素行が善良であることとは|永住許可の素行要件と前科・執行猶予の扱い
2026/09/04
素行が善良であることとは、永住許可の要件の一つであり、法令を遵守し、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることをいう。入管法22条は永住許可の要件として素行が善良であることを掲げており、その具体的な内容は出入国在留管理庁が公表する永住許可に関するガイドラインが示している。
この記事の要点
- 永住許可の要件として入管法に定められ、具体的な判断基準はガイドラインが示している。
- 拘禁刑や罰金に処せられたことがないことが基本であり、刑の消滅などの例外がある。
- 少年法による保護処分中でないこと、違法行為を繰り返していないことも要素となる。
- 納税や社会保険料の納付は、素行要件ではなく国益適合要件の中で審査される整理である。
- 日本人、永住者または特別永住者の配偶者や子については、この要件は求められない。
素行が善良であることとは何か
素行が善良であることとは、永住許可という最も安定した在留資格を与えるにふさわしい生活態度を備えているかを問う要件である。入管法22条は、永住許可について、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、その者の永住が日本国の利益に合すると認められることの三つを定めており、このうち第一のものが素行要件である。実務上は前科や前歴の有無が中心的な判断材料となる。
素行が善良であるといえるのはどのような場合か
結論として、法令違反による処罰歴がなく、違法行為や風紀を乱す行為を繰り返していない場合である。ガイドラインが挙げる観点は次のとおりである。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 刑事処分 | 日本国または地方公共団体の法令に違反して拘禁刑または罰金に処せられたことがないこと |
| 刑の消滅等 | 刑の言渡しの効力が失われた場合、または執行猶予期間の経過後さらに一定期間を経過した場合は、処罰歴があっても要件を満たしうる |
| 少年の保護処分 | 少年法による保護処分が継続中でないこと |
| 日常生活 | 日常生活または社会生活において違法行為または風紀を乱す行為を繰り返し行っていないこと |
ここでいう法令違反には、刑法上の犯罪だけでなく、道路交通法違反や入管法違反も含まれる。回数と頻度も評価の対象となる。
前科がある場合はどのように扱われるか
結論として、刑の種類と、刑の言渡しの効力が失われているかによって扱いが分かれる。
罰金刑については、その執行を終えてから一定期間が経過すると、刑の言渡しの効力が失われる。拘禁刑の実刑についても、執行を終えてから一定期間の経過により同様の効果が生じる。執行猶予付きの判決を受けた場合は、猶予期間が満了すれば刑の言渡しは効力を失うが、ガイドラインはさらに一定期間の経過を求めている。
不起訴処分となった事件は有罪判決ではないため、前科には当たらない。もっとも、逮捕歴や不起訴歴は前歴として記録に残り、審査の中で事情を問われることがある。刑事事件の段階で不起訴処分を得ておくことは、その後の在留手続にとって大きな意味を持つ。
交通違反や税金の滞納は素行要件に影響するか
結論として、交通違反は回数と内容によって影響し、税金や社会保険料の未納は主として別の要件で評価される。
駐車違反や速度超過などの反則金で処理される違反は、直ちに罰金刑に当たるものではない。ただし短期間に繰り返している場合は、違法行為を繰り返していると評価されうる。飲酒運転や無免許運転は重く受け止められる。
一方、住民税や所得税の未納、国民健康保険料や年金保険料の未納は、ガイドライン上、国益適合要件の中の公的義務の履行として審査されるのが実務の整理である。素行要件の枠外だから軽いということではなく、永住許可の可否という結論においては同じように重要である。関連する要件については独立生計要件および永住許可の解説も参照されたい。
素行要件が求められない人はいるか
結論として、日本人、永住者または特別永住者の配偶者および子については、素行要件と独立生計要件は求められない。
これらの者については、国益適合要件のみが審査される。もっとも、その中でも公的義務の履行や在留状況は審査されるため、生活態度がまったく問われないわけではない。
素行が善良であることと素行が不良でないことは何が違うか
結論として、前者は永住許可の積極的要件であり、後者は在留期間の更新や在留資格の変更における消極的な考慮要素である。
| 比較項目 | 素行が善良であること | 素行が不良でないこと |
|---|---|---|
| 場面 | 永住許可の申請 | 在留期間の更新、在留資格の変更 |
| 根拠 | 入管法22条および永住許可に関するガイドライン | 在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン |
| 審査の性格 | 善良であることを積極的に示す必要がある | 不良でなければよく、良好であることまでは求められない |
| 処罰歴の影響 | 罰金でも要件を満たさなくなりうる | 罪名、法益、量刑、示談の有無などを総合して判断される |
更新の場面では、罰金刑が直ちに不許可を意味するわけではない。もっとも、薬物事犯や入管法違反、児童の保護に関わる犯罪など、社会的法益に関わる罪は厳しい評価を受けやすい。
外国人の刑事事件で素行要件が問題になるのはどのような場面か
結論として、刑事手続の結末が、そのまま永住許可や在留期間更新の可否を左右する場面である。
刑事弁護の目標は、無罪を争う事案を除けば、まず不起訴処分の獲得であり、次に罰金にとどめること、公判となった場合には執行猶予を得ることである。もっとも、罰金であっても永住許可の素行要件との関係では不利に働く。外国人の依頼者については、量刑の見通しだけでなく、その後の在留手続への影響を初期の段階から説明する必要がある。
示談書、被害弁償の領収書、贖罪寄付の受領証、雇用主の上申書などは、その後の入管手続でも資料として役立つ。刑事事件の段階で散逸させずに保管しておくことが大切である。
よくあるご質問
Q1 罰金を1回払ったことがあります。永住許可は無理ですか。
直ちに無理と決まるわけではありません。罰金は執行を終えてから一定期間の経過により刑の言渡しの効力が失われます。その時期を踏まえて申請時期を検討することになります。
Q2 執行猶予期間が終わりました。すぐに永住許可を申請できますか。
猶予期間の満了により刑の言渡しは効力を失いますが、ガイドラインはさらに一定期間の経過を求めています。満了直後の申請は素行要件の点で厳しい判断を受けやすいため、時期の見極めが必要です。
Q3 不起訴になった事件は素行要件に影響しますか。
不起訴処分は有罪判決ではないため前科には当たりません。ただし前歴としては残り、事情を尋ねられることがあります。経緯を説明できるよう準備しておくとよいでしょう。
Q4 交通違反の点数がたまっています。問題になりますか。
回数と内容によります。短期間に繰り返している場合は、違法行為を繰り返していると評価されるおそれがあります。飲酒運転や無免許運転は特に重く見られます。ご不安があれば申請前にご相談ください。
Q5 配偶者が日本人でも素行は審査されますか。
日本人の配偶者については素行要件そのものは求められませんが、国益適合要件の中で在留状況や公的義務の履行が審査されます。生活態度がまったく問われないわけではありません。
おわりに
素行要件は条文の文言だけを読むと漠然としているが、実際には刑事処分の有無と時期がほぼ結論を決める。刑事事件に巻き込まれた時点で、その処分がその後の在留にどう響くかを見通しておきたい。
外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
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