送還停止効とは|難民認定申請中の送還停止と令和5年改正の例外
2026/09/04
送還停止効とは、難民認定申請をしている外国人について、その申請に対する処分が確定するまでの間、送還が停止される効果をいう。迫害のおそれのある国へ送り返してはならないという国際法上の要請を、国内の手続の中で担保するための仕組みである。令和5年改正入管法により例外が設けられ、令和6年6月10日から施行されている。
この記事の要点
- 難民認定申請中は、原則として退去強制令書があっても送還されない。
- 令和5年改正により、3回目以降の申請などについて送還停止効が及ばない場合が定められた。
- 3回目以降の申請でも、難民等と認定すべき相当の理由がある資料を提出すれば停止効は維持される。
- 重い刑に処せられた者やテロリスト等についても、例外が定められている。
- 例外に当たるかどうかは、申請の準備段階で必ず確認しておくべき事項である。
送還停止効とは何か
送還停止効とは、難民認定の手続が続いている間、送還の実施を止める効果である。保護を求めている者を、その判断が終わらないうちに送り返してしまえば、手続そのものが意味を失うためである。
この考え方の背景には、迫害のおそれのある領域へ人を追放し、又は送還してはならないという国際法上の原則がある。日本の入管法も、難民認定申請中は送還しないという形でこれを取り入れてきた。退去強制令書が発付されていても、申請中は送還が実施されないのが原則である。
送還停止効はいつまで続くか
停止は、難民認定申請に対する処分が確定するまで続く。
したがって、不認定処分を受けた後でも、審査請求をしている間は手続が続いているため、原則として送還は実施されない。審査請求に対する裁決がされ、これが確定した段階で停止効は終わる。その後は送還が可能な状態となるため、訴訟を提起して執行停止を申し立てるかどうかを、速やかに判断する必要がある。
令和5年改正でどのような例外が設けられたか
改正により、一定の場合には申請中であっても送還が停止されないこととされた。
| 場面 | 送還停止効 |
|---|---|
| 1回目又は2回目の難民認定申請 | 及ぶ |
| 3回目以降の申請で、難民等と認定すべき相当の理由がある資料を提出した場合 | 及ぶ |
| 3回目以降の申請で、そのような資料の提出がない場合 | 及ばない |
| 無期又は3年以上の拘禁刑に処せられた者 | 及ばない |
| テロリスト等として定められた者 | 及ばない |
3回目以降の申請では、資料をどこまで提出できるかが送還の可否そのものを左右する。単に前回と同じ事情を繰り返すのではなく、新たな資料や事情の変化を示すことが求められる。
例外に当たる場合はどうなるか
送還停止効が及ばない場合には、難民認定の判断を待たずに送還の手続が進みうる。
この場合、実際上とりうる手段は限られる。退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起し、行政事件訴訟法25条に基づく執行停止を申し立てて、裁判所の判断を求めることが中心となる。緊急性が高いため、事前に資料を整えておかなければ間に合わないことがある。改正により、退去を命ずる制度とこれに従わない場合の罰則も設けられており、対応の選択肢は一層限られている。
送還停止効をめぐってはどのような議論があるか
例外の導入については、迫害のおそれのある国へ送還してはならないという原則との関係で、懸念が示されてきた。
申請の回数という形式的な基準によって保護の判断が終わる前に送還が可能となることについては、国内外から批判がある。他方で、制度の濫用を防ぐ必要があるという説明もされてきた。実務としては、3回目以降の申請となる方について、どのような資料が相当の理由を示すものとして評価されうるかを、早い段階から検討しておくほかない。
外国人の刑事事件で送還停止効が問題になるのはどのような場面か
実刑判決を受けた方については、刑の重さそのものが送還停止効の例外に直結する。
無期又は3年以上の拘禁刑に処せられた場合には、難民認定申請中であっても送還が停止されない扱いとなる。刑事弁護における量刑の見通しが、保護を求める手続の実効性にまで及ぶことになる。難民認定申請や補完的保護対象者の認定を求める予定がある場合には、刑事手続の段階から全体の見通しを立てておく必要がある。
よくあるご質問
Q1 申請すれば必ず送還されませんか。
必ずとは言えません。令和5年改正により、3回目以降の申請や重い刑に処せられた場合など、送還停止効が及ばない場面が定められています。ご自身が例外に当たらないかを確認する必要があります。
Q2 3回目の申請でも送還を止められますか。
難民等と認定すべき相当の理由がある資料を提出した場合には、停止効が維持されます。前回までに提出していない資料や、その後の事情の変化を具体的に示せるかどうかが分かれ目になります。
Q3 審査請求をしている間は送還されませんか。
手続が続いている間は原則として送還されません。ただし例外に当たる場合は別です。裁決が確定した後は送還が可能な状態になりますので、その前に次の手段を検討しておく必要があります。
Q4 送還されそうになったら何ができますか。
退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起し、あわせて執行停止を申し立てる方法があります。時間的な余裕がないことが多いため、資料の準備を先行させておくことが重要です。
Q5 刑事事件の判決は影響しますか。
影響します。無期又は3年以上の拘禁刑に処せられた場合には、申請中であっても送還停止効が及ばないとされています。量刑の見通しは、保護を求める手続にも直結します。
おわりに
送還停止効は、判断が終わらないうちに送り返されない、という当たり前を支える仕組みです。例外が設けられたことにより、いつ送還されうるのかを自分で把握しておかなければならなくなりました。回数や刑の重さによって扱いが変わりますので、まずご自身の状況がどこに位置するのかを確認してください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
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