不法残留とは|罰則と退去強制手続、出国命令と在留特別許可の分かれ道
2026/09/04
不法残留とは、在留期間を経過して日本に在留することをいう。いわゆるオーバーステイであり、入管法70条の罪に当たるとともに、同法24条4号ロの退去強制事由に該当する。適法に入国した者が期限を過ぎて残る点で、はじめから許可を受けずに入国する不法入国とは異なる。
この記事の要点
- 在留期間の満了の日の翌日から不法残留となり、時間の経過とともに不利な事情が積み重なる。
- 入管法70条は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科を定めている。
- 入管法24条4号ロの退去強制事由に当たり、違反調査から退去強制の手続が進む。
- 自ら出頭し要件を満たせば、収容されずに出国できる出国命令の制度がある。
- 家族関係などの事情によっては、在留特別許可が与えられる場合がある。
不法残留とは何か
不法残留とは、いったんは適法に在留していた者が、在留期間の満了の日を過ぎても日本にとどまっている状態をいう。更新の申請を忘れていた場合も、申請が不許可となり出国準備の期間を過ぎた場合も、いずれも不法残留である。
在留期間の満了の日までに更新または変更の申請をしていれば、審査中は特例として在留が認められる。しかし、申請そのものをしないまま満了の日を過ぎれば、その翌日から不法残留となる。数日の遅れであっても状態としては同じであり、まず現在の状況を正確に把握することが出発点となる。
不法残留にはどのような罰則があるか
結論として、入管法70条により、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科と定められている。
もっとも、不法残留のみの事案では、刑事手続としては起訴猶予となり、入管の退去強制手続に引き継がれることが多い。他方、不法残留の状態で就労していた場合には資格外活動の問題が加わり、他の犯罪を伴う場合には、その罪と併せて公判請求されることもある。雇用していた側についても、入管法73条の2の不法就労助長罪が問題となる。
不法残留が発覚するとどのような手続になるか
結論として、違反調査、違反審査、口頭審理、異議の申出という段階を経て、退去強制令書の発付か在留特別許可かが決まる。
入国警備官による違反調査を経て、入国審査官が退去強制事由に該当するかを審査する。その認定に不服があれば口頭審理を請求でき、さらに不服があれば法務大臣に異議を申し出ることができる。異議に理由がないと裁決される場合であっても、在留を特別に許可すべき事情があると認められれば、在留特別許可が与えられる。
手続の間、収容されるか否かは事案によって異なる。令和5年改正入管法により、収容によらず社会内での生活を認める監理措置の制度が設けられている。
出国命令制度とはどのようなものか
結論として、要件を満たす者について、収容することなく、自ら出国することを命じる簡易な手続である。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 出頭 | 速やかに出国する意思をもって自ら入管に出頭したこと |
| 他の事由の不存在 | 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと |
| 前科 | 窃盗等の一定の罪により拘禁刑に処せられたことがないこと |
| 過去の退去歴 | 過去に退去強制または出国命令により出国したことがないこと |
| 出国の確実性 | 速やかに出国することが確実と見込まれること |
出国命令を受けた者は、収容されることなく、定められた期限までに自ら出国する。入管法24条の3および55条の2以下に定めがある。摘発された場合には利用できないため、自ら出頭したかどうかがこの制度の分かれ目となる。
在留特別許可が認められるのはどのような場合か
結論として、日本での家族関係や在留の経緯など、退去を求めることが相当でない事情があると認められた場合である。
入管法50条は在留特別許可について定めており、令和5年改正により、申請の手続が法定されるとともに、考慮すべき事情が法律上明示された。在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留の期間、法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などが考慮される。
日本人や永住者との間に子がいる場合、日本で生まれ育った子がいる場合、長期間にわたり平穏に生活してきた場合などは、有利な事情として主張しうる。与えられる在留資格は定住者であることが多い。
上陸拒否期間はどのくらいか
結論として、退去強制を受けた場合と出国命令により出国した場合とで大きく異なる。
| 出国の形 | 上陸拒否期間 |
|---|---|
| 退去強制を受けて出国した場合 | 5年 |
| 過去に退去強制を受けたことがある者が再び退去強制を受けた場合 | 10年 |
| 出国命令により出国した場合 | 1年 |
入管法5条1項9号に定めがある。将来また日本に来たいと考えるのであれば、この期間の差は決定的である。出頭のタイミングによって結論が変わることを、早い段階で理解しておく必要がある。
外国人の刑事事件で不法残留が問題になるのはどのような場面か
結論として、他の事件で逮捕された結果、不法残留の状態が明らかになる場面である。
職務質問や別件の捜査をきっかけに在留状況が判明し、刑事手続の終了後にそのまま入管へ引き渡されることが多い。この場合、刑事手続の中でどのような供述をし、どのような資料を残したかが、その後の在留特別許可の判断にも影響する。
家族と生活していること、子を養育していること、地域とのつながりがあることは、刑事の量刑事情であると同時に、入管手続における考慮事情でもある。刑事弁護と入管手続を一体のものとして準備する必要がある。在留カードを返納した後の手続についても、あらかじめ確認しておきたい。
よくあるご質問
Q1 オーバーステイの状態です。自分から出頭したほうがよいですか。
要件を満たせば出国命令の対象となり、収容されずに出国でき、上陸拒否期間も短くなります。他方、日本での在留を希望される場合は、出頭の前に見通しを立てる必要があります。まず弁護士にご相談ください。
Q2 日本人と結婚していれば在留できますか。
婚姻関係は在留特別許可の考慮事情の一つですが、それだけで結論が決まるものではありません。婚姻の実体、同居の状況、生計、素行などを資料で示す必要があります。
Q3 出国命令で帰国した場合、いつから再入国できますか。
上陸拒否期間は1年とされています。退去強制を受けた場合の5年と比べて大きな差がありますので、手続の選択は慎重に検討してください。
Q4 不法残留の間に働いていました。どうなりますか。
資格外活動として別に問題となり、在留特別許可の判断でも不利に働きます。雇用していた側についても、不法就労助長罪が問題となります。
Q5 手続の間、必ず収容されますか。
必ず収容されるわけではありません。収容によらず社会内での生活を認める監理措置の制度があり、仮放免が認められる場合もあります。家族の状況や住居の有無が判断材料となります。
おわりに
不法残留は、期限を一日過ぎた時点で始まり、その後の選択肢は時間とともに狭まっていく。出頭するのか、在留を求めるのかによって準備すべき資料はまったく異なる。状態に気付いた時点で、方針を決めないまま時間だけが過ぎることのないようにしたい。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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