上陸拒否期間とは|5年・10年・1年の区別と再入国までの実務
2026/09/04
上陸拒否期間とは、過去に退去強制を受けた者などについて、入管法上、日本への上陸が認められない期間をいう。入管法5条1項9号に定めがあり、退去強制を受けて出国した者は原則として5年、過去にも退去強制歴等がある者は10年、出国命令により出国した者は1年とされている。期間が経過するまでは、原則として査証も上陸許可も得られない。
この記事の要点
- 上陸拒否期間の起算点は、日本から退去した日である。
- 退去強制を受けた場合は原則5年、2回目以降は10年、出国命令による出国は1年である。
- 薬物事犯や1年を超える拘禁刑に処せられた場合など、期間の定めなく上陸を拒否される類型もある。
- 期間が経過しても当然に入国できるわけではなく、改めて査証の審査を受ける。
- 特別の事情がある場合には、上陸特別許可により期間中の上陸が認められる余地がある。
上陸拒否期間とは何か
上陸拒否期間とは、上陸拒否事由に該当する外国人について、その事由が解消するまでの期間として法律が定めている年数である。入管法は、過去に退去強制を受けた事実などを上陸拒否事由とし、一定の年数が経過するまで上陸を認めないこととしている。
この期間中は、在外公館での査証申請の段階で不許可となるのが通常であり、空港に到着しても上陸許可を受けられない。日本人の配偶者であっても、上陸拒否事由に該当している限り、当然に入国できるわけではない点に注意を要する。
上陸拒否期間は何年か
期間は、日本を出国した経緯によって異なる。主な類型は次のとおりである。
| 出国の経緯 | 上陸拒否期間 |
|---|---|
| 退去強制を受けて出国した(初めての場合) | 退去した日から5年 |
| 過去に退去強制歴又は出国命令による出国歴があり、再び退去強制を受けた | 退去した日から10年 |
| 出国命令により出国した | 出国した日から1年 |
| 1年を超える拘禁刑に処せられた | 期間の定めなく上陸を拒否されうる |
| 薬物に関する法令違反により有罪となった | 刑の軽重を問わず期間の定めなく上陸を拒否されうる |
表の下の二つは、退去強制歴とは別個の上陸拒否事由であり、年数による期間の定めがない。したがって、刑事事件の内容によっては、退去してから何年経過しても上陸拒否事由が残り続けることになる。
上陸拒否期間はいつから数えるか
起算点は、退去強制により送還された日、又は出国命令により出国した日である。
退去強制手続が始まった日でも、退去強制令書が発付された日でもない点に注意を要する。収容が長期化して送還が遅れれば、その分だけ期間の満了も遅くなる。他方、期間の計算そのものは明快であるため、いつ再入国の準備を始められるかは、出国の日を基準に見通しを立てることができる。
期間が経過すれば日本に入国できるか
期間の経過は、上陸拒否事由が一つ解消したことを意味するにすぎず、入国が保証されるわけではない。
再び日本に入国するには、在外公館で査証の申請を行い、渡航目的の正当性、身元保証、経費の支弁能力などについて審査を受ける必要がある。その際、過去に不法残留や退去強制の経緯があることは、審査上の消極的な事情として考慮される。したがって、招へい理由書や身元保証書を整え、以前の在留状況と現在の事情の違いを説明できるようにしておくことが実務上は重要である。
上陸拒否期間中に日本に入る方法はあるか
法務大臣が特別に上陸を許可する場合があり、これを上陸特別許可という。
上陸特別許可は、上陸の条件に適合しない外国人について、口頭審理と異議の申出を経た手続の中で、特別に上陸を認めるものである。日本人の配偶者や実子との関係、人道上の配慮を要する事情など、特別の事情が認められる場合に限られ、一般的に認められるものではない。あらかじめ在外公館に事情を説明し、資料を整えたうえで査証を申請することが出発点となる。
外国人の刑事事件で上陸拒否期間が問題になるのはどのような場面か
刑事事件の処分の内容が、将来の上陸拒否事由の有無と期間を左右するため、量刑の見通しと入管上の効果は一体で考える必要がある。
たとえば、1年を超える実刑となるか否か、薬物事犯として有罪となるか否かは、年数による期間の問題ではなく、期間の定めのない上陸拒否事由に該当するかどうかの問題に直結する。刑事弁護の段階では、目の前の量刑だけでなく、退去強制事由への該当と将来の再入国までを視野に入れて方針を立てるべきである。出国命令を選べる状況かどうかも、あわせて検討することになる。
よくあるご質問
Q1 5年たてば自動的にビザが取れますか。
自動的に取れるわけではありません。上陸拒否期間の経過は前提条件が一つ整ったにすぎず、渡航目的や身元保証について改めて審査されます。過去の在留状況も考慮されますので、資料の準備が重要です。
Q2 期間は退去強制令書が出た日から数えるのですか。
違います。実際に日本から退去した日から数えます。収容が長引いて送還が遅れた場合には、その分だけ満了の時期も後ろにずれます。
Q3 日本人と結婚していれば期間中でも入国できますか。
当然に入国できるわけではありません。婚姻の実態や子の養育といった事情は、上陸特別許可を求める際の重要な事情になりますが、認められるかどうかは事案によります。
Q4 薬物事件で罰金になった場合も影響しますか。
影響します。薬物に関する法令違反については、刑の軽重を問わず上陸拒否事由となりうる点が他の犯罪と大きく異なります。将来の再入国を考えるうえで、この違いは決定的です。
Q5 出国命令なら本当に1年で済みますか。
出国命令により出国した場合の上陸拒否期間は1年です。ただし、他の上陸拒否事由に該当していれば、その事由は別に残ります。ご自身の事情に他の事由がないかを確認しておく必要があります。
おわりに
上陸拒否期間は、単に何年待てばよいかという問題にとどまりません。刑事事件の内容によっては年数の定めがない事由が残り、家族が日本にいても会いに来られない状態が続くことがあります。出国の前に、将来どのような形で日本と関わりたいのかを整理しておくことをお勧めします。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
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