偽造在留カードとは|所持や行使の罰則、量刑の考え方と在留への影響
2026/09/04
偽造在留カードとは、真正な在留カードの外観を備えるように作られた偽物の在留カード、又は真正な在留カードに改変を加えたものをいう。入管法は、行使の目的でこれを偽造し若しくは変造する行為、行使する行為、行使の目的で所持し、提供し、又は受け取る行為を処罰の対象としている。法定刑は重く、罰金刑の定めがない。
この記事の要点
- 偽造・変造だけでなく、行使、行使の目的での所持・提供・収受も処罰の対象になる。
- 法定刑は1年以上10年以下の拘禁刑とされ、罰金刑の定めがない重い犯罪である。
- 買った側や持っていただけの側も、行使の目的があれば処罰され得る。
- 在留カードの携帯義務違反や提示義務違反とは、まったく別の重さの問題である。
- 刑事処分の内容によっては退去強制事由に該当し、在留の継続が難しくなる。
偽造在留カードとは何か
偽造在留カードとは、在留カードとしての外観を備えた偽物をいう。在留カードは、中長期在留者に対して出入国在留管理庁が交付する公的な身分証明書であり、ホログラムやICチップなどの偽造対策が施されている。
これに似せて作られたものが偽造在留カードであり、真正なカードの記載を書き換えたものは変造在留カードと呼ばれる。在留期間が過ぎた方が就労を続けるために入手する例や、在留資格のない方が身分証明の必要な契約のために入手する例が見られる。
どのような行為が処罰されるか
入管法は、偽造在留カードをめぐる一連の行為を広く処罰の対象としている。作った者だけでなく、使った者、持っていた者も対象になる点に注意が必要である。
| 行為 | 内容 | 典型的な場面 |
|---|---|---|
| 偽造・変造 | 行使の目的で偽物を作り、又は真正なカードを改変する | 販売目的での製造 |
| 行使 | 真正なものとして提示し、又は用いる | 職務質問や採用時の提示 |
| 提供・収受 | 行使の目的で人に渡し、又は受け取る | 交流サイトを通じた売買 |
| 所持 | 行使の目的で持っている | 使う前の段階での保管 |
どのくらいの刑罰が科されるか
法定刑は1年以上10年以下の拘禁刑とされている。罰金刑の定めがないため、起訴された場合には、執行猶予付きの拘禁刑か実刑かという判断になる。略式手続で罰金を納めて終わるという処理はできない。
量刑では、枚数、入手や使用の目的、対価の有無、販売や仲介に関与していたか、組織的な背景があるかといった事情が重視される。単に自分で使うために1枚を購入した場合と、複数枚を仕入れて他人に販売していた場合とでは、扱いが大きく異なる。
刑法の公文書偽造罪とはどのような関係にあるか
在留カードは公務所が作成する文書であるため、理論的には公文書偽造の罪の対象にもなり得るが、実務では入管法の特別な規定によって処理されることが多い。
他方、偽造在留カードを用いて就職したり、携帯電話や口座の契約をしたりした場合には、詐欺罪や私文書偽造の罪など、別の犯罪が成立することがある。偽造在留カードの罪だけで終わらず、行為の全体を見て複数の罪が問われることがある点に注意が必要である。
偽造在留カードは在留資格にどう影響するか
在留への影響は、刑事処分の内容によって変わる。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合には、入管法24条4号リの退去強制事由に該当する。
執行猶予が付いた場合でも安心はできない。別表第一の在留資格で在留する方については、一定の入管法違反の罪により刑に処せられたこと自体が退去強制事由とされる類型があるためである。また、退去強制に至らない場合でも、在留期間の更新や在留資格の変更の審査において、素行が善良であるとは認められないと判断される可能性が高い。
偽造在留カードが疑われた場合、どのような捜査が行われるか
捜査の端緒は、提示の場面での発覚と、販売側の摘発からの発覚に分かれる。前者は職務質問や勤務先での確認、後者は製造・販売グループの検挙に伴う購入者の特定である。
販売側が摘発された場合、押収された端末の通信履歴や送金記録から購入者が割り出されることがある。逮捕の時点で相当の資料がそろっている場合が多いため、記憶に頼った説明が客観的な記録と食い違うと、かえって不利になる。取調べに応じる前に、弁護人と方針を確認しておくことが望ましい。
外国人の事件で偽造在留カードが問題になるのはどのような場面か
実務では、在留期間が過ぎた後も日本での生活を続けようとして入手に至る例が多い。仕事を失えないという事情や、家族を扶養しなければならないという事情が背景にあることも少なくない。
もっとも、そうした事情があっても、この罪の法定刑は重い。不法入国や不法残留と併せて問題になることも多く、刑事事件の見通しと退去強制手続の見通しを、最初から一体として立てる必要がある。雇っていた側については不法就労助長罪も問題になり得る。
よくあるご質問
Q1 買っただけで一度も使っていない場合も罪になりますか。
なり得ます。入管法は、行使の目的で偽造在留カードを所持し、又は受け取る行為も処罰の対象としています。実際に提示していなくても、就労に使う目的で入手していた場合には罪が成立し得ます。
Q2 偽物だと知らずに持っていた場合はどうなりますか。
偽造されたものであるという認識がなければ、この罪は成立しません。ただし、正規の手続を経ずに第三者から入手した経緯があると、認識があったと判断されやすくなります。入手の経緯を具体的に説明できるかが重要です。
Q3 どのくらいの量刑になりますか。
法定刑は1年以上10年以下の拘禁刑とされており、罰金刑の定めがありません。そのため、起訴された場合は執行猶予付きの判決か実刑かという判断になります。枚数、目的、組織的な関与の有無が大きく影響します。
Q4 執行猶予がつけば日本に残れますか。
残れるとは限りません。執行猶予であっても、在留資格の種類や罪の内容によっては退去強制事由に該当する場合があり、更新の審査でも不利に働きます。刑事処分と在留の見通しは分けて検討する必要があります。
Q5 偽造在留カードはどのような場面で見破られますか。
職務質問での提示、勤務先での確認、携帯電話や銀行口座の契約時などが典型です。近年は読取アプリによる確認が普及しており、券面が精巧でもICチップの情報との不一致から判明することがあります。
おわりに
偽造在留カードの事案では、生活を続けるためにやむを得ず入手したという経緯であっても、法定刑の重さから身柄拘束が長引きやすい。家族の生活や勤務先への影響も大きいため、入手の経緯と使用の実態を早い段階で正確に整理しておくことが大切である。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。
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