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苦情の申出とは|留置場・拘置所の処遇に不服があるときの三つの手続

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苦情の申出とは|留置場・拘置所の処遇に不服があるときの三つの手続

苦情の申出とは|留置場・拘置所の処遇に不服があるときの三つの手続

2026/09/04

苦情の申出とは、刑事施設や留置施設に収容されている者が、自分が受けた処遇について、施設の長や監督機関に不服を述べ、その是正を求める制度をいう。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(刑事収容施設法)は、被収容者の不服申立ての手段として、審査の申請、事実の申告及び苦情の申出の三つを定めている。このうち苦情の申出は、対象が処遇全般に及び、期間の制限もないため、最も広く用いられている。

この記事の要点

  • 不服申立ては審査の申請、事実の申告、苦情の申出の三つの類型に分かれ、対象も宛先も異なる。
  • 審査の申請は懲罰や面会の不許可といった個別の措置を対象とし、期間の制限がある。
  • 事実の申告は、職員による違法な有形力の行使などの事実そのものを申告する制度である。
  • 苦情の申出は処遇全般を対象とし、期間の制限がなく、口頭でも書面でもすることができる。
  • 不服申立てをしたことを理由に不利益な取扱いをしてはならないと法律上定められている。

苦情の申出とは何か

苦情の申出は、被収容者が自分の処遇について広く不服を述べることのできる制度である。刑事収容施設法は、被収容者を単なる管理の客体としてではなく、権利義務の主体として扱う立場から、施設内での取扱いに対する不服の受皿を法律上の制度として整備した。対象は、食事、入浴、運動、医療、寝具、書籍の閲覧、信書の発受、職員の言動など、処遇に関する事柄であれば広く含まれる。個別の措置に対する審査の申請と異なり、法律が定める特定の措置に限られない点に特徴がある。

苦情の申出、審査の申請、事実の申告は何が違うか

三つの制度は、対象となる事柄と申立ての相手方によって使い分ける。懲罰や面会の不許可のように、法律上の措置として個別に告知されたものを争うのであれば審査の申請、職員から暴行を受けたなどの事実を訴えるのであれば事実の申告、それ以外の日常的な処遇の不満であれば苦情の申出という整理になる。一つの出来事について複数の制度を使うこともできる。

類型対象期間の制限主な宛先
審査の申請懲罰、面会や信書の不許可など法定の措置告知を受けた日の翌日から起算して30日以内留置施設は都道府県公安委員会、刑事施設は矯正管区長
事実の申告職員による違法な有形力の行使など事実行為行為があった日の翌日から起算して30日以内留置施設は都道府県公安委員会、刑事施設は法務大臣又は監査官
苦情の申出自己が受けた処遇全般制限なし留置施設は公安委員会、警察本部長、留置業務管理者、刑事施設は法務大臣、監査官、施設の長

苦情の申出はどこに対して行うのか

宛先は、収容されている施設が警察署の留置施設か、拘置所などの刑事施設かによって異なる。警察署に留置されている段階であれば、都道府県公安委員会、警察本部長、留置業務管理者のいずれに対しても申し出ることができる。起訴後に拘置所へ移された場合は、法務大臣、実地監査を行う監査官、刑事施設の長が相手方となる。身近な施設の長に申し出て改善されないときに、上級の監督機関へ申し出るという順序で使うことが多いが、最初から上級機関に申し出ることも妨げられない。

苦情の申出はどのように行うのか

書面によることが原則であり、監査官などに対しては口頭ですることもできる。用紙は施設に備え置かれており、求めれば交付される。記載すべきは、いつ、どこで、誰が、どのような取扱いをしたのか、それによってどのような支障が生じたのか、どのような是正を求めるのか、という点である。抽象的に不満を述べるだけでは調査の対象が定まらないため、日時と担当職員を特定して具体的に書くことが重要である。書面は封をしたまま提出することができ、職員がその内容を検査することは許されない。

苦情の申出をするとどうなるか

申出を受けた機関は、その内容を誠実に処理し、結果を申出人に通知しなければならないとされている。調査の方法は、関係する職員からの聴取、記録の確認、必要に応じて申出人からの再度の聴取などである。処理までの期間について法律上の定めはないが、数週間から数か月を要することが多い。苦情の申出は、審査の申請と異なり、措置そのものを取り消す効力を持たない点に注意を要する。懲罰の取消しを求めるのであれば審査の申請によらなければならない。

苦情の申出をしても改善されない場合はどうするか

より上級の機関への申出、弁護人からの申入れ、国家賠償請求という順に手段が広がる。留置業務管理者に申し出て変わらなければ警察本部長や公安委員会へ、それでも変わらなければ弁護人を通じて抗議書を提出するという運び方が実際的である。職員の行為が違法と評価される程度に達している場合には、国家賠償法1条に基づく損害賠償請求によって事後的に責任を追及する余地がある。その場合、施設内での申出とそれに対する回答の経過が、そのまま証拠となる。

外国人の事件で苦情の申出が問題になるのはどのような場面か

言語の壁によって、不服があっても申出そのものに到達できない場面が最も多い。日本語の読み書きができなければ、用紙の交付を求めることも、記載することも難しい。食事の内容が宗教上の戒律に反する、医療の訴えが通訳を介さないため正確に伝わらない、母国の家族への信書が翻訳の都合で滞る、といった訴えは、日本人の被収容者には生じにくい類型である。弁護人が接見で事情を聴き取り、必要な書面を整えて差し入れる形で支援することになる。

よくあるご質問

Q1 苦情の申出をすると、留置場で不利益な扱いを受けませんか。

法律上、不服申立てをしたことを理由に不利益な取扱いをしてはならないと定められています。申出の書面は封をしたまま提出でき、職員が内容を検査することもできません。それでも扱いが変わったと感じるときは、その事実自体を弁護人に伝え、記録に残しておくことが大切です。

Q2 苦情の申出にお金はかかりますか。

費用はかかりません。用紙と筆記具は施設が用意しますので、申し出れば交付されます。書き方が分からないときは、接見に来た弁護人に相談してください。

Q3 中国語で書いてもよいですか。

外国語で作成した書面が直ちに無効になるわけではありませんが、翻訳に時間がかかり、処理が遅れることがあります。実務上は、弁護人が接見で内容を聴き取り、日本語の書面を整えて差し入れる方法が確実です。

Q4 弁護人が本人に代わって苦情の申出をすることはできますか。

苦情の申出をする権利は被収容者本人のものですので、弁護人が代理して申し出ることは予定されていません。もっとも、弁護人が留置業務管理者や検察官に対して直接抗議書や申入書を出す方法は別にありますので、両方を併用することが多いです。

Q5 苦情の申出をしても改善されないときはどうすればよいですか。

同じ事柄について、より上級の機関に対して重ねて苦情の申出をすることができます。違法な処遇によって損害を受けた場合には、国家賠償法1条に基づく損害賠償請求を検討することになります。いずれにしても、日時と職員名を含む具体的な記録が決め手になります。

関連する用語として、一般面会領置被疑者ノートもあわせてご確認ください。

おわりに

身体を拘束されている間は、処遇の当否を自分で外部に伝えることができない。苦情の申出は、その閉じた空間に外からの目を入れるための数少ない手段であり、記録として残ることに意味がある。

外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

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執筆者情報

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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