日本の起訴後保釈と中国の取保候审はどう違うのか|外国人の保釈が難しい理由
2026/09/05
ご家族が起訴されたと知ったとき、まず尋ねられるのが、保釈でいくら積めば出られるのかというご質問です。中国の取保候审を思い浮かべての問いなのですが、日本の保釈は使える時期も判断の枠組みも異なります。しかも外国籍の方の場合、保釈が認められても、その場で入管に身柄を取られることがあります。本記事では、両制度の違いと、外国人の保釈が難しくなる三つの理由を条文に沿って整理します。
本記事の要点
- 日本の保釈は起訴された後にしか請求できず、捜査段階には制度がありません。
- 刑事訴訟法89条は権利保釈の除外事由を定め、住居不明はその一つです。
- 外国人事件では住居・身元引受人・旅券の三点が実務上の壁になります。
- 保証金の額に一律の基準はなく、裁判所が資力等を考慮して定めます。
- 保釈されても退去強制事由に該当すれば、収容令書により入管に収容され得ます。
日本に取保候审に当たる制度はありますか
最も近いのは起訴後の保釈ですが、使える時期が違います。中国の取保候审が捜査段階から用いられるとされるのに対し、日本の保釈は起訴されるまで請求できません(刑事訴訟法207条1項ただし書)。
| 項目 | 日本の起訴後保釈 | 中国の取保候审(一般的な説明) |
|---|---|---|
| 使える時期 | 起訴された後の被告人のみ | 捜査の段階から用いられるとされる |
| 判断する機関 | 裁判所 | 公安機関・検察機関・裁判機関とされる |
| 担保 | 保証金(刑事訴訟法93条) | 保証金又は保証人によるとされる |
| 判断の枠組み | 権利保釈の除外事由(同法89条)と裁量保釈(同法90条) | 刑の見込みや社会的危険性等を考慮するとされる |
| 期間 | 判決の確定まで | 上限が設けられているとされる |
中国の制度は改正もあり得ますので、中国法上の取扱いは中国の弁護士にご確認ください。日本側の見通しは外国人刑事・在留Q&Aもご覧ください。
保釈はどのような場合に認められますか
請求があれば原則として許可されますが、刑事訴訟法89条が定める六つの除外事由のいずれかに当たると、権利としての保釈は認められません。その場合でも、裁判所は同法90条により裁量で保釈を許すことができます。
| 刑事訴訟法89条の除外事由 | 外国人事件で問題になりやすい点 |
|---|---|
| 一定の重い罪を犯したものであるとき(1号〜3号) | 罪名によっては入口で外れる |
| 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由(4号) | 共犯者や通訳を介した口裏合わせを懸念されやすい |
| 被害者・証人に害を加えるおそれ(5号) | 同居・同僚関係の事件で問題になる |
| 氏名又は住居が分からないとき(6号) | 住居不定・寮の退去済みの場合に直接当たり得る |
外国人の保釈は、なぜ難しいのですか
住居、身元引受人、旅券の三点が壁になるからです。なお、保釈の許否について国籍別の統計は公表されておらず、外国人が不利であることを公的な数字で示すことはできません。以下は実務上の整理です。
第一に住居です。保釈には制限住居が定められ(刑事訴訟法93条3項)、裁判所の許可なくそこを離れることはできません。勤務先の寮に住んでいた方が逮捕により退去となっている場合、まず住む場所を確保しなければ請求の前提を欠きます。第二に身元引受人です。日本にいて本人の出頭を確保できる立場の方が必要で、中国本国のご家族では役割を果たせません。在留資格のある親族、雇用主、支援者を探すことになります。
第三に旅券です。逃亡のおそれの評価に直結するため、実務では弁護人が旅券を預かり、その旨を裁判所に上申します。出頭の確約、無断転居の禁止、連絡方法の確保を具体的に示し、逃亡のおそれが抽象的な懸念にとどまることを説明していきます。
保釈保証金はいくらになりますか
一律の基準はありません。保証金の額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力、被告人の性格及び資産を考慮し、出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとされます(刑事訴訟法93条2項)。金額を先に決めてから動くという発想は現実的ではありません。
保証金は、判決が確定して手続が終われば返還されます。逃亡したり制限住居を無断で離れたりすれば没取され得ます。取保候审の保証金と役割は似ていますが、日本では裁判所が個別に金額を定めます。
保釈が認められれば、そのまま自由になれますか
そうとは限りません。退去強制事由に該当する方は、刑事施設を出たところで入国警備官に引き渡され、収容令書により入管の施設に収容されることがあるからです。ご家族から見れば、出られたはずなのに帰ってこないという事態です。
特に、オーバーステイの方、薬物の有罪判決を受けた方(入管法24条4号チ)、別表第一の在留資格で窃盗・詐欺・傷害・文書偽造などの列挙罪により拘禁刑に処せられた方(同条4号の2)は、刑事の身柄と入管の身柄を切り離して考えることができません。この場面では監理措置の申立てを同時に準備します。詳しくは退去強制・在留特別許可・監理措置をご覧ください。
保釈中に中国へ帰国できますか
できません。保釈には制限住居が定められ、裁判所の許可なく住居を離れることはできません。無断で出国すれば保釈は取り消され、保証金も没取され得ます。
親族の危篤などやむを得ない事情がある場合は、弁護人を通じて裁判所に説明し許可を求めるほかありません。自己判断で動かないことが重要です。
保釈より前に、何を目指すべきですか
起訴前の不起訴処分です。保釈は起訴を前提とする手続であり、その時点で在留への影響は既に動いています。執行猶予判決を得ても、薬物事件なら入管法24条4号チ、別表第一の方の列挙罪なら同条4号の2により退去強制事由に該当し得るからです。
当事務所は逮捕直後から示談・被害弁償・環境調整を組み立て、起訴前の不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えています。刑事弁護と入管手続は同じ弁護士が一貫して担当し、保釈の準備と監理措置・在留特別許可の準備を同じ資料の上で進めます。ご相談は中国人の刑事事件・在留のご相談から承ります。
よくある質問
起訴される前に保釈を請求できますか
できません。保釈の規定は被疑者段階に準用されないため(刑事訴訟法207条1項ただし書)、勾留請求への意見、準抗告、勾留の取消し・執行停止で争うことになります。
身元引受人が見つからない場合はどうなりますか
出頭の確保を裏づける事情が弱くなるため、許可は得にくくなります。勤務先や支援団体を含め、どなたにお願いできるかを早い段階で検討します。
保釈中に働けますか
制限住居や条件の範囲内であれば就労できる場合があります。ただし在留資格が失われていれば別の問題が生じ、入管手続と併せた確認が必要です。
保釈が認められなかった場合、争えますか
保釈請求を却下する裁判に対しては不服申立てができます。事情の変化があれば、改めて請求することも可能です。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。中国法上の取扱いは中国の弁護士にご確認ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
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