勾留とは|刑訴法60条の要件・起訴前10日と延長・準抗告による不服申立てを解説
2026/09/04
勾留とは、罪を犯した疑いのある者について、逃亡や証拠隠滅を防ぐ必要があるときに、裁判官の発する勾留状に基づいて刑事施設に継続して身体を拘束する処分をいう。逮捕に引き続いて行われる処分であり、起訴前の勾留は原則として10日間、延長されたときは最大で20日間に及ぶ。逮捕とは別個の処分であるから、逮捕が適法であったことは勾留を当然に正当化するものではない。
この記事の要点
- 勾留は逮捕とは別個の処分であり、裁判官が発する勾留状によって身体の拘束が続けられる。
- 刑訴法60条は、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかを要件とする。
- 起訴前の勾留は原則10日間で、やむを得ない事由があるときは10日を限度に延長される。
- 外国人の事件では、住居や身元引受人の有無が逃亡のおそれの判断に直結しやすい。
- 勾留の裁判に不服があるときは、準抗告によって取消しを求めることができる。
勾留とは何か
勾留とは、裁判官または裁判所の判断により、被疑者または被告人の身体拘束を継続する処分である。逮捕が最長72時間であるのに対し、勾留は起訴前で最大20日間、起訴後は原則2か月とされ、更新もされうる。
勾留は、起訴前の被疑者勾留と、起訴後の被告人勾留とに分けられる。前者は捜査のための身体拘束であり、後者は公判への出頭と刑の執行の確保を主眼とする。根拠条文も期間も異なるため、いま自分がどちらの段階にあるのかを把握することが、手段を選ぶ出発点となる。
勾留は罰を科す処分ではなく、有罪と判断されたことも意味しない。手続を進めるための一時的な拘束であり、必要がなくなれば直ちに解かれるべきものである。
勾留の要件は何か
勾留が認められるには、犯罪の嫌疑があることに加えて、刑訴法60条が定める3つの事由のいずれかと、拘束を続ける必要性とが認められなければならない。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 犯罪の嫌疑 | 罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること |
| 住居不定 | 定まった住居を有しないこと |
| 罪証隠滅のおそれ | 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること |
| 逃亡のおそれ | 逃亡し、または逃亡すると疑うに足りる相当な理由 |
| 勾留の必要性 | 失われる利益と捜査上の必要とを比較して、なお拘束が相当であること |
これら3つの事由は、いずれか一つがあれば足りる。もっとも、罪証隠滅のおそれは抽象的な可能性では足りず、隠滅の対象、態様、実効性を具体的に検討して判断されるべきものと解されている。弁護人は、この具体性の欠如を突いて争う。
勾留はどのような手続で決まるか
勾留は、検察官の請求を受けた裁判官が、被疑者本人に会って質問をしたうえで判断する。逮捕された者は48時間以内に検察官に送致され(刑訴法203条)、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕の時から72時間以内に勾留を請求しなければならない(同法205条)。
勾留請求を受けた裁判官は、勾留質問という手続で被疑者に被疑事実を告げ、これに対する陳述を聴く。要件を満たすと判断すれば勾留状が発付され、満たさないと判断すれば請求は却下されて釈放される。
この72時間の間に、弁護人が勾留すべきでない旨の意見書を提出し、住居や身元引受人に関する資料を添えられるかどうかが、結論を大きく左右する。
勾留はどのくらいの期間続くか
起訴前の勾留は、勾留請求をした日から原則として10日間である。やむを得ない事由があると認められるときは、通じて10日を超えない範囲で延長される(同法208条)。したがって、起訴前の身体拘束は逮捕の72時間を含めて最長で23日間となる。
起訴されると被告人としての勾留に切り替わり、期間は公訴の提起があった日から原則2か月、特に継続の必要があるときは1か月ごとに更新される。起訴後は保釈の請求ができるようになる。
詳しくは勾留延長の解説も併せてご覧ください。
勾留に不服がある場合はどうすればよいか
勾留の裁判に対しては、準抗告を申し立てて取消しまたは変更を求めることができる。準抗告は、勾留状を発付した裁判官が所属する裁判所に対して行い、合議体が改めて要件の有無を審査する。
このほか、勾留の理由または必要がなくなったときは勾留取消しの請求ができ、勾留の理由を公開の法廷で明らかにさせる勾留理由開示の請求もできる。起訴後であれば保釈の請求が加わる。
勾留と逮捕は何が違うか
逮捕と勾留は、いずれも身体を拘束する処分であるが、期間、判断の主体、不服申立ての可否において異なる。
| 項目 | 逮捕 | 勾留 |
|---|---|---|
| 目的 | 身柄の確保と初動の捜査 | 捜査の遂行または公判への出頭の確保 |
| 期間 | 最長72時間 | 起訴前は原則10日、延長で最大20日 |
| 判断する者 | 令状は裁判官、執行は捜査機関 | 裁判官が勾留質問を経る |
| 不服申立て | 独立の不服申立ての手段がない | 準抗告により争える |
| 家族との面会 | 実際上は困難なことが多い | 接見等禁止が付かなければ可能 |
外国人の事件で勾留が問題になるのはどのような場面か
外国人の事件では、勾留が付きやすく、また長引きやすい傾向がある。逃亡のおそれの判断において、国外への出国可能性、住居の賃貸借契約の名義、勤務先の継続性、家族の所在といった事情が重く扱われるためである。
実務上とりわけ問題となるのは次の点である。第1に、通訳を要することで取調べに時間がかかり、勾留延長の理由とされやすいこと。第2に、勾留が長期化する間に在留期間が満了し、釈放時に不法残留の状態に陥ること。第3に、勤務先を失えば就労資格の該当性そのものが失われ、後の在留期間更新に直結することである。
これらは刑事手続の内部だけを見ていては対処できない。勾留の段階から、釈放後の在留資格をどう維持するかを併せて設計する必要がある。
よくあるご質問
Q1 勾留は何日で終わりますか。
起訴前の勾留は原則として10日間です。やむを得ない事由があると裁判官が認めた場合には、さらに10日を限度として延長されます。逮捕からの72時間を含めると、最長で23日間となります。
Q2 勾留されている間に家族と会えますか。
接見等禁止の決定が付いていなければ、面会は可能です。ただし時間や人数に制限があり、職員の立会いのもとで行われます。接見等禁止が付いている場合は、弁護人以外との面会は原則としてできず、一部解除の申立てを検討することになります。
Q3 勾留されると必ず起訴されますか。
そのようなことはありません。勾留は捜査のための拘束であり、期間の満了までに検察官が不起訴と判断すれば釈放されます。示談や被害弁償、身元引受体制の整備を勾留中に進めることには十分な意味があります。
Q4 勾留を争うことはできますか。
できます。勾留の裁判に対しては準抗告を申し立てることができ、裁判所の合議体が改めて要件を審査します。事情が変わった場合には勾留取消しの請求という方法もあります。
Q5 勾留中に在留期間が切れてしまいそうです。
身体を拘束されていても在留期間の進行は止まりません。放置すれば釈放時に不法残留の状態となり、退去強制手続に移行するおそれがあります。早い段階でご相談ください。
おわりに
勾留は、それ自体が有罪の判断ではないにもかかわらず、勤務先や住居、そして在留資格まで一度に失わせます。外国人の方の場合、事情を説明する機会が乏しいまま、住居が不安定であるという一事をもって拘束が続くことも少なくありません。争うべき点があるならば、初期段階で動くほど選択肢は広く残ります。
外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
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