供述調書とは|作成される過程と訂正の申立て・署名押印を拒む場面
2026/09/04
供述調書とは、捜査機関が被疑者や参考人の供述を録取して作成する書面をいう。取調べで述べた内容を捜査官がまとめ、読み聞かせたうえで本人の署名押印を得るという方法で作られる。公判において証拠として用いられることがあるため、その作成過程が重要な意味を持つ。
この記事の要点
- 供述調書は、本人が述べた言葉をそのまま記録したものではなく、捜査官がまとめた文章である。
- 読み聞かせを受けた際に訂正を申し立てることができ、申立てがあれば記載しなければならない。
- 署名押印を拒むことができ、拒んだ場合の効果は署名した場合と大きく異なる。
- 通訳を介する事件では、供述から調書までの間に二重のずれが生じ得る。
- いったん署名した調書の記載を後から覆すことは容易ではない。
供述調書とは何か
供述調書とは、取調べにおける供述を録取した書面である。刑事訴訟法は、被疑者の供述を調書に録取することができるとしたうえで、その調書を閲覧させ又は読み聞かせて誤りがないかを問い、増減変更の申立てがあったときはその供述を調書に記載しなければならないと定めている。
重要なのは、調書が逐語の記録ではないという点である。実務では、捜査官が聴取した内容を整理し、本人が一人称で語る文章の形にまとめる方法が採られている。読みやすい文章である一方、本人が実際に用いた言葉や、話した順序、ためらいの様子は残らない。
供述調書はどのように作成されるか
結論として、供述から書面に至るまでにいくつもの段階があり、各段階でずれが生じ得る。通訳を介する場合はその段階が増える。
| 段階 | 内容 | 生じ得るずれ |
|---|---|---|
| 供述 | 本人が母語で述べる | 質問の意味を取り違える |
| 通訳 | 通訳人が日本語に訳す | 語彙の対応がない、要約される |
| 録取 | 捜査官が日本語の文章にまとめる | 順序の入替え、表現の整理 |
| 読み聞かせ | 通訳人が母語に訳して読み上げる | 訳し戻しによる差異 |
| 署名押印 | 本人が署名し指印する | 内容を確認しないまま署名する |
供述調書に署名しないとどうなるか
結論として、署名押印を拒むことができ、拒んだ場合には、その書面が本人の供述として用いられる範囲は限られる。刑事訴訟法は、誤りがないことを申し立てたときに署名押印を求めることができるとしたうえで、拒絶した場合はこの限りでないと定めている。
署名を求められた場面で拒みにくいと感じる人は多い。しかし、内容に納得できないまま署名すれば、その記載は本人が認めたものとして扱われる。訂正を求め、それが容れられないときは署名しないという対応を、あらかじめ決めておくことが必要である。
供述調書は裁判でどのように扱われるか
供述調書は、原則として公判廷での証言に劣後する。もっとも、被告人に不利益な事実の承認を内容とする調書については、任意にされたものでない疑いがある場合を除き、証拠とすることができるとされている。
そのため、公判では、調書が任意にされたものか、記載が信用できるかが争点になる。長時間の取調べ、休憩の有無、体調、通訳人の交替といった事情が、この判断に影響する。取調べの経過を日々記録しておくことが、後の争いを支える。
供述調書と黙秘権はどう関係するか
供述するかどうかを決めるのは本人であり、供述を拒めば、その内容が調書に残ることはない。もっとも、供述を拒んでいる経過自体が記録されることはある。
実務上は、全部を黙秘するか、一部について供述するかを弁護人と相談して決め、供述する場合でも読み聞かせの際に必ず訂正を求めるという方針を立てる。方針を決めずに取調べに臨むと、断片的な発言が積み重なり、全体として不正確な内容が残ることになる。
外国人の事件で供述調書が問題になるのはどのような場面か
最も問題になるのは、通訳を介することによる二重のずれである。本人の言葉が日本語に訳される段階と、まとめられた日本語が母語に訳し戻される段階の双方で、内容が変わり得る。
特に、法律上の概念に対応する語が母語にない場合、通訳人が説明的に訳すことで、本人が述べた事実の範囲が広がったり狭まったりすることがある。誰が通訳したのか、通訳人が途中で交替したのか、聞き返しがあったのかを記憶しておくことが、後の検証を可能にする。司法通訳の規律については別の記事で整理している。
よくあるご質問
Q1 供述調書に署名しなければなりませんか。
署名押印を拒むことができます。刑事訴訟法上、調書の内容に誤りがないことを申し立てたときに署名押印を求めることができるとされ、拒んだ場合はこの限りでないと定められています。内容に納得できないまま署名しないでください。
Q2 自分が話したとおりに書かれていない場合はどうすればよいですか。
読み聞かせを受けた際に、その場で訂正を申し立ててください。訂正の申立てがあったときは、その供述を調書に記載しなければならないとされています。訂正に応じてもらえない場合は、署名押印を拒み、そのやりとりを記憶しておいて弁護人に伝えてください。
Q3 署名した調書を後から取り消せますか。
調書そのものを取り消すことはできません。公判でその内容を争うことになりますが、いったん署名した調書の記載を後から覆すのは容易ではありません。だからこそ、署名の前に内容を確認することが重要です。
Q4 通訳を介した場合、母語の調書も作られますか。
調書は日本語で作成されるのが原則です。母語の書面が同時に作られるわけではなく、通訳人が日本語の調書を訳して読み聞かせる方法が採られます。読み聞かせの内容が、自分の述べたこととずれていないかを確認する必要があります。
Q5 黙秘していれば調書は作られませんか。
供述を拒んでいても、取調べの経過が記録されることはあります。もっとも、その書面に署名押印をするかどうかは別の問題であり、拒むことができます。方針は弁護人と決めておいてください。
おわりに
供述調書は、取調室の中の出来事のうち、書面として外に残る唯一のものである。それが本人の言葉そのものではないという事実は、あまり知られていない。署名する前に、読み聞かせの内容を最後まで確認することが、後の手続を大きく左右する。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
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