在留期間更新許可とは|相当の理由の判断枠組みと前科がある場合の実務
2026/09/04
在留期間更新許可とは、現に有する在留資格を変えずに在留期間の延長を受けるための許可をいう。入管法21条は、法務大臣が在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができると定めている。実務上、権限は地方出入国在留管理局長に委任されている。
この記事の要点
- 更新は当然に認められる権利ではなく、相当の理由があるときに限り許可される。
- 申請は在留期間の満了日のおおむね3か月前から行うことができる。
- 満了日までに申請すれば、特例期間の間は引き続き在留できる。
- 素行の善良性や納税義務の履行などが、公表された指針で考慮事項とされている。
- 退去強制事由に当たらない前科でも、更新の判断に影響することがある。
在留期間更新許可とは何か
在留期間更新許可とは、同じ在留資格のまま日本での在留を続けるための手続である。在留資格には期間が定められており、その満了までに更新の許可を受けなければ、在留の根拠を失う。更新は、これまでの在留の実績を前提としつつ、その時点で改めて在留を認めるのが相当かどうかを審査するものであり、単なる期間の延長手続ではない。この点で、活動の内容が変わる場合に必要となる在留資格変更許可とは審査の対象が異なる。
更新はいつまでに申請するか
在留期間の満了日までに申請しておくことが決定的に重要である。申請は満了日のおおむね3か月前から受け付けられている。満了日までに申請していれば、処分がされるまでの間、又は満了日から2か月を経過する日までは、引き続き在留することができるとされている。これを特例期間と呼ぶ。逆に、満了日を過ぎてから申請しようとすると、その時点で不法残留の状態となり、退去強制手続の対象となりうる。
更新の審査ではどのような点が見られるか
出入国在留管理庁が公表している在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドラインは、次の各点を考慮事項として挙げている。すべてを満たせば必ず許可されるという性質のものではなく、総合的に判断される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 行おうとする活動 | 申請に係る活動が偽りのものでないこと |
| 在留資格該当性 | 行おうとする活動が在留資格に該当すること |
| 上陸許可基準 | 基準省令の定めに適合していること |
| 素行 | 素行が善良であること |
| 独立の生計 | 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること |
| 雇用と労働条件 | 雇用や労働条件が適正であること |
| 納税義務 | 納税義務を履行していること |
| 各種の届出 | 住居地の届出など、法律上の義務を履行していること |
更新の判断にはどのような裁量が認められているか
広範な裁量が認められているというのが判例の立場である。最高裁大法廷昭和53年10月4日判決、いわゆるマクリーン判決は、外国人には在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利は憲法上保障されておらず、更新事由の有無の判断は法務大臣の裁量に委ねられていると判示した。もっとも、裁量であっても無制約ではなく、判断の基礎とされた事実に誤認があるなど、社会通念上著しく妥当性を欠く場合には違法となる。争う場面では、この枠組みに沿って具体的な事実を積み上げることになる。
前科がある場合に更新は認められるか
退去強制事由に当たらないことは、更新が認められるための下限にすぎない。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としているが、これに当たらない罰金や執行猶予付きの判決であっても、素行の評価を通じて更新の判断に影響する。実務では、罪名の異同だけでなく、侵害された法益の性質、被害の回復の有無、再発防止の具体的な取組みを示すことが重要となる。個人的な法益が侵害された事案では、示談や被害弁償が反社会性の評価に影響しうる。
更新が不許可になるとどうなるか
多くの場合、出国の準備のための短期間の在留が認められる。指定された期間内に出国するか、事情によっては他の在留資格への変更を検討することになる。期間を過ぎて残留すれば不法残留となり、退去強制手続に進む。不許可の判断そのものを争う場合には、取消訴訟を提起することが考えられる。行政手続法は申請に対する拒否処分について理由を示すことを求めており、示された理由の内容が争点となることもある。
在留期間更新許可と在留資格変更許可は何が違うか
活動の内容が変わるかどうかによって、必要な手続が分かれる。
| 項目 | 在留期間更新許可 | 在留資格変更許可 |
|---|---|---|
| 目的 | 同じ在留資格のまま期間を延ばす | 別の在留資格に変わる |
| 根拠 | 入管法21条 | 入管法20条 |
| 判断基準 | 更新を適当と認めるに足りる相当の理由 | 変更を適当と認めるに足りる相当の理由 |
| 典型例 | 同じ会社で働き続ける場合 | 留学から就労資格へ移る場合 |
外国人の刑事事件で在留期間更新が問題になるのはどのような場面か
刑事処分が確定した後の最初の更新申請が、実質的な分かれ目になる。刑事手続で罰金や執行猶予にとどまったとしても、それは退去強制事由に当たらないという意味にすぎず、在留を続けられることを意味しない。更新の審査では、事件の内容、勤務先が雇用を継続しているか、被害の回復がされているか、再発防止の体制があるかが問われる。したがって、刑事弁護の段階から、示談書、贖罪寄付の受領証、身元引受書、勤務先の上申書などを整えておくことが有益である。
関連する語として、在留資格取消し、素行が善良であること、就労資格証明書も併せてご覧ください。
よくあるご質問
Q1 在留期間の満了日までに結果が出ない場合、その日を過ぎたら不法残留になりますか。
なりません。満了日までに更新の申請をしていれば、処分がされるまでの間、又は満了日から2か月を経過する日までは、引き続き在留することができるとされています。この特例期間中も、従前の在留資格に応じた活動を続けることができます。
Q2 罰金の前科がありますが、更新は認められますか。
結果を保証することはできません。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合は退去強制事由に当たりますが、それに至らない罰金や執行猶予付きの判決であっても、素行の評価を通じて更新の判断に影響します。事案の内容と反省の状況を資料で示すことが重要です。
Q3 更新が不許可になった場合、すぐに帰国しなければなりませんか。
多くの場合、出国の準備のための短期間の在留が認められます。その期間内に出国するか、事情によっては別の在留資格への変更を検討することになります。争う場合には取消訴訟を提起する方法もあります。
Q4 転職しましたが、更新の際に不利になりますか。
転職そのものが直ちに不利になるわけではありません。新しい職務の内容が在留資格に該当していること、契約機関に関する届出を行っていることを示せるかどうかが問題になります。
Q5 更新の申請はいつからできますか。
在留期間の満了日のおおむね3か月前から申請できるとされています。就労資格の方は、勤務先の資料をそろえる時間も必要ですので、早めに準備を始めることをお勧めします。
おわりに
在留期間の更新は、日々の生活が続いていくための手続でありながら、その判断には広い裁量が認められている。刑事事件が終わったことと、日本での生活を続けられることとは、別の問題である。更新の審査で見られる事情は、事件のさなかにこそ整えられるものが多い。刑事手続と在留の問題は、切り離さずに一体として考える必要がある。
外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
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