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執行停止とは|行政事件訴訟法25条の要件と退去強制令書の送還停止

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執行停止とは|行政事件訴訟法25条の要件と退去強制令書の送還停止

執行停止とは|行政事件訴訟法25条の要件と退去強制令書の送還停止

2026/09/04

執行停止とは、処分の取消訴訟などが提起された場合に、判決が出るまでの間、裁判所が処分の効力、処分の執行又は手続の続行を一時的に止める制度をいう。行政事件訴訟法25条が定めるもので、訴えを提起しても処分の効力は止まらないという執行不停止の原則を補い、判決までに救済が失われることを防ぐ役割を担う。

この記事の要点

  • 取消訴訟を提起しただけでは処分の効力は止まらず、別に執行停止の申立てが必要である。
  • 重大な損害を避けるため緊急の必要があることが、認められるための中心的な要件である。
  • 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときなどは、認められない。
  • 退去強制令書については、送還部分と収容部分を分けて申し立てるのが実務である。
  • 決定に対しては即時抗告ができるが、送還が迫る場面では時間との勝負になる。

執行停止とは何か

執行停止は、判決が出る前に事態が取り返しのつかない状態になることを防ぐ仮の救済である。行政事件訴訟法は、処分の取消しの訴えの提起によって処分の効力、処分の執行及び手続の続行は妨げられないという原則を採っている。そのため、訴訟の途中で処分が執行されてしまえば、後に勝訴判決を得ても意味を失うことがある。この不合理を避けるために設けられているのが執行停止であり、本案の訴訟が係属していることを前提として、裁判所が申立てにより決定で行う。

執行停止の要件は何か

積極要件として本案の係属と重大な損害を避けるための緊急の必要があること、消極要件として公共の福祉への重大な影響がないことと本案に理由がないとみえないことが求められる。平成16年の改正により、従前の回復の困難な損害という要件が重大な損害に改められ、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされた。これによって、金銭で賠償できるかどうかだけで判断されるのではなくなった。

区分要件実務上の要点
積極要件本案訴訟が係属していること取消訴訟等と同時又はその後に申し立てる
積極要件重大な損害を避けるため緊急の必要があること損害の性質、程度、回復の困難さを具体的に疎明する
消極要件公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと行政側が主張する支障の程度を検討する
消極要件本案について理由がないとみえないこと本案の主張をあらかじめ相当程度示す必要がある
補充性効力の停止は執行又は続行の停止で目的を達せない場合に限るまず執行の停止を求めるのが原則である

執行停止の手続はどう進むか

本案の訴訟を提起した裁判所に対し、申立書と疎明資料を提出して申し立てる。疎明資料としては、陳述書、診断書、家族関係を示す資料、就労や就学の状況を示す資料などが用いられる。申立てを受けた裁判所は、相手方である国や地方公共団体に意見を求め、双方の主張が出そろった段階で決定を行う。口頭弁論を経る必要はないが、当事者の意見を聴かなければ決定をすることができないとされている。認容決定が出れば、その範囲で処分の効力等が停止し、判決が確定するまでの間、現状が維持される。

どのくらいの期間で決定が出るか

緊急性の程度によるが、送還が具体的に予定されている事案では数日で判断が示されることもある。通常の事案では、申立てから決定まで2週間から1か月程度を要することが多い。航空券が手配されているなど、送還の日が具体的に迫っている場合には、その事実を疎明して速やかな判断を求めることになる。決定に対しては即時抗告をすることができるが、抗告をしただけでは原決定の効力は当然には止まらないため、執行停止を求める側にとっては、最初の申立てで十分な資料を出し切ることが重要である。

執行停止が認められないとどうなるか

処分の執行が続くため、本案の判決を待たずに不利益が現実化する。退去強制令書の事案では送還が実施され、日本での生活は事実上失われる。認容されなかった場合には即時抗告によって上級審の判断を求めることになるが、執行の時期が迫っている場面では、抗告審の判断が出る前に執行されてしまうおそれがある。このため、申立ての時期をできる限り早めること、本案の主張を申立ての段階で相当程度示しておくことが、実務上決定的に重要となる。

退去強制令書について執行停止はどう使われるか

送還部分の停止と収容部分の停止を分けて申し立てるのが確立した実務である。退去強制令書は、本邦からの送還と、送還までの間の収容という二つの内容を含んでおり、裁判所はこれを区別して判断する。送還が実施されれば訴訟を維持することが著しく困難になり、家族との生活も断たれることから、送還部分については重大な損害と緊急の必要が認められやすい。これに対し、収容部分については、逃亡のおそれの有無などを踏まえて慎重に判断される傾向があり、収容からの解放を求める場合には、仮放免の許可申請を併行して行うことが多い。難民の認定を申請している事案、日本人の配偶者や子がいる事案、本国での迫害のおそれを主張する事案では、送還によって生じる損害の性質を具体的に示すことが求められる。

よくあるご質問

Q1 執行停止はどのくらいで結論が出ますか。

事案によりますが、送還が差し迫っている場合には数日で決定が出ることもあります。通常は、申立てから相手方の意見書の提出を経て、2週間から1か月程度で判断が示されることが多いです。緊急性の高さを具体的に示すことが重要です。

Q2 訴訟を起こせば送還は止まりますか。

止まりません。行政事件訴訟法は、訴えの提起によって処分の効力や執行は妨げられないという執行不停止の原則を採っています。送還を止めるには、取消訴訟の提起と併せて執行停止の申立てをする必要があります。

Q3 収容も止めてもらえますか。

送還部分と収容部分は分けて判断されるのが実務であり、収容の停止が認められる場面は限られます。収容の解除については、仮放免の許可申請と併行して検討することが多いです。

Q4 執行停止が認められなかったらどうなりますか。

決定に対しては即時抗告をして上級の裁判所の判断を求めることができます。もっとも、抗告をしても送還が自動的に止まるわけではありませんので、時間との勝負になります。

Q5 費用や担保は必要ですか。

民事保全のような担保の提供は、行政事件訴訟法上の執行停止では要求されていません。申立てに要する費用は、本案の訴訟費用とは別に必要となりますので、詳細は弁護士にご確認ください。

関連する用語として、取消訴訟訴えの利益審査請求もあわせてご確認ください。

おわりに

執行停止は、判決までの時間を確保するための手続であり、送還が迫る場面では、それ自体が事件の帰すうを決めてしまうことがある。処分の告知を受けたら、できる限り早く弁護士に相談していただきたい。

外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

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執筆者情報

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。

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