信書の発受とは|手紙の検査と制限、弁護人あて信書の特別な取扱い方
2026/09/04
信書の発受とは、留置施設や刑事施設に収容されている者が、外部の者との間で手紙をやり取りすることをいう。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律により、原則として認められる一方、施設による検査と、一定の場合の差止めや削除が定められている。
この記事の要点
- 被収容者は原則として信書を発受できるが、施設による検査を受ける。
- 弁護人との間の信書は、内容の検査を行わない特別の取扱いがされている。
- 罪証隠滅のおそれがある場合などには、差止めや削除がされることがある。
- 外国語の信書については、翻訳文の提出と費用の負担を求められることがある。
信書の発受とは何か
信書の発受とは、収容されている人が外部の人と手紙をやり取りすることをいう。面会には時間や回数の制限があり、接見等禁止が付けば家族との面会もできなくなる。そうした中で、手紙は外部との数少ない接点になる。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律は、被収容者が信書を発受することを原則として認めている。もっとも、施設の規律及び秩序の維持や、罪証隠滅の防止という観点から、検査と制限の仕組みが併せて定められている。
信書はどのように検査されるか
発信するものも受信するものも、原則として施設の検査を受ける。封をしたまま渡すことはできず、内容が確認されることを前提に考える必要がある。手紙に書いた内容が、事件に関する証拠として扱われることもありうる。
したがって、事件の見通しや供述の方針といった事柄を手紙に書くことは避けるべきである。そうした事柄は、接見交通権に基づく弁護人との接見の場で話すのが原則である。
弁護人との間の信書はどのように扱われるか
弁護人との間の信書は、他の信書とは異なる取扱いを受ける。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律は、未決拘禁者が弁護人等との間で発受する信書について、その信書に該当することを確認するために必要な限度で検査を行うにとどめ、内容の検査は行わないものと定めている。
これは、弁護人との連絡の秘密を守るための仕組みである。封筒に弁護人からの信書であることが分かる表示をするのは、この取扱いを受けるためである。接見等禁止の決定が付されている場合であっても、弁護人との信書のやり取りは禁じられない。
信書の発受が制限されるのはどのような場合か
罪証隠滅の結果を生ずるおそれがある場合、暗号などが用いられて内容を確認できない場合、施設の規律及び秩序を害するおそれがある場合などである。これらに当たるときは、発受を差し止め、又は該当する部分を削除することができるとされている。差し止められた場合には、その旨が本人に告げられる。
| 相手方 | 検査の程度 | 接見等禁止の影響 |
|---|---|---|
| 弁護人 | 信書に該当することの確認にとどまる | 影響を受けない |
| 家族・知人 | 内容の検査を受ける | 禁じられることがある |
| 領事機関 | 条約上、遅滞なく送付される | 個別に確認を要する |
| 裁判所・行政機関 | 内容の検査を受ける | 個別に確認を要する |
外国語の信書はどう扱われるか
翻訳文の提出を求められることがある。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律は、外国語で記載された信書について、翻訳文を添えるよう求めることができ、その費用を本人に負担させることができる旨を定めている。
実際には、翻訳の手配と検査に日数を要するため、日本語の手紙よりも相手に届くまでの時間が長くなる傾向がある。国外に住むご家族との往復であれば、さらに日数がかかる。急ぎの連絡は、弁護人の接見を通じて伝えるほうが確実である。
発信や受信を拒まれたときはどうすればよいか
まず理由を確認し、記録に残すことである。差止めや削除がされた場合には本人に告げられるから、いつ、どの手紙について、どのような理由で制限されたのかを書き留めておく。
そのうえで、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づく苦情の申出や審査の申請を検討する。制限が違法であったと考えられる場合には、国家賠償法1条に基づく請求を検討することもある。いずれにしても、まず弁護人に相談していただきたい。
外国人の事件で信書が問題になるのはどのような場面か
家族が国外にいる場合に、連絡の遅れが積み重なることが問題になる。翻訳文の提出と検査に日数を要し、国際郵便の時間が加わるため、往復に相当の期間を要する。その間に勾留の期間が過ぎ、処分が決まってしまうこともある。
また、発信できる通数には限りがあるため、誰に何を伝えるかの優先順位をあらかじめ考えておく必要がある。領事機関にあてた通信については、領事関係に関するウィーン条約により、遅滞なく送付されることとされている。ご家族への連絡は、弁護人を通じて行うほうが早いことが多い。
よくあるご質問
Q1 手紙は誰にでも出せますか。
原則として出すことができますが、罪証隠滅につながるおそれがある場合などには差し止められることがあります。接見等禁止の決定が付されている場合には、弁護人以外との手紙のやり取りが禁じられます。
Q2 手紙の内容は読まれますか。
施設による検査があり、内容が確認されるのが原則です。ただし、弁護人との間で発受する信書については、その信書に当たることを確認するために必要な限度で検査するにとどまり、内容の検査は行わない取扱いとされています。
Q3 中国語で手紙を書いてもよいですか。
書くことはできますが、翻訳文の提出を求められることがあり、その費用を本人が負担することになる場合があります。検査に時間がかかるため、相手に届くまでの日数も長くなる傾向があります。
Q4 手紙は何通まで出せますか。
発信できる通数は施設が定めており、無制限ではありません。便箋、封筒、切手は領置金から購入するのが通常です。限られた通数をどう使うかを、あらかじめ考えておくとよいと思われます。
Q5 手紙の発信を止められた場合はどうすればよいですか。
差し止められた場合には本人に告知されますので、その理由を確認してください。刑事収容施設法に基づく苦情の申出や審査の申請といった手段があります。まず弁護人にご相談ください。
おわりに
手紙は、面会よりも自由に見えて、実際には検査と通数の制限の中にある。外国語であればさらに日数がかかる。届くまでに時間がかかることを前提に、急ぎの連絡は弁護人を通す。その使い分けを最初に決めておきたい。
外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
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