保釈とは|起訴後にしか使えない身柄解放の制度と外国人の注意点
2026/09/04
保釈とは、起訴された被告人について、保証金の納付を条件として勾留の執行を停止し、身体の拘束を解く制度をいう。刑事訴訟法に定められた制度であり、起訴前の被疑者の段階では利用することができない。中国語圏の依頼者が想定される取保候審とは、利用できる時期が根本的に異なる。
この記事の要点
- 保釈は起訴後の被告人にのみ認められ、起訴前の被疑者には認められない。
- 保釈には権利保釈、裁量保釈及び勾留が不当に長い場合の保釈の三つの類型がある。
- 保釈が許可されるときは、保証金の納付と住居の制限その他の条件が定められる。
- 外国人の事件では、住居の確保、身元引受人、旅券の取扱いが判断に強く影響する。
- 却下された場合でも、抗告又は準抗告と、事情変更後の再請求という手段がある。
保釈とは何か
保釈とは、勾留されている被告人について、保証金を納めさせたうえで身体の拘束を解く制度である。勾留そのものが取り消されるわけではなく、その執行が停止されるにとどまるため、条件に違反すれば保釈は取り消され、再び収容される。
保釈を請求できるのは、被告人本人のほか、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹である。実務上は弁護人が請求書を作成し、住居や身元引受けに関する資料を添えて裁判所に提出する。
起訴前の被疑者について保釈は認められない。この点は、捜査段階でも身柄の解放が予定されている国の制度と大きく異なり、中国語圏の依頼者やご家族が最も戸惑う点でもある。起訴前の段階では、勾留の裁判に対する準抗告や勾留の取消請求によって争うことになる。
保釈にはどのような種類があるか
保釈は三つの類型に分かれる。1つ目が権利保釈、2つ目が裁量保釈、3つ目が勾留が不当に長期にわたる場合の保釈である。
| 類型 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 権利保釈 | 刑訴法89条 | 除外事由のいずれにも当たらない限り、保釈を許さなければならない |
| 裁量保釈 | 刑訴法90条 | 除外事由に当たる場合でも、裁判所が相当と認めるときに許すことができる |
| 義務的保釈 | 刑訴法上の規定 | 勾留が不当に長くなったときは、請求により保釈を許さなければならない |
実務では、除外事由のうち罪証隠滅のおそれが認められて権利保釈が否定され、裁量保釈で争うという流れが多い。
保釈の手続はどう進むか
手続は、起訴の直後から始めるのが原則である。起訴されると被疑者は被告人となり、勾留は起訴後の勾留に切り替わるため、その時点で保釈請求が可能になる。
弁護人は、住居を示す資料、身元引受書、就労先や家族の状況に関する資料を整えて請求書を提出する。裁判所は検察官の意見を聴いたうえで判断し、許可する場合は保証金額と条件を決定する。保証金が納付されると、その日のうちに釈放されるのが通常である。
接見等禁止の決定が付いている事件では、保釈の可否と併せて、その一部解除を求めることもある。家族との面会が制限されたままでは、身元引受けの体制を整えること自体が難しくなるためである。
保釈にはどのくらいの期間がかかるか
請求から判断までは、早ければ翌日から数日である。もっとも、起訴後の第1回公判前は罪証隠滅のおそれが重く見られる傾向があり、証拠調べが進んだ段階の方が認められやすいという実務の傾向がある。
起訴後の勾留は原則として2か月であり、その後は1か月ごとに更新される。判決までの期間が長期化する見込みの事件ほど、保釈による身体拘束からの解放の意味は大きい。
保釈が認められないとどうなるか
結論として、判決まで身体の拘束が続くが、争う手段は残されている。保釈請求を却下する裁判に対しては、抗告又は準抗告により上級の裁判所の判断を求めることができる。
また、示談が成立した、関係者の証人尋問が終了した、身元引受人が新たに確保できたといった事情の変化があれば、改めて保釈を請求することができる。回数に制限はない。実務上は、公判の進行に合わせて再請求の時機を計ることが重要になる。
外国人の事件で保釈が問題になるのはどのような場面か
外国人の事件では、逃亡のおそれの評価が争点になりやすい。国外に生活の本拠があること自体が逃亡のおそれを基礎づける事情として扱われる傾向があるため、日本国内での生活実態を具体的に示す必要がある。
具体的には、住居の賃貸借契約、勤務先の在職証明、家族の在留資格と同居の状況、身元引受人となる者の陳述書といった資料を積み上げる。旅券を弁護人が預かる、あるいは裁判所に提出するといった措置を申し出ることもある。なお、退去強制手続が並行している場合、保釈で釈放されても入管に収容されることがあるため、刑事と入管の双方の見通しを立てたうえで方針を決める必要がある。
よくあるご質問
Q1 逮捕された直後でも保釈は請求できますか。
できません。保釈は起訴された後の被告人についてのみ認められる制度です。起訴前の被疑者の段階では、勾留の裁判に対する準抗告や、勾留の取消し・執行停止を求めることになります。中国の取保候審のように捜査段階で身柄を解く仕組みとは、この点が大きく異なります。
Q2 保釈保証金はいくらくらいですか。返ってきますか。
金額は事案の性質や被告人の資力によって異なり、比較的軽い事件でも150万円から200万円程度が一つの目安とされることが多いです。判決までの間、逃亡せず、条件を守って出頭していれば、裁判が終わった後に返還されます。条件に違反すると、その全部又は一部が没取されることがあります。
Q3 外国人でも保釈は認められますか。
認められます。ただし、日本国内に安定した住居があるか、身元引受人がいるか、旅券をどう扱うかといった点が、逃亡のおそれの判断に強く影響します。住居と身元引受人を具体的に示せるかどうかが実務上の分かれ目になります。
Q4 保釈中に働くことはできますか。
保釈の条件として住居が制限され、旅行や転居に裁判所の許可が必要とされるのが通常ですが、就労そのものが一律に禁じられるわけではありません。もっとも、在留資格の面で就労が認められているかは別問題ですので、刑事と入管の両面から確認する必要があります。
Q5 保釈が認められないときはどうすればよいですか。
保釈請求を却下する裁判に対しては、抗告や準抗告により上級の裁判所の判断を求めることができます。また、事情が変わった段階、例えば示談が成立した後や、証人尋問が終わって罪証隠滅のおそれが減った後に、改めて請求することも実務上よく行われています。
おわりに
保釈は、判決までの生活と防御の準備を左右する制度である。身体拘束が続けば、勤務先を失い、家族の生活も立ち行かなくなることが少なくない。外国人の事件では、釈放後の在留手続まで見通したうえで、住居と身元引受けの体制を早い段階から整えておくことが求められる。
外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。
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