刑事処分の結果で在留資格はどうなりますか|不起訴・罰金・執行猶予・実刑の5類型
2026/09/05
執行猶予がついたのだから在留は大丈夫だ。中国語圏のご相談で最も多い誤解がこれです。同じ執行猶予でも、罪名と在留資格の組み合わせで結論は正反対になります。刑事処分は不起訴、罰金、全部執行猶予、一部執行猶予、実刑の五つに整理でき、入管法上の帰結もこの五類型ごとに分かれます。
本記事の要点
- 入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により全部執行猶予は除かれます。
- 薬物事犯は同条4号チにより有罪判決だけで該当し、罰金でも執行猶予でも同じで、在留資格の種類も問いません。
- 別表第一の方は、窃盗・詐欺・傷害・住居侵入・偽造などの列挙罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予でも同条4号の2に該当します。
- 退去強制事由に該当しても在留特別許可の余地は残りますが、認められるかどうかは個別の事情によります。
1. 不起訴になった場合、在留資格はどうなりますか
不起訴であれば、有罪判決を前提とする退去強制事由には該当しません。入管法24条の刑事罰関係の各号は、いずれも刑に処せられたこと、有罪の判決を受けたことを要件とするためです。令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%でした(法務省「令和7年版犯罪白書」)。
ただし留保が二つあります。第一に、更新や変更では素行が善良であることが審査され、不起訴でも事案の内容が考慮され得ます。第二に、不法就労助長に関する24条3号の4のように、刑事処罰を要件としない事由もあります(不法就労・オーバーステイ)。
2. 罰金で済んだ場合、退去強制されますか
一般の刑法犯であれば、罰金は退去強制事由に該当しません。24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑を、4号の2は拘禁刑に処せられたことを要件とするためです。
例外は薬物です。24条4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、覚醒剤取締法、麻薬特例法等に違反して有罪の判決を受けた者を対象とし、刑の種類を限定していません。理論上は罰金でも該当し、在留資格も問いません。入管法5条1項5号の薬物関係の上陸拒否にも期間の定めがなく、再入国は同法12条1項の上陸特別許可によるほかありません(外国人の薬物事件)。
3. 全部執行猶予がついた場合、在留は守られますか
ここが最も誤解の多いところです。全部執行猶予(刑法25条)がついても、在留が当然に守られるわけではありません。24条4号リの但書は全部執行猶予を除いていますが、除かれるのは4号リだけだからです。
技術・人文知識・国際業務、留学、家族滞在、技能実習などの別表第一の在留資格の方が、刑法の一定の章に掲げる罪により拘禁刑に処せられた場合は、24条4号の2に該当します。この号は執行猶予を除外していません。対象には住居侵入、通貨や文書などの偽造罪、賭博、殺人、傷害、逮捕監禁、略取誘拐、窃盗及び強盗、詐欺及び恐喝、盗品等に関する罪が含まれ、中国籍の方に多い窃盗と詐欺もこの列挙に入ります。
他方、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者という別表第二の方は、4号の2の適用から除かれています。同じ執行猶予判決でも結論が分かれるのはこのためです。令和6年の被告人通訳事件の全部執行猶予率は85.3%、入管法違反を除くと74.8%でした(前掲白書)。
4. 一部執行猶予の場合はどう扱われますか
一部執行猶予(刑法27条の2)では、判決が実刑部分と猶予部分に分かれます。24条4号リとの関係では、実刑として執行される部分が1年以下であれば但書により除かれます。もっとも4号の2や4号チは別の要件で動きますから、一部執行猶予なら安全という理解は成り立ちません。
実務上の頻度は高くありません。令和6年の被告人通訳事件の有罪人員4,388人のうち一部執行猶予は1人でした(前掲白書)。
5. 実刑になった場合、どの範囲で退去強制事由に該当しますか
1年を超える実刑は、24条4号リにより在留資格の種類を問わず該当し、永住者、定住者、日本人の配偶者等も例外ではありません。1年以下の実刑は同号に当たりませんが、別表第一の方が列挙罪で拘禁刑に処せられていれば4号の2により該当します。
令和7年の退去強制令書発付は単独事由の集計で7,722人ですが、4号リ単独は41人、4号チは86人、4号の2は49人にとどまり、5,778人は不法残留(4号ロ)です(出入国在留管理庁「出入国管理統計」)。ただし中国籍では、4号リ単独11人に不法残留との並立36人を加えた47人が発付総数686人の6.9%を占め、ベトナムの2.3%の約3倍です。
在留資格の種類によって結論はどう変わりますか
五類型と在留資格の組み合わせは次のとおりです。薬物事犯は別掲です。
| 刑事処分 | 別表第一(就労・留学・家族滞在等) | 別表第二(永住者・定住者等) |
|---|---|---|
| 不起訴 | 非該当(更新・変更の素行で考慮され得る) | 非該当 |
| 罰金・科料 | 非該当(更新・変更の不許可リスクは残る) | 非該当(永住者は更新が不要) |
| 全部執行猶予(列挙罪) | 24条4号の2に該当 | 非該当(4号の2の適用外) |
| 全部執行猶予(列挙外の罪) | 非該当(更新・変更の不許可リスクは大きい) | 非該当 |
| 一部執行猶予 | 実刑部分1年以下なら4号リの但書で除外。列挙罪なら4号の2に該当 | 実刑部分1年以下なら但書で除外 |
| 実刑1年以下(列挙罪) | 24条4号の2に該当 | 非該当(ただし更新は困難) |
| 実刑1年超 | 24条4号リに該当 | 24条4号リに該当 |
| 薬物事犯(罰金・執行猶予・実刑) | 24条4号チに該当 | 24条4号チに該当 |
退去強制事由に該当しても、そこで終わりではありません。令和7年の在留特別許可は審査824人、口頭審理29人、異議申出177人の合計1,030人でした(前掲統計)。入管法50条5項は考慮すべき事情を法定し、同条10項は不許可の場合に理由を付した書面の交付を定めています。もっとも許可されるかどうかは個別の事情によります(退去強制・在留特別許可・監理措置)。当事務所は刑事弁護の段階から入管手続を見据え、退去強制事由の該当性についても故意・過失の観点から争っています。
よくある質問
執行猶予の判決を受けた後、いつ入管の手続が始まりますか
身柄が釈放された後、入管の違反調査から始まるのが通常です。言渡しの段階で在留資格の種類と罪名を突き合わせ、24条のどの号が問題になるかを確認してください。
永住者でも退去強制されることがありますか
あります。24条4号リは在留資格の種類を問わないため、1年を超える実刑を受ければ永住者でも該当し、薬物事犯の4号チも同様です。他方、4号の2は別表第一の方に限られます。特別永住者については入管特例法22条により事由が極めて限定されています。
出国命令で帰国すれば、退去強制よりも軽く済みますか
要件を満たせばそうなりますが、要件は限定されています。入管法24条の3の出国命令は、24条4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことを要件の一つとするため、薬物事犯で4号チに該当する方は利用できません。
罰金なら在留期間の更新に影響しませんか
影響し得ます。退去強制事由に該当しないことと、更新が許可されることは別の問題です。更新は素行が善良であることを含む要件のもとで審査されます(外国人刑事・在留Q&A)。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。詳しくは中国人の刑事事件・在留のご相談をご覧ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
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