在留資格取消しとは|入管法22条の4の取消事由と意見聴取の手続
2026/09/04
在留資格取消しとは、既に在留資格をもって在留する外国人について、偽りその他不正の手段により許可を受けたことや、在留資格に応じた活動を行っていないことなどの事由があるときに、その在留資格を取り消す処分をいう。入管法22条の4に定められており、平成16年の改正で導入された後、対象となる事由が順次拡げられてきた。
この記事の要点
- 在留資格取消しは、既に与えられている在留資格を失わせる不利益処分である。
- 取消事由は、不正な取得によるものと、活動の不履行や届出義務違反によるものに大別される。
- 取消しの前には、入国審査官による意見聴取の手続が行われる。
- 不正な取得を理由とする場合、出国のための期間が指定されないことがある。
- 処分を争う手段は、取消訴訟と執行停止の申立てである。
在留資格取消しとは何か
在留資格取消しとは、いったん有効に与えられた在留資格を、後から失わせる処分である。在留期間の途中であっても行われる点で、期間満了に伴う在留期間更新許可の不許可とは異なる。制度が設けられた背景には、上陸や在留の審査の段階では発覚しなかった不正や、許可の前提となっていた活動の実態が失われた場合に対応する必要があったという事情がある。取消しは相手方に重い不利益を与えるため、事前の手続が法定されている。
どのような場合に在留資格が取り消されるか
入管法22条の4は、取消しの対象となる事由を限定的に列挙している。主なものは次のとおりであり、活動に関する事由については、正当な理由がある場合を除くという留保が付されている。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 不正な上陸許可 | 偽りその他不正の手段により、上陸拒否事由に当たらないものとして、又は在留資格に該当するものとして上陸の許可を受けたこと |
| 不正な在留許可 | 偽りその他不正の手段により、在留資格の変更、在留期間の更新などの許可を受けたこと |
| 活動の不履行 | 在留資格に応じた活動を行わず、他の活動を行い、又は行おうとして在留していること |
| 3か月以上の不活動 | 在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないこと |
| 配偶者としての活動 | 配偶者の身分に基づく在留資格を持つ者が、配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていないこと |
| 住居地の届出 | 住居地を定めた後90日以内に届け出ないこと、又は虚偽の届出をしたこと |
取消しの手続はどう進むか
取消しに先立ち、入国審査官による意見聴取が行われる。まず意見聴取通知書が送付され、指定された日時に出頭して意見を述べ、資料を提出する機会が与えられる。代理人を選任して出頭させることもでき、通訳を求めることもできる。ここで示した資料と説明が、その後の判断の基礎となるため、通知を受け取った時点で方針を固めておく必要がある。出頭しないまま手続が進むと、こちらの事情が記録に残らないまま結論に至るおそれがある。
取り消されるとどうなるか
取消しの理由によって、その後の扱いが分かれる。活動の不履行や届出義務違反を理由とする場合には、30日を超えない範囲で出国のための期間が指定され、その期間内に出国することが求められる。これに対し、偽りその他不正の手段による取得を理由とする場合には、こうした期間が指定されず、直ちに退去強制手続の対象となりうる。指定された期間を過ぎて残留すれば、不法残留の状態となる。
取消処分に不服がある場合はどうすればよいか
取消訴訟を提起し、必要に応じて執行停止を申し立てるのが中心的な手段である。取消しの前提となった事実の認定に誤りがある場合、正当な理由があるのに考慮されていない場合、意見聴取の手続に不備がある場合などが争点となる。行政手続法は、不利益処分をする際に理由を示すことを求めており、示された理由の記載が不十分であることが争点となることもある。行政事件訴訟法14条の出訴期間に注意が必要である。
在留資格取消しと在留期間更新の不許可は何が違うか
いずれも在留の根拠を失う点では共通するが、時期と手続が異なる。
| 項目 | 在留資格取消し | 在留期間更新の不許可 |
|---|---|---|
| 対象 | 現に有する在留資格を失わせる | 期間の延長を認めない |
| 時期 | 在留期間の途中でも行われる | 期間の満了に際して行われる |
| 事前手続 | 意見聴取が法定されている | 申請に対する審査として行われる |
| その後 | 出国期間の指定又は退去強制手続 | 期間満了により在留の根拠を失う |
退職して3か月が経つと取り消されるのか
直ちに取り消されるわけではなく、正当な理由の有無が判断される。就労資格をもつ方が退職した場合、在留資格に応じた活動を行っていない状態が生じるが、次の就職に向けて具体的に活動している、傷病により就労できない、育児や介護の必要があるといった事情があれば、正当な理由として考慮されうる。転職の際には契約機関に関する届出を行い、活動の空白について説明できる資料を残しておくことが有益である。
外国人の刑事事件で在留資格取消しが問題になるのはどのような場面か
婚姻や就労の実態が捜査で問題とされた場面で、取消しの検討につながることがある。婚姻の実態がないとされれば配偶者としての活動に関する事由が、在留資格と異なる仕事に従事していたとされれば活動の不履行に関する事由が、それぞれ問題になりうる。刑事事件で不起訴となっても、入管が独自に取消しを検討することはある。刑事手続で作成された調書の記載が、後の意見聴取で不利に働くことがあるため、供述の内容には注意が必要である。
関連する語として、資格外活動許可、在留期間更新許可、退去強制事由も併せてご覧ください。
よくあるご質問
Q1 会社を辞めて3か月が経つと必ず在留資格を取り消されますか。
そうとは限りません。取消事由には、正当な理由がある場合を除くという留保が付されています。転職活動を続けている、傷病の治療中である、育児の必要があるといった事情は正当な理由として説明しうるものですので、資料とともに主張することが大切です。
Q2 意見聴取の通知が届きました。行かないとどうなりますか。
出頭しないまま手続が進み、こちらの事情が記録に残らないまま取消しに至るおそれがあります。代理人を立てて出頭することもできますので、通知を受け取ったら早めにご相談ください。
Q3 在留資格を取り消されたら、すぐに帰国しなければなりませんか。
取消しの理由によって異なります。活動の不履行や届出義務違反を理由とする場合には出国のための期間が指定されますが、偽りその他不正の手段を理由とする場合には期間が指定されず、退去強制手続に進むことがあります。
Q4 取消処分を争うことはできますか。
取消訴訟を提起し、必要に応じて執行停止を申し立てるという方法があります。行政事件訴訟法には出訴期間の定めがありますので、処分の通知を受けたら速やかに検討する必要があります。
Q5 取り消されると二度と日本に来られませんか。
その後の経緯によります。指定された期間内に自ら出国した場合と、退去強制された場合とでは、上陸拒否期間の長さが異なります。将来の再入国を考えるなら、どの形で日本を出るかが重要になります。
おわりに
在留資格取消しは、生活が続いている途中で突然その基盤が失われる処分である。会社を辞めた、離婚した、届出を忘れたといった日常の出来事が、そのまま取消事由に結びつくことがある。意見聴取は、こちらの事情を記録に残せる数少ない機会である。通知が届いた段階で、何を説明し、どの資料を出すかを決めておくことをお勧めする。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。
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