日本で逮捕されたことは、中国の会社や家族に知られますか
2026/09/05
日本で身柄を取られた中国籍の方とご家族から、この事実が中国の勤務先や親族に伝わるのかというご質問を非常に多くいただきます。憶測が広まりやすい領域です。ここでは確認できる制度と確認できない事柄を分けて説明します。
本記事の要点
- 日本の捜査機関が中国国内の勤務先やご家族へ直接通知する制度は、確認できる限り存在しません。
- 本人が要請すれば、ウィーン領事関係条約36条1項により中国の領事機関へ通報されます。
- 事件が報道されれば中国語のニュースサイトに転載され、氏名や国籍が中国語で流通することがあります。
- 日本の勤務先や学校には、出勤の途絶や捜査関係事項照会(刑訴法197条2項)により事実上知られます。
- 日本での処分が中国側の記録にどう扱われるかは、公表された説明が乏しく断定できません。
この質問への直接の回答
日本の警察・検察が中国本国の会社やご家族へ直接連絡する制度は、確認できる限り存在しません。もっとも、本人の要請による領事通報、報道と中国語での転載、勤務先や学校への捜査関係事項照会という三つの経路があり、事実上知られることはあります。中国側の記録への影響は断定を避けます。
日本の警察は、中国の家族や勤務先に連絡しますか
直接連絡する制度は確認できません。捜査機関が家族へ通知することを義務づける規定はなく、日本国内のご家族にさえ連絡が来ないことがあります。国外へ通知する仕組みは見当たりません。
実際に連絡が届く経路は多くの場合弁護人からです。弁護人はご本人の意思を確認し、指定された相手にだけ状況を伝えます。当事務所は微信(WeChat ID:matsumura1119)で中国のご家族と直接やり取りできますが、誰に何を伝えるかはご本人の意思で決めます。中国人の刑事事件・在留のご相談もご覧ください。
領事通報とはどのような制度ですか
拘禁された外国人について本国の領事機関へ知らせる制度です。ウィーン領事関係条約36条1項は、拘禁された外国人が要請したときは当局が遅滞なく本国の領事機関へ通報しなければならず、本人にこの権利を告げなければならないと定め、領事官が訪問する権利も認めています。日本と中国との間には領事協定も結ばれています。
押さえるべきは、通報先が領事機関であって勤務先やご家族ではない点です。領事機関が中国のご家族へ連絡するかどうかは領事機関の判断で、公表された基準は確認できません。伝わるとも伝わらないとも、当事務所は断定できません。
逮捕されたことは報道されますか
事件の性質によります。警察は社会的関心の高い事件について報道発表を行い、報道機関が氏名、年齢、国籍、職業を報じることがあります。軽微な事件では発表されないこともあります。
中国籍の方の事件では、在日中国人向けの中国語ニュースサイトが日本の報道を転載する例が多く見られます。転載記事はネット上に残り、氏名で検索すると出てくる状態が続くことがあります。報道は逮捕の段階のもので有罪の確定を意味せず、不起訴でも自動的に削除されるとは限りません。外国人刑事・在留Q&Aで条文に即した整理を示しています。
日本の勤務先や大学には知られますか
多くの場合、知られます。逮捕されれば出勤も出席もできず、身柄拘束は最長23日、起訴されればさらに続きます。刑事訴訟法197条2項により、捜査については公務所や公私の団体へ照会して報告を求めることができます。
重要なのは、解雇や除籍が在留資格に直結することです。別表第一の方が在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない状態になると、入管法22条の4第1項6号の取消しの検討対象となり得ます。令和7年の在留資格取消しは1,446件で過去最高です。外国人の刑事事件と在留で全体の構造を説明しています。
| 伝わり得る相手 | 経路 | 制度としての確認 |
|---|---|---|
| 中国の領事機関 | 本人の要請による領事通報 | ウィーン領事関係条約36条1項 |
| 日本の勤務先・学校 | 出勤の途絶、捜査関係事項照会 | 刑事訴訟法197条2項 |
| 不特定多数 | 報道発表と報道、中国語での転載 | 事件による |
| 中国国内の勤務先 | 直接の通知 | 確認できる制度はない |
| 中国国内の家族 | 直接の通知 | 制度はない。領事機関経由の可能性は残る |
| 日本の入管 | 職員による通報 | 入管法62条2項 |
日本での刑事処分は、中国の記録に残りますか
断定を避けます。無犯罪記録証明は中国の公安機関が自国の記録に基づき発行するもので、日本での処分がそこに登載される仕組みについて、公表された説明を確認していません。
日本側は確認できます。有罪判決を受ければ前科として記録され、不起訴でも捜査を受けた事実は前歴として残ります。退去強制なら出入国記録に残り、次の上陸審査で確認されます。
中国に帰ってから、中国で処罰されることはありますか
制度としては、その可能性を定めた規定が中国刑法にあります。中国刑法7条は、中国公民が国外で同法の罪を犯した場合に同法を適用するとしつつ、最高刑が3年以下の有期徒刑である罪は追及しないことができるとします。同法10条は、外国で裁判を受けていてもなお追及できるが、外国で既に刑罰を受けた場合は刑を免除または軽減できると定めています。
規定があることと実際に追及されることとは別であり、実際の運用については中国の弁護士にご相談ください。日本の側で申し上げられるのは、不起訴処分を得ておくことがその後の場面で有利に働くという一点です。令和7年版犯罪白書によれば令和6年の来日外国人の起訴猶予率は48.35%で、当事務所は不起訴処分の獲得を最優先とし、松村大介弁護士本人が接見から在留手続まで担当します。弁護士紹介もご覧ください。
よくある質問
不起訴になれば、報道は消えますか
自動的には消えません。報道機関の判断で削除されることはありますが義務ではなく、中国語サイトの転載記事は日本側が削除しても残ります。不起訴処分を示す資料を手元に置くと、後の説明で役立ちます。
退去強制されたことは、次に日本へ来るときに分かりますか
分かります。退去強制の事実は出入国記録に残り、上陸審査で確認されます。入管法5条1項9号により、退去強制を受けた方は退去の日から5年、過去にも退去強制歴がある方は10年、上陸を拒否されます。
中国の無犯罪記録証明に載りますか
断定できません。日本での処分がそこに登載される仕組みについて公表された説明はなく、中国の弁護士にご確認ください。
会社や家族に知られないようにする方法はありますか
完全に防ぐ方法はありません。ただ、身柄拘束の期間を短くすること、勤務先への説明の仕方を検討することで影響を小さくできる余地はあります。
次の査証申請で、逮捕されたことを申告する必要がありますか
該当する質問事項があれば正確に記載してください。事実と異なる記載は、後に偽りその他不正の手段として在留資格の取消し(入管法22条の4第1項)に発展する危険があります。退去強制・在留特別許可・監理措置もご参照ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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