不法就労助長罪とは|雇用主の責任、過失、両罰規定と在留への影響
2026/09/04
不法就労助長罪とは、事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた者などを処罰する犯罪をいう(入管法73条の2)。働いた外国人本人ではなく、働かせた雇用主やあっせんをした側を対象とする点に特徴がある。法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科である。
この記事の要点
- 不法就労助長罪は、働いた外国人ではなく、働かせた側を処罰する規定である。
- 在留資格のない者を雇う場合だけでなく、資格の範囲を超えて働かせる場合も対象になる。
- 知らなかったというだけでは免れず、過失がなかったといえる場合に限り処罰を免れる。
- 入管法には両罰規定があり、法人にも罰金刑が科されることがある。
- 外国人経営者が処罰されると、在留資格の更新や退去強制に直結する。
不法就労助長罪とは何か
不法就労助長罪は、外国人の不法就労を生み出す側を処罰する規定である。入管法73条の2は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者、外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者、業としてこれらの行為をあっせんした者を処罰の対象としている。
ここでいう不法就労活動とは、在留資格を持たない者が収入を伴う事業を運営し又は報酬を受ける活動を行うこと、及び、資格外活動許可を受けないまま在留資格に応じた活動の範囲を超えて同様の活動を行うことをいう。働いた外国人本人には資格外活動罪や不法残留罪の問題が生じるが、本罪はこれとは別に、雇用する側の責任を問うものである。
どのような行為が不法就労助長罪に当たるか
典型的には次の3つの類型に整理できる。飲食店や建設現場のように、現場の管理者が実際の就労状況を把握していた場合には、経営者だけでなく現場責任者の責任も問題になる。
| 類型 | 典型的な場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 在留資格がない者を働かせる | 在留期間が過ぎた者、不法入国者を雇用する | 在留カードの有効期限の管理を怠ると発覚しやすい |
| 資格外の就労をさせる | 留学や家族滞在の方を許可なく働かせる | 資格外活動許可の記載の確認が必要 |
| 許可の範囲を超えて働かせる | 週28時間の枠を超えて働かせる | 他店との掛け持ちを含めた合計時間で判断される |
知らなかった場合でも処罰されるのか
知らなかったというだけでは処罰を免れない。入管法は、不法就労活動であることを知らなかったことを理由に責任を免れることはできないとしたうえで、過失がなかったときに限って例外を認めている。
したがって、確認を尽くしていたかどうかが分かれ目になる。在留カードの現物を確認したか、就労制限の有無や在留期間の満了日を見ていたか、資格外活動許可の有無を確かめたか、偽変造を疑うべき事情がなかったかといった点が具体的に問われる。
どのような刑罰が科されるか
法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科である。雇用した人数、期間、組織性、利益の額などによって量刑は大きく変わる。
あわせて、入管法には両罰規定が置かれており、法人の代表者や従業者が違反行為をした場合には、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されることがある。事業として反復して行っていたと評価されると、実刑が選択される場合もある。
雇用主はどのように確認すればよいか
採用時と更新時の二段構えで確認するのが基本である。採用時には在留カードの現物を確認し、氏名と生年月日、在留資格、在留期間の満了日、就労制限の有無、裏面の資格外活動許可の記載までを控えておく。
在留カードの真正性については、出入国在留管理庁が提供する読取アプリケーションによる確認が有効である。就労できる資格かどうかに疑義がある場合には、就労資格証明書の交付を受ける方法もある。在留期間の満了日を管理し、更新の確認を怠らない体制を整えておくことが、結果として自社を守ることにつながる。
不法就労助長罪は在留資格にどう影響するか
外国人経営者にとっては、刑事処分そのものよりも在留への波及が重い問題になる。処罰を受けた場合、在留資格の更新が不許可となる可能性があり、事情によっては退去強制事由に該当することもある。
日本人や日本法人が雇用主である場合も、技能実習や特定技能の受入れに関して、一定期間受入れができなくなるなどの不利益が生じ得る。刑事事件としての見通しと、事業に対する行政上の影響を、同時に検討する必要がある。
外国人の事件で不法就労助長罪が問題になるのはどのような場面か
実務では、働いていた外国人が摘発され、その供述から雇用主の立件に至る流れが多い。留学生のアルバイト先や、同国出身者が経営する飲食店、人材のあっせんを行っていた会社などが典型である。
この場面では、雇用主側にも外国人側にも刑事と入管の両面の問題が生じる。関連する語として、資格外活動罪や偽造在留カードも併せて確認しておくとよい。
よくあるご質問
Q1 在留カードを見せてもらえば責任を問われませんか。
現物を確認することは重要ですが、それだけで足りるとは限りません。就労制限の有無、在留期間の満了日、資格外活動許可の記載まで見る必要があります。偽変造を見抜くための読取アプリの利用や、在留期間の管理体制も問われます。
Q2 週28時間を超えて働かせた場合も対象になりますか。
対象になり得ます。留学や家族滞在の方が資格外活動許可の範囲を超えて働いた場合、その就労は不法就労活動に当たり、働かせた側が不法就労助長罪に問われる可能性があります。他店との掛け持ちの合計時間にも注意が必要です。
Q3 偽造在留カードを見せられた場合も処罰されますか。
見抜けなかったことに過失がないといえる場合には処罰を免れる余地があります。ただし、券面の記載を確認していない、読取アプリで真正性を確認していないなどの事情があると、過失があったと判断されることがあります。
Q4 会社そのものも処罰されますか。
入管法には両罰規定が置かれており、従業者などが違反行為をした場合には、法人に対しても罰金刑が科されることがあります。経営者個人の刑事責任とは別に、法人としての責任を検討する必要があります。
Q5 不起訴になれば在留資格に影響しませんか。
不起訴であれば前科にはなりませんが、入管の審査では在留状況として調査対象になり得ます。外国人経営者の場合は、更新の際に事業の適法性を改めて説明できるよう、再発防止の体制を整えておくことが大切です。
おわりに
不法就労助長罪の事案では、雇う側に悪意がなく、確認が形だけになっていたために立件されることが少なくない。従業員の生活や事業の継続にも影響するため、確認体制の実態を早い段階で整理しておくことが求められる。
外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。
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