前科と前歴とは|両者の違いと記録の残り方、在留資格の審査での扱い
2026/09/04
前科とは、確定した有罪判決を受けた事実をいい、前歴とは、捜査の対象となった事実の記録をいう。不起訴処分で終わった場合や微罪処分で終わった場合には前科は付かないが、前歴は残る。両者は記録される場所も、法律上の効果も異なる。
この記事の要点
- 前科は有罪判決の確定によって生じ、罰金や執行猶予の場合も前科に当たる。
- 前歴は捜査の対象となった記録であり、不起訴となった場合でも残る。
- 前科と前歴のいずれも、第三者が記録を閲覧することはできない。
- 在留資格の審査では、素行が善良であるかどうかの判断材料として扱われる。
前科とは何か
前科とは、有罪判決が確定した事実をいう。拘禁刑の実刑はもちろん、執行猶予が付いた場合も、略式命令による罰金の場合も、有罪判決が確定した以上は前科である。書面のやり取りだけで終わる罰金の事件は軽く受け止められがちであるが、記録としては同じように残る。
前科は、検察庁が保有する犯歴の記録として管理されるほか、資格の制限などのために市区町村が保有する記録にも登載される。いずれも第三者が閲覧できるものではない。
前歴とは何か
前歴とは、捜査の対象となった事実の記録をいう。逮捕された、あるいは被疑者として取調べを受けたという事実が、捜査機関の記録として残る。不起訴処分で終わった場合も、微罪処分で終わった場合も、記録そのものは残る。
前歴には、前科のような法律上の効果はない。資格を制限する根拠にもならない。しかし、後に別の事件で捜査を受けたときに、量刑や処分の判断において考慮されることがある。
前科と前歴は何が違うか
有罪判決の確定を要するかどうかが最大の違いである。前科は判決の確定によって生じ、前歴は捜査の開始によって生じる。
| 項目 | 前科 | 前歴 |
|---|---|---|
| 意味 | 確定した有罪判決を受けた事実 | 捜査の対象となった事実の記録 |
| 生じる時点 | 判決の確定時 | 捜査の開始時 |
| 不起訴の場合 | 付かない | 残る |
| 法律上の効果 | 資格の制限などがある | 直接の効果はない |
| 主な保有機関 | 検察庁、市区町村 | 警察、検察庁 |
| 第三者の閲覧 | できない | できない |
前科は消えるのか
刑の言渡しの効力は失われることがあるが、記録が消えるわけではない。刑法は、刑の執行を終えるなどしてから一定の期間が経過したときは、刑の言渡しが効力を失うと定めている。これにより、有罪判決を理由とする資格の制限は解ける。
もっとも、これは法律上の効果が消えるという意味であって、検察庁が保有する犯歴の記録が抹消されるわけではない。後に別の事件で処分を受ける際に、過去の有罪判決が考慮されることは避けられない。
前科・前歴は在留資格の審査でどう扱われるか
退去強制事由への該当性と、素行が善良であるかどうかの二つの場面で問題になる。まず、入管法24条第4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由として定めているが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれる。同条第4号チは薬物に関する罪について定めており、こちらは刑の重さを問わない。
また、別表第一の在留資格で在留する者については、入管法24条第4号の2により、刑法の一定の罪により拘禁刑に処せられたときは、執行猶予が付いた場合であっても退去強制事由に当たるとされている。退去強制事由に該当しない場合であっても、在留期間更新許可や在留資格変更許可の審査では、素行が善良であることが考慮される。前歴にとどまる場合も、事情の説明を求められることがある。
外国人の事件で前科・前歴が問題になるのはどのような場面か
申請書の記載と、審査における説明の場面である。在留期間の更新や変更の申請書には、犯罪を理由とする処分を受けたことの有無を記載する欄がある。事実に反する記載をすれば、それ自体が信用を損なうことになり、在留資格の取消しにつながる可能性もある。
したがって、事実は正確に記載したうえで、事案の内容、被害の回復、その後の生活状況を資料で示すという構成をとることになる。示談の書面や贖罪寄付の受領証明書は、この場面で意味を持つ。刑事処分が軽く済んだからといって在留の問題が終わるわけではなく、二つの手続を一体として考える必要がある。
よくあるご質問
Q1 不起訴になれば前科はつきませんか。
つきません。前科は有罪判決が確定した場合に生じますので、不起訴で終われば前科にはなりません。ただし、捜査の対象となった記録である前歴は残ります。前歴が残ること自体は避けられません。
Q2 罰金でも前科になりますか。
なります。略式命令による罰金であっても、有罪判決が確定したものとして前科に当たります。書面だけで手続が終わるため軽く受け止められがちですが、記録としては拘禁刑の場合と同じく残ります。
Q3 前科は何年で消えますか。
刑法上、刑の執行を終えてから一定の期間が経過すると、刑の言渡しは効力を失うとされています。もっとも、これは資格の制限が解けるという意味であり、捜査機関や検察庁が保有する記録が消えるわけではありません。
Q4 前歴があると在留期間の更新は不許可になりますか。
前歴があることだけで直ちに不許可となるわけではありません。審査では、素行が善良であるかどうかが、事案の内容、期間の経過、その後の生活状況などと併せて判断されます。事情を説明する資料を整えて申請することが大切です。
Q5 前科や前歴は会社や本国に知られますか。
第三者が前科や前歴の記録を閲覧することはできません。もっとも、報道や勤務先での欠勤、在留資格の手続などを通じて事実上知られることはあります。申告義務の有無は場面によって異なりますので、個別にご相談ください。
おわりに
前科と前歴は、日常の会話では区別されずに使われるが、法律上の効果はまるで異なる。外国人の方にとって重要なのは、不起訴で終わっても記録は残り、後の在留の審査で説明を求められることがあるという点である。どう説明できる状態にしておくかを、刑事手続の段階から考えておきたい。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
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