舟渡国際法律事務所

出国命令と退去強制はどう違うのか|要件・手続と上陸拒否期間1年・5年・10年

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出国命令と退去強制はどう違うのか|要件・手続と上陸拒否期間1年・5年・10年

出国命令と退去強制はどう違うのか|要件・手続と上陸拒否期間1年・5年・10年

2026/09/05

在留期間が過ぎてしまった方から、自分から入管へ出頭したほうがよいのか、それとも黙っているほうがよいのかというご相談をよく受けます。判断の分かれ目になるのが、出国命令と退去強制のどちらの手続に乗るかです。収容されるかどうか、次に日本へ来られるまで何年待つのか、その差は小さくありません。本記事では入管法の条文に沿って、両者の要件・手続・上陸拒否期間を対比します。

本記事の要点

  • 出国命令は収容されずに出国する手続で、上陸拒否期間は1年です。
  • 退去強制は収容を伴い得る手続で、上陸拒否期間は原則5年、2回目以降は10年です。
  • 出国命令には入管法24条の3の要件がすべて必要で、自ら出頭したことが出発点です。
  • 薬物で有罪判決を受けた方は24条4号チに該当するため、出国命令は使えません。
  • 出国期限内に出国しなければ命令は取り消され、退去強制手続へ移ります。

出国命令と退去強制は、何がどう違いますか

大きな違いは三つです。身柄を収容されるかどうか、上陸拒否期間が1年か5年以上か、そして自ら出頭したかどうかです。

項目出国命令退去強制
対象不法残留等で入管法24条の3の要件をすべて満たす方同法24条各号の退去強制事由に該当する方
身柄収容令書の発付を受けずに手続が進む収容令書・退去強制令書による収容があり得る
出国の形期限を定めた出国命令を受けて自ら出国退去強制令書により送還される
上陸拒否期間1年(同法5条1項9号ロ)原則5年、過去に退去強制等があれば10年(同号ハ・ニ)
費用自費出国が前提自費出国のほか国費送還もある

出国命令を受けられるのは、どのような人ですか

不法残留などに当たる方のうち、入管法24条の3が定める要件をすべて満たす方に限られます。ひとつでも欠ければ、通常の退去強制手続になります。

  1. 速やかに出国する意思をもって、自ら入国管理官署に出頭したこと
  2. 不法残留等以外の退去強制事由(同法24条4号ハからヨまで等)のいずれにも該当しないこと
  3. 入国後に窃盗・強盗・傷害・詐欺・文書偽造などの一定の罪により拘禁刑に処せられていないこと
  4. 過去に退去を強制されたこと、又は出国命令により出国したことがないこと
  5. 速やかに出国することが確実と見込まれること

三つ目の要件は、執行猶予付きの判決であっても満たさなくなり得る点に注意が必要です。他の事件も抱えている場合、出頭の前に整理しておくべき論点は少なくありません。オーバーステイのページも併せてご覧ください。

薬物事件で有罪になった場合も、出国命令を使えますか

使えません。薬物の有罪判決を受けた方は入管法24条4号チに該当し、二つ目の要件を満たさなくなるからです。同号は有罪判決を受けたこと自体で足り、罰金でも執行猶予でも、在留資格の種類も問いません。

さらに薬物については、上陸拒否事由を定める同法5条1項5号に期間の定めがありません。年数の経過によって解けるものではなく、再び入国するには同法12条1項の上陸特別許可によるほかないという構造です。詳しくは外国人の薬物事件で整理しています。

上陸拒否期間は、どのくらい違いますか

出国命令なら1年、退去強制なら原則5年です。過去に退去強制されたか出国命令で出国したことがある方は10年になります。

出国のしかた上陸拒否期間根拠
出国命令により出国1年入管法5条1項9号ロ
退去強制(初回)5年同項9号ハ
退去強制(過去に退去強制又は出国命令による出国あり)10年同項9号ニ
薬物の有罪判決期間の定めなし同項5号

一度出国命令で出国した方が再びオーバーステイをすると、二度目は出国命令を使えず、退去強制となれば10年です。

出国命令の手続は、どう進みますか

自ら出頭したうえで違反調査を受け、入国審査官の審査を経て、主任審査官が出国命令を出します。収容令書の発付を受けずに進むのが特徴です。出国期限は15日を超えない範囲で定められ(入管法55条の3)、住居や行動範囲の制限などの条件が付されることがあります。

この15日は航空券の手配、就労先の精算、住居の解約を含めた期間です。出頭の前に段取りを組んでおく必要があるのは、このためです。

出国命令が取り消されることはありますか

あります。出国期限内に出国しなかったとき、又は付された条件に違反したときは、出国命令が取り消されます(入管法55条の6)。その場合は通常の退去強制手続に移り、収容の可能性が生じ、上陸拒否期間も5年になります。

体調不良や航空便の事情で期限に間に合わないおそれがあるときは、放置せず事前に入管へ相談してください。

実際に、どのくらいの人が出国命令で出国していますか

相当数にのぼります。出入国在留管理庁の統計によれば、令和6年に退去強制手続等を執った者は18,908人で、うち出国命令手続によるものが10,131人でした。国籍・地域別ではベトナム6,996人、タイ3,400人、中国1,929人です。

また令和7年の出入国管理統計では、審査の段階で出国命令が交付された人員は9,807人でした。出国命令は例外的な扱いではなく、要件を満たす方には現に広く用いられている手続だといえます。

出頭する前に、弁護士に相談する意味はありますか

あります。出国命令は日本を離れることを前提とする手続であり、在留を続ける道とは方向が逆だからです。日本人の配偶者やお子さんがいる方、生活の基盤が長く日本にある方は、退去強制手続の中で在留特別許可を求める選択肢を先に検討すべき場合があります。許否は個別の事情によりますが、出国命令で出てしまえば検討の機会自体が失われます。

当事務所は刑事事件と入管手続をワンストップで扱い、松村弁護士が出頭の同行から手続の終了まで直接対応します。退去強制事由の判断についても故意・過失の有無を争うべきだと主張し、不法就労助長罪が認定された事件で在留特別許可を得た実績もあります。中国語でのご相談は中国人の刑事事件・在留のご相談から承ります。

よくある質問

出国命令で帰った場合、1年たてば必ず再入国できますか

上陸拒否期間が1年であることと、査証が発給されることは別の判断です。期間の経過は必要条件にすぎず、再入国が保証されるわけではありません。

不法就労していた場合も出国命令を使えますか

資格外活動の罪により拘禁刑に処せられていれば要件を欠きます。事案の内容によって結論が変わりますので、出頭前の確認が必要です。不法就労・オーバーステイもご覧ください。

出国命令を受けた後で、やはり在留したいと言えますか

出国命令は出国を前提とする処分です。在留特別許可を求めるのであれば、その前の段階で方針を決めておく必要があります。

収容されるかどうかは、どの段階で決まりますか

出国命令の対象となる方は収容令書の発付を受けずに手続が進みます。要件を欠く場合は収容の可能性が生じますが、令和6年6月から始まった監理措置により収容されない扱いもあります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

本記事は2026年9月時点の情報です。

中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。

執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。

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