処分性とは|取消訴訟の対象となる行為の判断基準と近年の柔軟化
2026/09/04
処分性とは、ある行政の行為が、取消訴訟その他の抗告訴訟の対象となる行政庁の処分に当たる性質をいう。行政事件訴訟法3条は、抗告訴訟を行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服の訴訟と定めており、処分性が否定されると、その行為を取消訴訟で争うことはできない。
この記事の要点
- 処分性は、取消訴訟の入口を画する訴訟要件であり、これを欠くと訴えは却下される。
- 判例は、国民の権利義務を直接形成し又はその範囲を確定する行為かどうかを基準としてきた。
- 近年の最高裁は、実効的な救済の必要という観点から処分性を柔軟に認める方向にある。
- 処分性が否定されても、確認の訴えや国家賠償請求という別の道が残る。
- 入管の退去強制令書発付や不許可処分には処分性があり、取消訴訟の対象となる。
処分性とは何か
処分性は、行政の行為のうち、どれを取消訴訟で争えるかを画する概念である。行政は、法規の制定から補助金の交付、指導、契約、内部の通達まで、多様な活動をしている。そのすべてを取消訴訟の対象とすると訴訟が際限なく広がるため、権利義務に直接影響する行為に対象を絞る枠組みが採られてきた。最高裁は昭和39年10月29日の判決において、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと述べ、この定式が長く用いられている。
処分性はどのような要素で判断されるか
公権力性、直接性、法的効果、外部性、成熟性という要素に分けて検討するのが実務の作法である。ただし、これらを機械的に当てはめるのではなく、根拠となる法令の仕組み全体を読み解き、その段階で争わせなければ実効的な救済が得られないかどうかを見るのが近年の傾向である。
| 要素 | 内容 | 問題となる例 |
|---|---|---|
| 公権力性 | 優越的な地位に基づく一方的な行為か | 契約、補助金の交付 |
| 法的効果 | 権利義務を形成し又はその範囲を確定するか | 行政指導、勧告、通知 |
| 直接性 | 後続の行為を待たずに効果が生じるか | 計画の決定、基準の設定 |
| 外部性 | 行政組織の内部にとどまらないか | 通達、内部の承認 |
| 成熟性 | 紛争がその段階で成熟しているか | 将来の措置の予告 |
近年の判例は処分性をどのように広げてきたか
実効的な権利救済の必要を重視して、従来は否定されてきた類型に処分性を認める判断が続いている。最高裁は平成17年7月15日の判決で、医療法に基づく病院開設中止の勧告について、これに従わないと保険医療機関の指定を受けられない仕組みになっていることを重視して処分性を認めた。平成20年9月10日の大法廷判決は、土地区画整理事業の事業計画の決定について、従前の判例を変更して処分性を認め、計画段階での争訟を可能にした。平成21年11月26日の判決は、特定の保育所を廃止する条例の制定について処分性を認めている。形式が勧告や計画や条例であっても、当事者に生じる法的な影響と救済の必要から判断する姿勢が読み取れる。
処分性が否定されるとどうなるか
訴えは不適法として却下され、内容の審理に入ることなく終わる。その場合には、公法上の法律関係に関する確認の訴え、すなわち当事者訴訟によって地位や義務の不存在の確認を求める方法、違法な行為によって損害を受けたとして国家賠償法1条に基づく賠償を求める方法が残る。また、その行為を前提として後に行われる処分の段階で、前提となった行為の違法を主張することも考えられる。訴訟形式の選択を誤ると出訴期間を徒過するおそれがあるため、処分性に争いがある事案では、取消訴訟と当事者訴訟を併合して提起することもある。
入管の処分について処分性はどう考えられているか
退去強制令書の発付、在留期間更新の不許可、在留資格変更の不許可、在留資格の取消し、難民の不認定は、いずれも処分に当たる。これらは外国人の在留の可否という法的地位を直接左右する行為であり、処分性が問題になることは通常ない。これに対し、収容の継続、仮放免の運用、庁内の通達や運用指針といった行為については、処分性の有無や、どの行為を捉えて争うかが実際の問題となる。争う対象の選び方を誤ると入口で却下されるため、どの時点のどの行為を取り上げるかは、はじめに慎重に検討すべき事柄である。
よくあるご質問
Q1 行政指導や勧告は取消訴訟で争えますか。
原則として処分性が認められませんが、従わない場合に法律上の不利益が生じる仕組みになっている場合には、処分性が認められた例があります。最高裁は、病院開設中止の勧告について、これに従わなければ保険医療機関の指定を受けられなくなる仕組みを重視して処分性を認めました。個別の仕組みの分析が必要です。
Q2 処分性がないと言われたら、もう争えないのですか。
取消訴訟の形では争えませんが、公法上の当事者訴訟としての確認の訴えや、国家賠償請求という方法が残ります。どの訴訟形式を選ぶかは、求めたい結果と時間的な余裕から決めることになります。
Q3 退去強制令書の発付は処分ですか。
退去強制令書の発付は処分に当たり、取消訴訟の対象となります。送還を止めるためには、取消訴訟の提起と併せて執行停止を申し立てる必要があります。
Q4 処分かどうかは、行政庁の説明で分かりますか。
処分に当たる場合には、通常、不服申立てや出訴期間についての教示が書面に記載されています。ただし教示がないからといって処分でないと決まるわけではありませんので、書面の文言だけで判断せず、弁護士にご相談ください。
関連する用語として、取消訴訟、原告適格、訴えの利益もあわせてご確認ください。
おわりに
処分性は、内容の当否に入る前に訴えを終わらせてしまう入口の要件である。争いたい行為が処分に当たるかどうかは、書面の題名ではなく、根拠法令の仕組みから判断される。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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