国選弁護人と私選弁護人は何が違いますか|外国人の刑事事件における選任時期・職務範囲・通訳の比較
2026/09/05
国選と私選のどちらを選ぶべきかというご質問を、中国のご家族から毎週のようにいただきます。前提として、国選弁護人も私選弁護人も同じ資格を持ち、同じ職務上の義務を負って職務にあたります。ここで述べるのは、弁護士個人の姿勢の話ではなく、二つの制度の設計がどこで違うかという話です。外国人の刑事事件では、この設計の差が結果に直結する場面があります。
本記事の要点
- 被疑者国選弁護は勾留状が発せられた後に付されます(刑事訴訟法37条の2)。逮捕から勾留決定までは空白の期間です。
- 国選には資力の基準額50万円という要件があり、弁護人を選ぶことはできません。私選には要件がありません。
- 国選の費用は国が負担しますが、有罪判決の場合に訴訟費用の負担を命じられることがあります(同法181条)。
- 国選弁護人の職務は当該刑事事件に限られ、退去強制手続や在留特別許可の申請は別の委任が必要です。
- 私選弁護人が選任されると、国選弁護人は解任され得ます(同法38条の3第1項1号)。
制度としていちばん大きな違いは何ですか
選任される時期と、職務の範囲です。費用の負担者よりも、この二つが外国人事件では効いてきます。
| 比較軸 | 国選弁護人 | 私選弁護人 |
|---|---|---|
| 選任の時期 | 勾留状の発付後(被疑者国選)、起訴後(被告人国選) | 逮捕前の任意の段階から可能 |
| 要件 | 勾留等に加え、資力の基準額50万円 | 要件なし |
| 弁護人を選べるか | 選べない | 依頼者が選ぶ |
| 費用 | 国が負担。有罪なら訴訟費用の負担を命じられることがある | 依頼者が負担 |
| 職務の範囲 | 当該刑事事件 | 委任の範囲。入管手続も含められる |
| 通訳の手配 | 制度の枠内での対応 | 弁護人側で独自に手配できる |
| 交代 | 私選が付けば解任され得る | いつでも選任できる |
弁護人はいつから付きますか
結論として、逮捕から勾留が決まるまでの数日間、国選弁護人は付きません。この期間を埋められるのは当番弁護士と私選弁護人だけです。
| 段階 | 当番弁護士 | 国選弁護人 | 私選弁護人 |
|---|---|---|---|
| 逮捕直後(最大72時間) | 原則1回、無料 | 付かない | 選任できる |
| 勾留中(最大20日) | ― | 被疑者国選(刑訴法37条の2) | 選任できる |
| 起訴後 | ― | 被告人国選(同法36条) | 選任できる |
| 退去強制手続 | ― | 対象外 | 委任があれば対応 |
逮捕直後の数日は、供述の方向がほぼ決まってしまう時期です。中国語での取調べが通訳を介して行われ、日本語の調書に署名する場面もこの時期に集中します。外国人刑事・在留Q&Aもご参照ください。
弁護人を選ぶことはできますか
国選では選べません。裁判所が弁護士会の名簿に基づいて選任するため、外国人事件の経験や中国語の対応体制を条件として指名することはできません。私選では、依頼者が弁護士を選んで委任します。
なお、私選弁護人が選任されて弁護人を付す必要がなくなったときは、国選弁護人は解任され得ます(刑事訴訟法38条の3第1項1号)。途中から私選に切り替えることは可能です。
費用は誰が負担しますか
国選の弁護費用は国が負担します。ただし、無条件に無料というわけではありません。刑事訴訟法181条1項は、刑の言渡しをしたときは被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させると定めており、貧困のため納付できないことが明らかな場合を除き、国選弁護人の報酬等が被告人の負担となることがあります。
私選の場合は依頼者の負担です。中国のご家族から費用を送金される場合、国際送金には日数と書類を要しますので、受任後すぐに経路をご案内しています。刑事と在留の関係は外国人の刑事事件と在留にまとめています。
中国語の通訳の扱いはどう違いますか
捜査機関の通訳人と裁判所の通訳人は、いずれも制度として用意されます。他方、弁護人と依頼者の打合せに立ち会う通訳を弁護人側で確保できるかどうかは、選任の形態によって現実に差が出ます。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、ご本人のために動く立場の通訳が接見に同席します。供述調書の言い回しが故意の認定を左右する外国人事件では、この体制が実質的な意味を持ちます。
退去強制や在留特別許可まで、同じ弁護士に頼めますか
国選弁護人の職務は、その刑事事件についてのものです。刑事手続が終わった後の退去強制手続、在留特別許可の申請、監理措置の申立ては別の手続であり、続けて依頼する場合は改めて委任することになります。
当事務所は、受任した時点で入管法24条のどの号が問題になるのかを特定し、そこから逆算して刑事弁護を設計します。執行猶予でも在留を失う類型があるため、目標は執行猶予ではなく起訴前の不起訴処分です。退去強制事由の判断についても、制裁的な行政処分に責任主義の射程が及ぶべきであるとの主張を、係争中の論点として展開しています。松村大介弁護士本人が接見から入管手続まで全工程を直接担当し、微信(WeChat ID:matsumura1119)で中国本国のご家族とも直接連絡できます。不法就労助長罪が認定された事件で在留特別許可を得た実績もありますが、事件ごとに事情が異なり、同じ結果を保証するものではありません。ご相談は中国人の刑事事件・在留のご相談から承ります。
よくある質問
資力が50万円以上あると、国選弁護人は付きませんか
その場合は、あらかじめ弁護士会に私選弁護人選任の申出をしていることが前提となります。手続には時間がかかりますので、資力がある場合は早めに私選での選任をご検討ください。
いま国選弁護人が付いていますが、私選に変えられますか
変えられます。私選弁護人が選任されると、弁護人を付す必要がなくなったものとして国選弁護人が解任され得ます。引継ぎのため、記録の状況を確認したうえで進めます。
必要的弁護事件とは何ですか
死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘禁刑に当たる事件では、弁護人がいなければ開廷できません(刑事訴訟法289条)。中国籍の方の事件では、薬物の営利目的や特殊詐欺の類型がこれに当たることがあります。
中国にいる家族が、日本の弁護士に直接依頼できますか
できます。配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は独立して弁護人を選任できます。当事務所では微信でのやり取りに対応しています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的なご事情は弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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