罰金刑でも強制送還されることはありますか|入管法24条4号チと4号リの違い
2026/09/05
罰金を納めて終わったのだから在留資格には影響しないはずだ。外国人の刑事事件では、こう考えて安心してしまう方が少なくありません。しかし入管法は、刑の重さだけで退去強制の可否を決めていません。罪名によっては罰金刑でも退去強制事由に該当し、逆に拘禁刑の判決でも該当しない場合があります。
本記事の要点
- 一般の刑事事件では、罰金刑は入管法24条の退去強制事由に該当しません。
- 薬物事件は例外で、24条4号チは有罪の判決のみを要件とするため、罰金刑でも執行猶予付き判決でも該当します。
- 24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に限られ、但書により全部執行猶予は除外されます。
- 不法就労助長のように、刑事処罰がなくても行為だけで該当する類型もあります(24条3号の4)。
- 退去強制事由に当たらない罰金でも、更新・変更・永住許可の審査では素行の面で不利に働きます。
結論:一般の刑法犯であれば、罰金刑だけで直ちに強制送還されることは通常ありません。しかし薬物事件は別で、入管法24条4号チは有罪の判決を受けたことのみを要件とするため、罰金刑でも退去強制事由に該当します。別表第一か別表第二かも問われず、永住者も対象です。
そもそも罰金刑は退去強制事由になりますか
薬物事件を除けば、罰金刑は退去強制事由になりません。条文が刑の種類を限定しているからです。24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑を要件とし、別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、留学、家族滞在など)に適用される24条4号の2も、窃盗・詐欺・傷害・住居侵入・文書偽造などの列挙された罪による拘禁刑を要件とします。いずれも罰金は含まれません。外国人の刑事事件と在留は、この号ごとの構造を押さえることから始まります。
薬物事件はなぜ罰金でも強制送還の対象になるのですか
薬物事件だけは条文の作りが違うためです。入管法24条4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法などに違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由と定めています。刑の種類も重さも要件ではないため、罰金刑でも、全部執行猶予付きの判決でも、刑が免除された場合でも該当します。在留資格の別も問われず、永住者や定住者でも同じです。出国命令(24条の3)も4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことが要件のため、4号チに該当する方は利用できません。外国人の薬物事件で起訴前の不起訴処分獲得が決定的に重要なのは、このためです。
罰金刑と退去強制事由の関係を整理するとどうなりますか
| 罪名の類型 | 罰金刑 | 拘禁刑・全部執行猶予 | 1年を超える実刑 |
|---|---|---|---|
| 薬物(覚醒剤・大麻・麻薬等) | 該当(4号チ) | 該当(4号チ) | 該当(4号チ) |
| 窃盗・詐欺・傷害・偽造等(別表第一) | 非該当 | 該当(4号の2) | 該当(4号の2・4号リ) |
| 窃盗・詐欺・傷害・偽造等(別表第二) | 非該当 | 非該当 | 該当(4号リ) |
| 過失運転致死傷・性犯罪等 | 非該当 | 非該当 | 該当(4号リ) |
| 不法就労助長 | 該当(3号の4) | 該当 | 該当 |
不法就労助長は刑事処罰がなくても行為のみで該当します。非該当とあるものも、更新や変更の審査では不利に働きます。
1年を超える実刑という基準はどのように働きますか
24条4号リは実刑判決に限られます。同号の但書により全部執行猶予の言渡しを受けた場合は除外され、一部執行猶予も実際に服する部分が1年以下なら該当しません。1年ちょうどの実刑も該当しません。この号は在留資格を問わず適用され、永住者でも1年を超える実刑なら該当します。もっとも、定着性や家族関係を理由に在留特別許可を求める余地は残り、許可されるかどうかは個別事情によります。
令和7年に4号リのみを理由として退去強制令書が発付されたのは全国で41人(うち中国籍11人)、他の事由と並立するものを含めても204人です。同年の令書発付の多数は不法残留であり、刑事事件を起こせば直ちに送還されるという理解は正確ではありません。
刑罰を受けていなくても強制送還されることはありますか
あります。代表例が不法就労助長です。入管法24条3号の4は、事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた者などを退去強制事由としており、刑事処罰を受けたことを要件としていません。不起訴でも罰金でも、行為そのものが認定されれば退去強制手続の対象になり得ます。不法就労・オーバーステイの事案では、刑事事件と入管手続を同時に見据えた対応が必要です。
罰金で終わった場合、その後の在留はどうなりますか
退去強制事由に該当しなくても、在留を失う経路がもう一つあります。在留期間の更新・在留資格の変更・永住許可の審査です。これらの審査では素行が考慮され、罰金の前科は不利な事情として扱われます。別表第一の有期の在留資格では、更新が認められなければ在留期間の満了で在留を失います。永住許可については、入管法22条2項1号が素行が善良であることを要件とし、拘禁刑や罰金に処せられていないことが原則的な基準とされています。中国人の刑事事件・在留のご相談では、刑事弁護と入管手続を切り離さずに扱っています。
よくある質問
薬物事件で罰金になることは実際にありますか
覚醒剤や大麻の所持・使用には罰金の選択刑がなく、罰金で終わることは想定しにくい類型です。重要なのは、条文が刑の種類を問わない以上、全部執行猶予付きの判決でも4号チに該当する点です。
交通事故で罰金になりました。強制送還されますか
過失運転致死傷罪は24条4号の2の列挙になく、罰金なら退去強制事由に該当しません。ただし危険運転致死傷罪は同号の対象で、別表第一の方が拘禁刑に処せられた場合は執行猶予付きでも該当します。
罰金の前科があると、日本に再入国できませんか
入管法5条1項4号の上陸拒否は1年以上の拘禁刑を対象とし、罰金は含まれません。ただし薬物は5条1項5号が別に定め、罰金でも外国の法令違反でも対象となり、期間の定めがありません。再入国には12条1項の上陸特別許可が必要です。
家族が中国にいます。日本語がわからなくても相談できますか
外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、微信(WeChat)で中国本国のご家族と直接やり取りしています。お問い合わせからご連絡ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
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