出訴期間とは|行訴法14条の6か月と1年、正当な理由と教示の関係
2026/09/04
出訴期間とは、取消訴訟を提起することができる期間をいう。行政事件訴訟法第14条が定めており、処分又は裁決があったことを知った日から6か月、処分又は裁決の日から1年が原則である。この期間を過ぎると、正当な理由がある場合を除き、取消訴訟を提起することができなくなる。
この記事の要点
- 出訴期間は、処分があったことを知った日から6か月という主観的な期間が基本である。
- 知らなかった場合でも、処分の日から1年を過ぎると原則として提起できない。
- 正当な理由があると認められるときは、期間を過ぎても提起することができる。
- 審査請求をした場合には、裁決を基準として期間が計算される。
- 無効等確認訴訟や国家賠償請求には、この期間の制限が及ばない。
出訴期間とは何か
出訴期間は、行政処分を争うことができる時間的な限界を画する制度である。行政上の法律関係を早期に安定させるという要請から設けられているが、当事者の側から見れば、期間を過ぎれば処分の違法を主張して取消しを求める道が閉ざされるという厳しい制約でもある。行政事件訴訟法第14条は、処分又は裁決があったことを知った日から6か月という主観的期間と、処分又は裁決の日から1年という客観的期間の二つを定めている。いずれか早い方が到来した時点で、取消訴訟を提起することができなくなるのが原則である。
出訴期間はどのように計算するか
処分があったことを知った日から起算し、初日は算入しないのが原則である。知った日とは、処分がされたことを現実に知った日をいい、通知書が本人に到達した日がこれに当たることが多い。処分の内容の詳細まで理解している必要はないと解されている。客観的期間は、処分がされた日を基準とするため、本人が処分を知らないまま進行する。次の表のとおり整理できる。
| 区分 | 起算点 | 期間 | 例外 |
|---|---|---|---|
| 主観的期間 | 処分又は裁決があったことを知った日 | 6か月 | 正当な理由があるとき |
| 客観的期間 | 処分又は裁決の日 | 1年 | 正当な理由があるとき |
| 審査請求を経た場合 | 裁決があったことを知った日 | 6か月 | 裁決の日から1年 |
正当な理由とは何か
期間の経過について当事者を責めることが酷であるといえる事情をいう。行政庁が出訴期間について教示をしなかった場合や、誤った教示をした場合、天災その他本人の責めに帰することができない事由により提訴が妨げられた場合などが考慮される。もっとも、正当な理由が認められるのは例外的な場面であり、単に法律を知らなかった、多忙であったといった事情では足りないと解されている。期間の経過後に提訴せざるを得ない事案では、期間内に提訴できなかった経過を客観的な資料で説明する準備が必要となる。
出訴期間の制限が及ばない訴えはあるか
ある。処分の無効を前提とする無効等確認訴訟には出訴期間の制限がなく、重大かつ明白な瑕疵があるといえる場合には、期間の経過後でも争う余地が残る。また、国家賠償請求は民事訴訟であり、行政事件訴訟法の出訴期間ではなく、民法の不法行為に関する期間制限に服する。したがって、取消訴訟の期間を過ぎた事案でも、金銭的な救済を求める道が直ちに閉ざされるわけではない。もっとも、無効の主張が認められる場面は限られるため、原則どおり期間内に取消訴訟を提起することが基本である。
審査請求との関係はどうなるか
審査請求をした場合には、裁決を基準に出訴期間が計算される。行政不服審査法第18条は審査請求の期間を定めており、処分を争うにはこちらの期間も併せて意識しなければならない。法律に審査請求を経なければ取消訴訟を提起できない旨の定めがある分野では、審査請求の期間を徒過すると、取消訴訟にも影響が及ぶ。処分の通知を受け取ったら、審査請求と取消訴訟のどちらを選ぶかを決める前に、それぞれの期間を確認しておくことが安全である。
出訴期間と義務付け訴訟・差止訴訟の関係はどうか
義務付け訴訟と差止訴訟そのものには、行政事件訴訟法上の出訴期間の定めはない。ただし、申請に対する拒否処分を受けた場合の義務付け訴訟は、拒否処分の取消訴訟と併合して提起しなければならないため、結果として取消訴訟の出訴期間内に提起する必要が生ずる。差止訴訟は処分の前に提起するものであるから、期間の問題は生じにくいが、処分がされてしまえば訴えの利益を失うという時間的な制約を受ける。
関連する用語として、義務付け訴訟、差止訴訟、国家賠償請求もあわせてご覧いただきたい。
外国人の事件で出訴期間が問題になるのはどのような場面か
在留資格に関する不許可処分、在留資格の取消し、退去強制令書の発付、難民の不認定などを争う場面である。処分の通知が日本語のみで行われ、内容を十分に理解しないまま時間が経過してしまう例が少なくない。収容されている場合には、外部との連絡が制限されるため、弁護士に相談するまでに時間がかかることもある。それでも出訴期間は進行するため、通知書を受け取った日付を記録し、速やかに内容を確認することが重要である。刑事事件で身柄を拘束されている間に入管の処分がされる類型では、刑事弁護人と入管手続の代理人が情報を共有し、期間の管理を一体として行う必要がある。
よくあるご質問
Q1 出訴期間はいつから数え始めますか。
処分があったことを知った日から数えます。処分の内容を現実に知った日が基準であり、通知書を受け取った日がこれに当たるのが通常です。初日は算入しないのが原則です。
Q2 期間を過ぎてしまったらもう争えませんか。
取消訴訟は原則として提起できなくなります。もっとも、正当な理由があると認められる場合には例外があり、また処分の無効を主張する訴訟や国家賠償請求には出訴期間の制限がありません。
Q3 審査請求をした場合はどうなりますか。
審査請求を経た場合には、裁決があったことを知った日を基準として期間が進みます。審査請求の期間自体にも制限があるため、処分の通知を受けた時点で両方の期間を確認する必要があります。
Q4 処分の通知に期間の記載がなかった場合はどうですか。
行政庁は処分をする際に出訴期間などを教示すべきものとされています。教示がなかったこと、又は誤った教示がされたことは、正当な理由の有無を判断する際に考慮される事情となります。
Q5 退去強制令書を受け取りました。急ぐべきですか。
急ぐべきです。出訴期間の問題に加え、送還が現実に迫るため、執行停止の申立てや差止めの検討を同時に進める必要があります。日数の余裕がない前提で動くことをお勧めします。
おわりに
出訴期間は、内容の当否を問わず訴えを封ずる制度であるため、期間を過ぎたという一事で救済の道が狭まる。処分の通知を受け取った日を控え、争うかどうかを迷っている段階でも早めにご相談いただきたい。日数の管理そのものが弁護活動の一部である。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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