | 家族が面会できるか |
|---|---|---|---|
| 逮捕〜検察官送致 | 48時間以内(刑事訴訟法203条) | 警察署の留置施設 | できない(弁護士のみ接見可) |
| 送致〜勾留請求 | 24時間以内(同法205条) | 警察署の留置施設(取調べのため検察庁へ押送されることがある) | できない(弁護士のみ接見可) |
| 勾留 | 原則10日、延長で最大20日(同法208条) | 勾留状に記載された場所(多くは警察署の留置施設) | 原則可能。ただし接見等禁止決定があれば不可 |
| 起訴後 | 判決まで | 警察署の留置施設または拘置所 | 原則可能 |
なお、刑事手続ではなく出入国在留管理庁に収容された場合は、収容先は警察署ではなく地方出入国在留管理局等の収容施設となる。調べるべき先が異なるので、区別が必要である。
警察は家族に逮捕や勾留場所を知らせてくれるのか?
結論:逮捕の時点で家族に知らせる法律上の義務はない。勾留されれば通知の仕組みはあるが、本人が家族を指定しなければ家族には届かない。
刑事訴訟法79条は、次のとおり定める。
「被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならない。被告人に弁護人がないときは、被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹のうち被告人の指定する者一人にその旨を通知しなければならない。」
この規定は、同法207条1項(「前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。」)により、被疑者の勾留にも及ぶ。したがって、勾留が決まった段階で、本人が指定した家族には裁判所から通知が届く。
しかし、この仕組みには限界がある。
- 逮捕から勾留決定までの最大72時間は、通知の仕組みがない。
- 本人が家族を指定しなければ、通知は届かない。
- 外国人で日本に家族がいない場合、通知先がないこともある。
- 家族が警察署に電話で問い合わせても、本人の個人情報や捜査への影響を理由に、回答されないことが多い。
家族が自分でできる調べ方はあるか?
結論:手がかりを集めることはできる。ただし、所在の確定は弁護士に任せるのが早い。
| 手がかり | わかること | 注意点 |
|---|---|---|
| 逮捕・捜索の現場に立ち会った場合の警察官の説明 | 担当した警察署名 | 担当署と収容先が異なることがある |
| 捜索差押えの際に交付された押収品目録交付書 | 押収した警察署名・担当者 | 最も確実な手がかりの一つ。必ず保管する |
| 勤務先・同居人・知人からの情報 | 逮捕された日時・場所 | 逮捕場所の管轄署が手がかりになる |
| 裁判所からの勾留通知 | 勾留場所 | 本人が家族を指定した場合に限られる |
| 報道 | 担当警察署 | 報道されない事件が大半 |
弁護士会の当番弁護士制度は家族からの依頼も受け付けているが、派遣先の警察署を特定できないと、迅速な派遣が難しくなる。
弁護士はどうやって勾留場所を調べるのか?
結論:弁護士は、家族の依頼を受けた「弁護人となろうとする者」として、関係する警察署・検察庁・裁判所に順に照会し、接見を申し入れる。
| 照会先 | 確認できること | ポイント |
|---|---|---|
| 逮捕場所・住所地を管轄する警察署 | 本人の留置の有無、事件の担当課 | 家族の依頼を受けた弁護士であること、接見の希望を明確に伝える |
| 周辺の警察署の留置担当 | 他署への分散収容の有無 | 男女別・共犯者分離による移送を想定して当たる |
| 検察庁 | 送致の有無、担当検察官 | 送致後であれば事件の所在をたどりやすい |
| 裁判所(勾留を扱う部署) | 勾留決定の有無、勾留場所 | 回答の範囲は裁判所や照会の段階によって異なる |
| 大使館・領事館(外国人の場合) | 領事通報の有無 | 領事機関の判断で情報提供の可否が分かれる |
また、本人が弁護士を名指しして弁護人の選任を申し出た場合、申出を受けた刑事施設の長等は、直ちにその弁護士に通知しなければならない(刑事訴訟法209条・78条)。本人が「松村大介弁護士を呼んでほしい」と申し出れば、当事務所に連絡が入り、所在がわかる仕組みである。
なぜ弁護士なら調べられることが多いのか?
結論:弁護士には、逮捕直後から本人と立会人なしで面会できる接見交通権があり、捜査機関はその申入れに応じる前提で所在を確認せざるを得ないからである。
被疑者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は、本人とは独立して弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条2項)。その依頼を受けた弁護士は「弁護人となろうとする者」として、本人と立会人なく接見できる(同法39条1項)。逮捕から勾留決定までの間、家族は本人に会えないが、弁護士は会える。
この接見の申入れは、本人がどこにいるかを特定しなければ実現しない。家族の電話には答えない警察署も、弁護士からの接見の申入れには、本人の在否を確認して対応するのが通常である。ただし、本人がその弁護士の選任を明確に拒んでいる場合などは、回答が得られないこともある。
中国籍など外国人が逮捕された場合はどうなるか?
結論:領事機関への通報の仕組みがある。中国籍の場合は、本人の要請がなくても4日以内に通報される。
領事関係に関するウィーン条約36条は、本人が要請した場合に領事機関へ通報する仕組みを定める。これに対し、日中領事協定8条1項(b)は、本人の要請の有無にかかわらず、日本の当局が「そのような事実及びその理由を、遅滞なく、遅くともこれらの逮捕、留置、勾留又は拘禁の日から四日以内に、当該領事機関に通報する。」と定めている。
中国にいる家族が大使館・総領事館に問い合わせることで、手がかりが得られる場合もある。もっとも、領事機関が家族にどこまで情報を伝えるかは個別の対応による。
外国人の事件では、所在の確認と同じくらい、在留資格への影響を初回接見で正確に伝えることが重要である。当事務所では、外国人の刑事事件の接見に、事務所の中国語専属通訳または中国律師が通訳として同行する。全国の警察署へ出張接見する。
勾留場所がわかったら、次に何をすべきか?
結論:早急に接見し、本人の言い分と希望を確認したうえで、身柄解放と処分の見通しに向けた手を打つ。
- 接見:取調べへの対応、黙秘権、供述調書への署名の注意点を伝える。
- 接見等禁止の有無の確認:禁止されていれば家族は面会できない。準抗告で争うことができる。
- 勾留そのものを争う:勾留決定に対する準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)、勾留理由開示請求(同法82条)。
- 差入れ・家族との連絡の仲介
- 示談・不起訴に向けた活動、外国人であれば在留資格への影響を踏まえた方針の決定。
よくある質問
家族が警察署に電話すれば、本人がいるか教えてもらえますか。
教えてもらえないことが多い。警察は本人の個人情報や捜査への影響を理由に、電話での問い合わせには回答しないのが通例である。弁護士が弁護人となろうとする者として照会すると、所在を確認できることが多くなる。
勾留されたら、家族に通知は来ますか。
刑事訴訟法79条により、勾留されると弁護人に、弁護人がいなければ本人が指定した親族一人に通知される。本人が家族を指定しなければ通知は届かない。逮捕の段階で家族へ通知する規定はない。
どの警察署にいるかわからなくても、弁護士に依頼できますか。
依頼できる。家族は独立して弁護人を選任できるため、依頼を受けた弁護士が警察署・検察庁・裁判所に照会し、所在を確認したうえで接見に向かう。
中国籍の家族が逮捕された場合、大使館や領事館は把握していますか。
日中領事協定8条1項(b)により、日本の当局は本人の要請の有無にかかわらず、遅くとも逮捕・勾留等の日から4日以内に中国の領事機関へ通報する。領事機関が家族に情報を伝えるかどうかは個別の対応による。
逮捕された警察署と勾留されている警察署が違うことはありますか。
ある。留置施設の収容状況、男女の別、共犯者との分離などの理由で、逮捕した警察署とは別の警察署の留置施設に収容されることがある。起訴後に拘置所へ移ることもある。
根拠条文・出典
- 刑事訴訟法30条2項、39条1項、78条、79条、82条、203条、205条、207条1項、208条、209条、429条1項2号(e-Gov法令検索)
- 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律15条(代用刑事施設)
- 領事関係に関するウィーン条約36条
- 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定8条1項(b)(外務省)
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中国語専属通訳または中国律師が接見に同行。全国の警察署へ出張接見する。