出国命令とは|収容されずに出国できる要件と上陸拒否期間1年の意味
2026/09/04
出国命令とは、不法残留の状態にある外国人のうち一定の要件を満たす者について、収容することなく、自ら日本から出国することを命ずる制度をいう。要件は入管法24条の3に、手続は同法55条の2以下に定められている。収容されないこと、その後の上陸拒否期間が1年にとどまることが、通常の退去強制との大きな違いである。
この記事の要点
- 出国命令の対象となるのは、退去強制事由のうち不法残留のみに該当し、他の事由に該当しない者である。
- 自ら入管官署に出頭したことが要件であり、摘発された場合には利用できない。
- 入国後に一定の罪により拘禁刑に処せられた者、過去に退去強制歴のある者は対象外である。
- 出国命令を受けた者の上陸拒否期間は1年であり、退去強制の場合の5年と比べて短い。
- 指定された期限内に出国しないと出国命令は取り消され、退去強制手続に移行する。
出国命令とは何か
出国命令は、不法残留を自ら申告して速やかに出国しようとする外国人について、収容を伴う退去強制手続によらずに、簡易な手続で出国させる仕組みである。平成16年の入管法改正で導入された。
退去強制手続では収容令書による収容が問題となるのに対し、出国命令の対象となる者は収容されない。また、出国後に再び日本への上陸を希望する場合の上陸拒否期間も短く設定されている。不法残留の状態が続いている方にとって、選択肢として検討する価値のある制度である。
出国命令の要件は何か
入管法24条の3は、出国命令の対象者となるための要件を定めており、そのすべてを満たす必要がある。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 該当する事由 | 在留期間の経過による不法残留に該当し、他の退去強制事由に該当しないこと |
| 出頭 | 速やかに出国する意思をもって、自ら入管官署に出頭したこと |
| 前科 | 入国後に窃盗罪その他の一定の罪により拘禁刑に処せられたことがないこと |
| 過去の退去歴 | 過去に退去強制されたこと、又は出国命令により出国したことがないこと |
| 出国の確実性 | 速やかに日本から出国することが確実と見込まれること |
とりわけ重要なのは、不法就労助長や資格外活動、薬物事犯など他の退去強制事由が併存すると対象外になる点、そして自ら出頭したことが必要である点である。入管や警察に摘発された後では、この制度を利用することはできない。
出国命令の手続はどう進むか
手続は、本人が入管官署に出頭して申告するところから始まり、入国審査官の審査を経て、主任審査官が出国命令を発することで完結する。
出頭すると、入国警備官による違反調査が行われ、続いて入国審査官が出国命令対象者に該当するかどうかを審査する。該当すると認められた場合、主任審査官が出国命令を発し、出国期限が指定される。期限は15日を超えない範囲で定められるのが原則であり、その間に住居や行動範囲についての条件が付されることもある。指定された期限までに自らの費用で出国することになる。
出国命令を受けるとその後どうなるか
出国命令により出国した者の上陸拒否期間は1年であり、退去強制を受けた場合の5年より大幅に短い。
もっとも、上陸拒否期間が経過すれば当然に入国できるわけではない。改めて査証の申請を行い、過去の不法残留の経緯を含めて審査を受けることになるため、期間の経過は出発点にすぎない。また、出国命令に付された条件に違反した場合や、期限までに出国しなかった場合には、出国命令が取り消され、通常の退去強制手続へ移行する。その場合、上陸拒否期間は5年となる。
出国命令と退去強制は何が違うか
両者は、収容の有無、手続の重さ、その後の上陸拒否期間において大きく異なる。
| 比較項目 | 出国命令 | 退去強制 |
|---|---|---|
| 対象 | 不法残留のみに該当する者で要件を満たす者 | 退去強制事由に該当する者一般 |
| 収容 | されない | 収容令書による収容がありうる |
| 出国の方法 | 自ら費用を負担して出国する | 送還が実施される |
| 上陸拒否期間 | 1年 | 原則5年、2回目以降は10年 |
くわしくは退去強制事由および上陸拒否期間の各記事を参照されたい。
出国命令を選ぶかどうかはどう判断すべきか
出国命令は日本から出国することを前提とする制度であるから、日本での在留を続けたい方にとっては、選択の意味がまったく異なる。
日本人や永住者の配偶者がいる、日本で育った子がいる、長期にわたって生活の基盤を築いてきたといった事情がある場合には、出国命令に応じるのではなく、在留特別許可を求めて手続を進めるべき場面がある。逆に、在留の見込みが乏しく、早期に出国して将来の再入国に備えるほうが合理的な場合もある。出頭する前に、どちらの方針をとるかを整理しておくことが重要である。
よくあるご質問
Q1 出頭したら、その場で収容されませんか。
出国命令の対象者に該当する場合は収容されないのが原則です。もっとも、不法残留以外の事由が疑われる場合には通常の退去強制手続に進み、収容されることがあります。出頭前に、ご自身がどの事由に該当しうるかを確認しておくことが大切です。
Q2 1年たてば必ず日本に戻れますか。
戻れるとは限りません。上陸拒否期間が経過しても、改めて査証の審査を受ける必要があり、過去の在留状況も考慮されます。期間の経過は再入国のための出発点にすぎないとお考えください。
Q3 家族と一緒に出国したいのですが、期限を延ばせますか。
出国期限は法律上の枠内で指定されるもので、自由に延長できるものではありません。航空券の手配や荷物の整理には時間がかかりますので、出頭の前におおよその準備を進めておくことをお勧めします。
Q4 働いていた場合でも出国命令を受けられますか。
資格外活動その他の事由に該当すると評価されると、対象外となる可能性があります。就労の期間や内容によって判断が分かれる部分ですので、出頭前に事実関係を整理し、弁護士にご相談ください。
Q5 出国命令を受けた後で、やはり在留したいと考え直せますか。
出国命令は出国を前提とする制度ですので、方針を変えることは容易ではありません。在留を希望されるのであれば、出頭の前の段階で在留特別許可を求める方針を選ぶべきです。順序を誤ると選択肢が狭まります。
おわりに
出国命令は、収容を避け、上陸拒否期間を短くできる制度ですが、日本を離れることを前提とした選択でもあります。ご家族や仕事の基盤が日本にある方にとっては、出頭する前にどの方針をとるかを決めることが何より重要です。順序を誤ると、後から取り返しがつきにくくなります。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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