刑事事件で捜査中に、永住許可や在留資格変更の申請はできますか
2026/09/05
逮捕された、あるいは在宅のまま捜査を受けている。そのさなかに在留期間の満了日が近づき、永住許可や在留資格の変更を予定していた。外国人の刑事事件では、このご相談が繰り返し寄せられます。申請を出してよいのか、出せば不利にならないか、処分を待つべきなのか。在留期間には期限があり、判断を先送りにできません。制度上できるかと、審査で何が見られるかを分けて考える必要があります。
本記事の要点
- 捜査中であることを理由に申請の受理を拒む規定は入管法になく、申請自体は可能です。
- 審査では素行が考慮されるため、刑事処分の結果が出るまで結論が出ず、長期化するのが通例です。
- 永住許可には入管法22条2項1号の素行が善良であることという要件があり、拘禁刑や罰金に処せられていないことが原則の基準です。
- 日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子は、22条2項但書により1号・2号への適合を要しません。
- 事件を伏せて申請すると、偽りその他不正の手段による許可として在留資格取消し(22条の4第1項1号)の対象となるおそれがあります。
結論:申請自体はできます。捜査中であることを理由に申請を受け付けない規定は入管法にありません。ただし審査では素行が要件とされるため、刑事処分の結果が出るまで審査は事実上進まず、結論まで数か月以上を要するのが通例です。
捜査中でも申請は受理されますか
受理されます。入管法は、在留期間の更新(21条)、在留資格の変更(20条)、永住許可(22条)のいずれについても、刑事手続の進行中であることを申請の障害としていません。もっとも受理と許可は別です。更新・変更は法務大臣が相当の理由があると認めるときに許可される裁量的な処分であり、永住許可には後述の要件があります。捜査中は刑事処分の結果を待つ扱いとなり、結論までに時間がかかります。外国人の刑事事件と在留を一体のものとして考える必要があるのは、このためです。
永住許可の素行が善良であることとは何を見る要件ですか
法令を遵守して生活しているかを見る要件で、入管法22条2項1号が定めています。出入国在留管理庁が公表する永住許可のガイドラインでは、日本国の法令に違反して拘禁刑や罰金に処せられたことがないことが原則的な基準とされ、少年時の非行歴や日常生活の違反行為も考慮されます。同項2号は独立の生計を営むに足りる資産又は技能を、3号は永住が日本国の利益に合すると認められることを求めています。ただし22条2項但書により、日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には、1号・2号への適合は要しません。したがって、捜査中の事件が不起訴で終わるか罰金以上の刑に至るかは、永住許可の可否に直接影響します。
在留期間の満了が近い場合はどうすればよいですか
満了日までに申請しておくことが重要です。満了日までに更新又は変更を申請し、満了日までに処分がされないときは、処分の日か、従前の在留期間の満了日から2か月を経過する日か、いずれか早い日まで従前の在留資格で在留できます(入管法20条5項、21条4項)。これを特例期間と呼びます。申請せずに在留期間が満了すると不法残留(24条4号ロ)となり、刑事事件とは別に退去強制手続の対象になります。
事件のことを申告しないで申請してもよいですか
申告しない選択は勧められません。入管法22条の4第1項1号は、偽りその他不正の手段により許可を受けたことを在留資格取消しの事由としており、刑事処分を伏せて許可を得ても後に取消しの対象となるおそれがあります。実務では、事実を正確に述べたうえで、事案の内容、被害弁償や示談の状況、再発防止の措置、監督体制を書面で示す方が有利に働きます。
申請を出すのと処分を待つのと、どちらがよいですか
刑事手続の段階によって判断が変わります。
| 刑事手続の段階 | 申請の可否 | 実務上の留意点 |
|---|---|---|
| 在宅で捜査中 | 可能 | 満了が近ければ期限内に申請し、事情説明書を添える |
| 逮捕・勾留中 | 可能(取次ぎによる) | 身柄の解放と申請期限の管理を並行して行う |
| 起訴後・公判中 | 可能 | 判決確定まで審査は進みにくい。特例期間の管理が必要 |
| 不起訴処分の後 | 可能 | 不起訴処分告知書を取得し、処分の内容を示す |
| 罰金・拘禁刑の確定後 | 可能 | 永住許可は素行要件が厳しい。更新・変更を先に検討する |
永住許可のように期限のない申請なら、刑事処分の結果が出てから申請する方が説明しやすい場合があります。一方、在留期間の更新には期限があり、待つという選択肢はありません。
不起訴になった場合はどう説明すればよいですか
不起訴処分告知書を取得し、処分の事実を客観的に示すのが基本です。検察官に請求すれば交付されます。不起訴は前科になりませんが、事件が存在した事実は残るため、経緯の説明を求められることがあります。
当事務所は、起訴前に不起訴処分を得ることを最優先の目標とし、刑事弁護と入管手続をワンストップで扱っています。執行猶予付きの判決でもなお在留を失う場面があるためです。中国人の刑事事件・在留のご相談や外国人刑事・在留Q&Aもご覧ください。
よくある質問
逮捕・勾留されていて出頭できない場合、家族が代わりに申請できますか
在留資格の申請は原則として本人が出頭して行いますが、地方出入国在留管理局長に届け出た取次者による取次ぎが認められています。受入れ機関の職員や登録支援機関のほか、所属弁護士会を経由して届け出た弁護士も取次ぎができます。
不起訴になれば素行の面で不利にはなりませんか
不起訴は有罪判決ではないため前科としては扱われません。もっとも、事件があったこと自体が申請書類や捜査の経過から明らかになることがあり、経緯や再発防止の説明を求められる場合があります。
罰金の前科が1件あると、永住許可はもう認められませんか
認められないと決まっているわけではありません。素行要件は前科の有無だけでなく、時期、内容、その後の生活状況を含めて判断されます。時期を選び資料を整えて申請することが重要です。
中国語で相談できますか
外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、微信(WeChat)で中国本国のご家族とも直接連絡できます。お問い合わせからご連絡ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
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