審査請求とは|行政不服審査法の手続と期間、取消訴訟との使い分け
2026/09/04
審査請求とは、行政庁の処分や不作為に不服がある者が、行政機関に対してその見直しを求める不服申立ての手続をいう。行政不服審査法が定める中心的な手続であり、裁判所に訴える取消訴訟と異なり、手数料がかからず、書面のやりとりを中心に進む点に特徴がある。
この記事の要点
- 審査請求は行政機関に対する不服申立てであり、裁判所に対する訴訟とは別の制度である。
- 審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内が原則である。
- 審理は、処分に関与していない審理員が担当し、第三者機関への諮問を経て裁決に至る。
- 取消訴訟との関係は原則として自由選択であり、法律が前置を定める場合が例外となる。
- 審査請求をしても処分の効力は止まらないため、必要なら執行停止を別に求める。
審査請求とは何か
審査請求は、行政の判断を行政の内部でもう一度見直させる制度である。違法な処分だけでなく、違法とまではいえないが不当な処分も対象となる点で、裁判所の審理よりも間口が広い。平成26年に行政不服審査法が全部改正され、審理の公正さと迅速さを高めるための仕組みが整えられた。審査請求をすべき相手方は、処分をした行政庁に上級行政庁がある場合には最上級行政庁、ない場合には処分をした行政庁自身であるのが原則である。処分の通知書には、審査請求ができるかどうか、いつまでに誰に対してすべきかが記載されている。
審査請求はいつまでにしなければならないか
行政不服審査法18条により、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内が原則である。これを過ぎると、正当な理由があると認められない限り、審査請求はできなくなる。また、処分があった日の翌日から1年を経過したときも同様である。取消訴訟の出訴期間とは日数が異なるため、混同しないよう注意を要する。
| 項目 | 審査請求 | 取消訴訟 |
|---|---|---|
| 相手方 | 行政庁 | 裁判所 |
| 期間 | 知った日の翌日から3か月、処分の日の翌日から1年 | 知った日から6か月、処分の日から1年 |
| 審査の範囲 | 違法性に加えて不当性も | 違法性のみ |
| 費用 | 手数料は不要 | 訴訟費用が必要 |
| 審理の方式 | 書面中心。口頭意見陳述の機会がある | 口頭弁論 |
審査請求の手続はどう進むか
審査請求書の提出から始まり、審理員による審理を経て、裁決で終わる。審査庁は、処分に関与していない職員のうちから審理員を指名し、審理員が両当事者の主張を整理する。処分庁は弁明書を提出し、審査請求人はこれに対する反論書を提出することができる。審査請求人は、口頭で意見を述べる機会を求めることができ、処分の理由となった資料の閲覧や写しの交付を求めることもできる。審理が終わると審理員意見書が作成され、審査庁は原則として行政不服審査会などの第三者機関に諮問し、その答申を踏まえて裁決をする。
どのくらいの期間がかかるか
事案によるが、裁決まで半年から1年程度を要することが多い。弁明書と反論書のやりとり、第三者機関への諮問と答申にそれぞれ時間がかかるためである。標準審理期間を定めて公表している行政庁もあるので、見通しを立てるにはその公表内容を確認するとよい。なお、審査請求をしている間も処分の効力は続くため、処分の執行によって重大な損害が生じるおそれがある場合には、執行停止を求める必要がある。
裁決に不服がある場合はどうするか
裁決を受けた後に、裁判所に取消訴訟を提起することができる。この場合の出訴期間は、裁決があったことを知った日から起算されるため、審査請求をしたことによって訴訟の機会が失われるわけではない。法律が再審査請求を認めている場合には、さらに上級の行政庁に対する再審査請求をすることもできる。取消訴訟では、原処分の違法を主張するのが原則であり、裁決に固有の瑕疵がある場合に限って裁決の取消しを求めることになる。
外国人の事件で審査請求が問題になるのはどのような場面か
難民の不認定に対する不服申立てが、実務上最も重要である。入管法61条の2の9は、難民の認定をしない処分などに対する審査請求について定めており、審査の過程では難民審査参与員の意見を聴くこととされている。これに対し、退去強制手続における異議の申出は、入管法が定める手続の一部として組み込まれており、行政不服審査法の審査請求とは別のものである。また、警察が行う処分に対する公安委員会への審査請求、入管の各種不許可処分に対する不服の申立てなど、窓口と根拠法令が事案ごとに異なるため、まずどの制度によるべきかを見極める必要がある。手続の選択を誤ると、期間だけが過ぎてしまうことになりかねない。
よくあるご質問
Q1 審査請求はいつまでにしなければなりませんか。
処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内が原則です。処分があった日の翌日から1年を過ぎると、正当な理由がある場合を除いてできなくなります。処分の通知書に期間の記載がありますので、まず確認してください。
Q2 審査請求と取消訴訟は、どちらを先にすべきですか。
原則としてどちらを選ぶこともでき、両方を行うこともできます。費用がかからず手続が簡易である点は審査請求の利点ですが、判断までに時間がかかることがあります。出訴期間との関係がありますので、選択は弁護士にご相談ください。
Q3 審査請求をすれば処分の効力は止まりますか。
止まりません。審査請求をしても処分の効力や執行は原則として続きます。止める必要がある場合には、執行停止の申立てを別に行うことになります。
Q4 審査請求に費用はかかりますか。
手数料は不要です。書面を作成して提出するだけで手続を始められますが、主張と資料の組み立てが結論を左右しますので、重要な処分については弁護士に相談されることをおすすめします。
Q5 留置場での処遇に対する審査の申請も審査請求ですか。
名称は似ていますが、別の制度です。被収容者の処遇に関する不服は刑事収容施設法が定める審査の申請、事実の申告、苦情の申出によることとされており、行政不服審査法の審査請求とは系統が異なります。
関連する用語として、取消訴訟、執行停止、苦情の申出もあわせてご確認ください。
おわりに
審査請求は費用がかからず利用しやすい反面、期間が短く、気づいたときには過ぎているという事態が起こりやすい。処分の通知書を受け取ったら、まず期間の記載を確認していただきたい。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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