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裁量保釈とは|刑訴法90条の考慮事情と身元引受人・保釈条件の実務

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裁量保釈とは|刑訴法90条の考慮事情と身元引受人・保釈条件の実務

裁量保釈とは|刑訴法90条の考慮事情と身元引受人・保釈条件の実務

2026/09/04

裁量保釈とは、権利保釈の除外事由に当たる場合であっても、裁判所が適当と認めるときに職権で保釈を許すことができる制度をいう。刑訴法90条に定められている。実務上、保釈が争われる事件の多くはこの裁量保釈の判断によって結論が決まる。

この記事の要点

  • 裁量保釈は、権利保釈が認められない場合にも保釈を許すことができる制度である。
  • 逃亡及び罪証隠滅のおそれの程度と、拘束の継続による不利益の程度とを比較して判断される。
  • 健康上、経済上、社会生活上及び防御の準備上の不利益が考慮事情として掲げられている。
  • 住居の確保、身元引受人、保証金額、条件の設計が判断を左右する。
  • 外国人の事件では、日本国内での生活実態を具体的に示すことが要点となる。

裁量保釈とは何か

裁量保釈とは、裁判所が適当と認めるときに、職権で保釈を許すことができる制度である。権利保釈の除外事由に当たると判断された場合であっても、なお保釈の道が残されている点にその意義がある。

刑訴法90条は、判断に当たり、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮すると定めている。おそれの有無ではなく程度を問題とし、不利益との衡量を明示している点が重要である。

裁量保釈ではどのような事情が考慮されるか

結論として、おそれの程度と不利益の程度を両方向から具体的に示すことが求められる。

考慮事情主張の中心典型的な疎明資料
逃亡のおそれの程度日本国内に生活の本拠があること賃貸借契約書、住民票、在職証明
罪証隠滅のおそれの程度証拠が既に確保され隠滅の余地がないこと証拠の収集状況、尋問済みの経過
健康上の不利益継続的な治療の必要があること診断書、通院歴
経済上の不利益収入が絶たれ家族の生活が破綻すること給与明細、扶養の状況
社会生活上の不利益就労先や学業を失うこと雇用主の陳述書、在学証明
防御の準備上の不利益打合せや資料の確認が困難であること争点の内容、記録の分量

裁量保釈の手続はどう進むか

手続そのものは権利保釈と同じ保釈請求の中で進む。請求書では、除外事由に当たらないことを主張したうえで、仮に当たるとしても裁量保釈を認めるべきであるという構成を採る。

裁判所は検察官の意見を聴いたうえで判断する。許可する場合には、保証金額とともに条件が定められる。住居の制限、旅行や転居についての許可制、事件関係者との接触の禁止、出頭の確保などが典型である。旅券を弁護人が預かることを申し出て、逃亡のおそれを実質的に下げる工夫がされることもある。

身元引受人はどのような役割を果たすか

結論として、身元引受人の存在は逃亡のおそれの評価を実質的に左右する。裁判所は、被告人が指定された住居で生活し、期日に出頭することを、誰がどのように確保するのかを見ている。

そのため、身元引受書には、続柄や関係、日常の接触の頻度、同居の有無、生活費の支援、出頭に付き添う意思といった具体的な内容を記載する。形式的な書面よりも、監督の実質を示す記載の方が説得力を持つ。

裁量保釈が認められないとどうなるか

判決まで身体の拘束が続くことになるが、争う手段は残る。却下の裁判に対しては抗告又は準抗告を申し立てることができ、事情が変われば再度の請求も可能である。

実務では、証人尋問の終了、示談の成立、新たな身元引受人の確保、治療の必要が生じたことなどを契機として、改めて請求することが多い。時機を選ぶこと自体が弁護活動の一部である。

外国人の事件で裁量保釈が問題になるのはどのような場面か

外国人の事件では、国外に帰る可能性があることを理由として逃亡のおそれが重く評価されやすい。この評価に対しては、日本国内での生活実態を積み重ねて反論することになる。

在留資格の種類と残存期間、家族の在留状況、日本での就労期間、地域との結び付きを具体的に示し、帰国する動機よりも日本にとどまる動機の方が大きいことを説明する。あわせて、退去強制手続が並行している場合には、釈放後に入管に収容される可能性も踏まえた見通しを立てておく必要がある。保釈全体の流れは別の記事で整理している。

よくあるご質問

Q1 裁量保釈では何が最も重視されますか。

実務上は、逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれの程度が中心です。そのうえで、身体拘束が続くことによる健康上、経済上、社会生活上、防御の準備上の不利益がどれほど大きいかが検討されます。定まった住居と身元引受人があることは、これらの評価を大きく左右します。

Q2 身元引受人には誰がなれますか。

法律上の資格はありません。同居する家族、勤務先の上司、内縁の配偶者、支援者などが実際に選ばれています。重要なのは、被告人と日常的に接触でき、出頭を確保し、生活を監督できる関係にあることです。身元引受書には、監督の具体的な方法を書き込みます。

Q3 外国人でも身元引受人になれますか。

なれます。日本国内に安定した在留資格と生活基盤があり、被告人と継続的な関係があることを示せれば足ります。ただし、身元引受人自身の在留資格や住居の状況についても資料を添えて説明した方が、裁判所の理解を得やすくなります。

Q4 保釈の条件にはどのようなものがありますか。

住居を制限すること、旅行や転居に裁判所の許可を要すること、被害者や共犯者との接触を禁じること、指定された期日に必ず出頭することなどが定められます。旅券を弁護人が預かることを申し出る場合もあります。条件に違反すると保釈が取り消され、保証金が没取されることがあります。

Q5 病気がある場合は考慮されますか。

考慮されます。刑訴法は、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上の不利益の程度を考慮事情として掲げています。診断書や施設内で受けられる治療の限界を示す資料を提出し、拘束を続けることの不利益を具体的に主張します。

おわりに

裁量保釈は、条文の文言だけを読めば裁判所の広い判断に委ねられているように見える。しかし実際には、住居、身元引受け、健康、生活の破綻といった事実をどれだけ具体的に示せるかで結論が変わる。資料を集めて積み上げる作業が、そのまま結果に結び付く場面である。

外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

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執筆者情報

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。

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