取消訴訟とは|訴訟要件と出訴期間、入管の処分を争う方法の基本
2026/09/04
取消訴訟とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟をいう。行政事件訴訟法3条は、抗告訴訟の類型として処分の取消しの訴えと裁決の取消しの訴えを掲げており、行政訴訟の中心的な形式である。違法な処分を裁判所の判決によって効力の初めからなかったことにするための手続である。
この記事の要点
- 取消訴訟は、違法な処分の効力を裁判所の判決で失わせるための訴訟である。
- 処分性、原告適格、訴えの利益、出訴期間などの訴訟要件を満たす必要がある。
- 出訴期間は、処分があったことを知った日から6か月が原則である。
- 被告は行政庁ではなく、その行政庁が所属する国又は地方公共団体である。
- 訴えを提起しても処分の効力は止まらないため、執行停止の申立てを検討する。
取消訴訟とは何か
取消訴訟は、行政の処分が違法であることを理由に、その効力を失わせる判決を求める訴訟である。行政の処分には、たとえ違法であっても権限のある機関が取り消すまでは有効なものとして扱われるという性質があるとされ、これを覆すための正面からの手段が取消訴訟である。判決によって処分が取り消されると、その処分は初めからなかったものとして扱われ、行政庁は判決の趣旨に従って改めて処分をやり直す義務を負う。この拘束力によって、単に取り消して終わりではなく、その後の行政の対応まで規律される。
取消訴訟の訴訟要件は何か
本案の審理に入るためには、次の要件を満たす必要がある。いずれか一つでも欠けると、処分の内容の当否を判断してもらえないまま訴えが却下される。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 処分性 | 対象が行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為であること |
| 原告適格 | 取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者であること |
| 訴えの利益 | 取り消すことに現実の意味が残っていること |
| 被告適格 | 処分をした行政庁が所属する国又は公共団体を被告とすること |
| 出訴期間 | 知った日から6か月、処分の日から1年の期間内であること |
| 管轄 | 被告の所在地を管轄する裁判所などに提起すること |
いつまでに提起しなければならないか
行政事件訴訟法14条により、処分があったことを知った日から6か月以内が原則である。この期間を過ぎると、正当な理由がある場合を除き、訴えを提起することができなくなる。また、処分の日から1年を経過したときも同様である。審査請求をした場合には、これに対する裁決があったことを知った日から6か月以内となる。出訴期間は、処分の効力を早期に安定させるために設けられたものであるが、外国人の事案では、処分の内容や不服申立ての方法を理解する機会が乏しいまま期間が過ぎてしまうことがあり、通知を受け取った時点で速やかに相談することが重要である。
取消訴訟の手続はどう進むか
訴状の提出に始まり、答弁書、準備書面のやりとりを経て、判決に至る。行政庁側は、処分の理由と根拠を明らかにした答弁書を提出し、処分に至る経過を示す資料を提出する。裁判所は、必要があると認めるときは、処分の理由を明らかにする資料の提出を求める釈明処分をすることができ、また職権で証拠調べをすることもできる。争点が整理された後、必要に応じて当事者や関係者の尋問が行われる。第一審の判決までは、事案によるが1年から2年程度を要することが多い。
判決にはどのような種類があるか
訴訟要件を欠くときは却下、請求に理由がないときは棄却、処分が違法であるときは認容として処分が取り消される。例外的に、処分が違法であっても、これを取り消すことが公共の福祉に適合しないと認められる場合に、請求を棄却しつつ判決主文で処分の違法を宣言する事情判決という仕組みがある。認容判決が確定すると、処分の効力は初めに遡って失われ、その効力は第三者にも及ぶとされている。行政庁は同一の理由で同じ処分を繰り返すことができなくなる。
外国人の事件で取消訴訟はどう使われるか
退去強制令書の発付、在留期間更新の不許可、在留資格変更の不許可、在留資格の取消し、難民の不認定といった処分を争う場面で用いられる。これらの処分については、法務大臣等に広い裁量が認められるとするのが判例の立場であり、最高裁昭和53年10月4日の大法廷判決は、外国人の在留の許否は国の裁量に委ねられているという枠組みを示した。もっとも、裁量があるということは何をしてもよいということではなく、行政事件訴訟法30条は、裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合には処分を取り消すことができると定めている。実務では、考慮すべき事情、たとえば家族の状況、在留の経緯、生活の実態、本国の情勢などが適切に考慮されたかどうかという判断過程の審査に、主張の重点が置かれる。また、訴えの提起によって送還が止まるわけではないため、執行停止の申立てを同時に検討することが不可欠である。
よくあるご質問
Q1 取消訴訟はいつまでに提起しなければなりませんか。
処分があったことを知った日から6か月以内が原則です。処分の日から1年を経過したときも、正当な理由がある場合を除いて提起できなくなります。審査請求をした場合は、裁決があったことを知った日から6か月です。
Q2 誰を被告として訴えるのですか。
処分をした行政庁ではなく、その行政庁が所属する国又は地方公共団体が被告となります。入管の処分であれば国、都道府県警察に関する処分であれば当該都道府県が被告となるのが一般的です。訴状には、処分をした行政庁も記載します。
Q3 訴訟を起こせば処分は止まりますか。
止まりません。取消訴訟の提起によって処分の効力や執行は妨げられないのが原則ですので、止める必要がある場合は執行停止の申立てを併せて行います。
Q4 裁量があるといわれると、勝てないのですか。
裁量が認められる処分であっても、裁量権の範囲を超え、又はその濫用があった場合には取り消されます。考慮すべき事情を考慮せず、考慮すべきでない事情を考慮したという判断過程の誤りを具体的に示すことが中心の作業になります。
Q5 どのくらいの期間がかかりますか。
事案の複雑さによりますが、第一審の判決まで1年から2年程度を要することが多いです。争点の数、証人尋問の要否、鑑定の有無などによって変わります。
関連する用語として、処分性、原告適格、執行停止、審査請求もあわせてご確認ください。
おわりに
取消訴訟は、行政の判断を裁判所に見直させる正面からの手段であるが、期間の制限が厳しく、入口の要件も多い。処分の通知を受け取ったら、争うかどうかを決める前に、まず期間を確認していただきたい。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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