不法入国とは|不法上陸との違い、刑罰、退去強制と上陸拒否期間
2026/09/04
不法入国とは、有効な旅券を所持しないなど、入管法(出入国管理及び難民認定法)が定める入国の要件を満たさないまま本邦に入ることをいう。入管法は、不法入国をした外国人を退去強制の対象とするとともに、不法入国罪として刑罰の対象としている。有効な旅券は持っているが上陸許可を受けずに上陸する不法上陸とは、法律上区別されている。
この記事の要点
- 不法入国は有効な旅券を持たずに本邦に入る行為であり、旅券はあるが上陸許可を受けない不法上陸とは区別される。
- 不法入国罪の法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科である。
- 刑事手続が終わっても入管の退去強制手続が別に進むため、2つの手続を同時に見通す必要がある。
- 不法入国者は出国命令の対象とならず、退去強制された場合の上陸拒否期間は原則として5年である。
- 家族関係などの事情によっては、退去強制手続の中で在留特別許可が検討される余地がある。
不法入国とは何か
不法入国とは、入管法が定める入国の要件を満たさないまま本邦に入る行為である。入管法は、外国人が本邦に入るには有効な旅券を所持しなければならないと定めており、これに違反して入った者が不法入国者に当たる。
典型は、船舶などで審査を受けずに密航する場合である。もっとも、他人名義の旅券や偽造旅券を用いて入国審査を通過した場合も、有効な旅券の所持を欠くものとして不法入国に当たると扱われている。不法入国は入管法24条の退去強制事由に掲げられており、刑事事件として立件されるかどうかにかかわらず、退去強制の対象になる。
不法入国と不法上陸、不法残留は何が違うか
違法状態が始まる時点と、その後に選べる手続が異なる。とくに出国命令を使えるかどうかが実務上の分かれ目になる。
| 項目 | 不法入国 | 不法上陸 | 不法残留 |
|---|---|---|---|
| 典型的な場面 | 有効な旅券を持たず入国。偽造旅券の使用を含む | 旅券はあるが上陸許可を受けずに上陸 | 適法に上陸したが在留期間の満了後も残留 |
| 退去強制事由 | 該当する | 該当する | 該当する(入管法24条4号ロ) |
| 刑事罰 | 3年以下の拘禁刑等 | 3年以下の拘禁刑等 | 3年以下の拘禁刑等 |
| 出国命令 | 対象外 | 対象外 | 要件を満たせば対象 |
| 上陸拒否期間 | 原則5年 | 原則5年 | 退去強制なら5年、出国命令なら1年 |
不法入国にはどのような刑罰が定められているか
不法入国罪の法定刑は、入管法70条により、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科とされている。令和7年6月1日から、自由刑は拘禁刑に一本化されている。
偽造旅券や他人名義の旅券を用いた場合には、公文書偽造の罪やその行使の罪などが併せて問題になる。密航を手配した側には、より重い罰則が用意されている。他方、入国から相当の年数が経っている場合など、刑事処分ではなく退去強制手続に委ねられることもある。
不法入国が発覚するとどのような手続が進むか
刑事手続と退去強制手続が前後して進むのが通常である。刑事事件として逮捕された場合は刑事手続が先行し、処分が決まった段階で入国警備官に身柄が引き継がれる。
退去強制手続は、入国警備官の違反調査から始まる。収容令書が発付された後、入国審査官による違反審査が行われ、認定に不服があれば特別審理官の口頭審理を請求でき、その判定にも不服があれば法務大臣に異議を申し出ることができる。この最後の段階で在留特別許可が検討される。令和5年改正入管法により令和6年6月10日から監理措置が導入され、収容しないまま手続を進める選択肢も設けられた。
不法入国をした人はどのくらいの期間再入国できないのか
退去強制を受けて出国した場合、原則として5年間は上陸を拒否される。過去に退去強制を受けたことがある者については10年となる。上陸拒否事由と期間は入管法5条1項9号に定められている。
不法入国者は出国命令の対象にならないため、上陸拒否期間を1年に短縮する扱いを受けられない。もっとも、拒否期間中であっても上陸特別許可が認められれば入国できる場合がある。
不法入国でも在留特別許可を受けられるのか
不法入国であることは不利な事情であるが、それだけで可能性がなくなるわけではない。入管法50条は在留特別許可を定めており、令和5年改正により同条5項で考慮すべき事情が法律上明示された。
在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留の期間、法的地位、退去強制の理由、人道的な配慮の必要性などが挙げられている。出入国在留管理庁が公表する事例集には不法入国の事案で許可された例も含まれるが、公表事例は事情が抽象化されているため、似た事例のどこが共通しどこが異なるかを具体的に示す作業が必要になる。
外国人の刑事事件で不法入国が問題になるのはどのような場面か
実務では、別の罪で逮捕された後に不法入国が判明する場面が多い。身分事項の確認や指紋照会を通じて、過去の入国経緯が明らかになるという流れである。
この場面では、目の前の刑事事件をどう終わらせるかが、そのまま退去強制手続の見通しに響く。取調べでの供述が、後の入管手続で述べる在留希望の理由と食い違ってしまう例も少なくない。就労のために偽造在留カードを所持していた場合には、重い別罪が加わる。
よくあるご質問
Q1 不法入国してから何年も経っています。今から出頭したほうがよいのでしょうか。
一概には申し上げられません。摘発される前に自ら出頭したという事情が有利に考慮されることはありますが、出頭すれば直ちに退去強制手続が始まります。家族関係や生活状況の資料をそろえてから臨むことが大切です。
Q2 不法入国でも日本人と結婚していれば在留が認められますか。
結婚しているというだけで許可されるわけではありません。婚姻の実体があるか、同居の期間、生計の状況、素行などが総合的に見られます。婚姻の実体を示す資料を具体的に積み上げる必要があります。
Q3 不法入国の罪はどのくらいの刑になりますか。
法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科です。入国の態様や組織的な密航への関与の程度によって量刑は変わります。偽造旅券を使った場合には別の罪も問題になります。
Q4 不法入国と不法残留は何が違いますか。
不法入国は入る段階から違法である場合、不法残留は適法に上陸したものの在留期間を過ぎた場合です。不法残留であれば出国命令の対象となる余地がありますが、不法入国はその対象になりません。
Q5 一度退去強制されたら、二度と日本に来られないのでしょうか。
原則として5年間、過去に退去強制歴がある場合は10年間、上陸を拒否されます。ただしその期間中でも、法務大臣が特別に上陸を許可する制度があります。
おわりに
不法入国の事案では、刑事処分の軽重と同じくらい、その後の退去強制手続でどこまで事情を伝えられるかが結論を分ける。時間が経つほど当時の資料は集まりにくくなり、家族の生活も不安定になる。どの段階で何を準備するかを早く決めておくことが、結局は本人と家族の負担を軽くする。
外国人の刑事事件、とりわけ中国語圏の方の刑事弁護と、その後の在留資格の問題については、当事務所にご相談ください。接見・取調べへの対応・打合せに対応できる中国語の通訳体制を備えています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。
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