舟渡国際法律事務所

空き家・工事現場への立入りと窃盗(刑法130条、235条)、共犯からの離脱と在留資格への影響

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空き家・工事現場への立入りと窃盗(刑法130条、235条)、共犯からの離脱と在留資格への影響

空き家・工事現場への立入りと窃盗(刑法130条、235条)、共犯からの離脱と在留資格への影響

2026/09/05

交流サイトの「短時間で高収入」という募集に応じ、指示された空き家や工事現場へ行き、金属や資材を運んだ。ご相談では「見張りをしていただけです」「車を運転していただけです」というお話をよく伺います。近時、こうして集められた方々が空き家や工事現場から金属類や資材を持ち出したとされる類型の摘発も報じられております。本記事では、共犯としての責任の範囲、途中でやめた場合の評価、在留への影響を整理いたします。

本記事の要点

  • 見張りや運転しか担当していなくとも、刑法60条の共同正犯として同じ責任を問われることがあります。
  • 空き家や工事現場への立入りは刑法130条に当たり得ますが、管理の実態が乏しければ該当性が争点です。
  • 途中でやめたという主張は、実行の着手の前か後かで評価が大きく変わります。
  • 別表第一の在留資格の方は、入管法24条4号の2により、執行猶予付きの拘禁刑でも退去強制事由に該当し得ます。

1 「見張りだけ」「運転だけ」でも共同正犯になり得ます

刑法60条は、二人以上共同して犯罪を実行した者はすべて正犯とすると定めています。実務では、自ら持ち出す行為を分担していなくとも、事前の意思の連絡に基づいて重要な役割を果たしたと評価されれば、共同正犯としての責任が認められます。見張りは発覚を防ぐ役割、運転は現場への到達と搬出を可能にする役割ですから、軽い関与とは扱われません。争うべきは、どの範囲の合意があり、報酬の約束がどうで、現場に着くまでに何を知らされていたかという点です。

2 空き家・工事現場に立ち入る行為(刑法130条)

刑法130条は、正当な理由がないのに、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した者を、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処すると定め、同法132条により未遂も処罰されます。空き家であっても、施錠がされ定期的に管理されていれば、人の看守する邸宅などに当たると評価され得ます。工事現場も、囲いがあり出入口が管理されていれば同様です。逆に管理の実態が失われていれば該当性が争点となります。

3 窃盗、実行の着手と未遂

刑法235条は、他人の財物を窃取した者を10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定め、同法243条により未遂も処罰されます。実行の着手をどこに見るかは、財物に対する事実上の支配を侵す現実的な危険が生じたといえるかによります。敷地に立ち入った段階か、物を探し始めた段階か、資材の切断に取りかかった段階か。この区別は、次の離脱の評価にも直結します。

4 共犯関係からの離脱をどう主張するか

「怖くなって途中で帰りました」というお話も多く伺いますが、途中でやめた事実がそのまま責任の否定につながるわけではございません。実行の着手より前に離脱するには、他の関与者に離脱の意思を伝えて了解を得るなどして、自らが与えた影響を取り除いたといえることが必要と考えられています。着手の後は、単に立ち去るだけでは足りず、結果の発生を防ぐ積極的な措置を取ったかが問われます。道具を持ち帰ったか、通信の記録に何が残っているかも結論を左右しますので、不安から記録を消すことは避けてください。

5 金属類を扱う場面に加わった規制

盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(令和7年法律第75号)22条は、指定金属切断工具を隠して携帯する行為の禁止に違反した者を、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処するとしています。指定金属切断工具は、ケーブルカッターやボルトクリッパーその他、政令で定められた工具です。入管法24条4号の2は、この罪も列挙しています。

6 逮捕からの72時間と接見等禁止

この類型では、現行犯逮捕のほか、防犯カメラの映像や通信記録の解析を経て後日逮捕される例も見られます。逮捕後、警察は48時間以内に検察官へ事件を送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するか釈放するかを判断します。合わせて72時間です。勾留は原則10日間、延長で更に10日間続きます。共犯者がいる事件では接見等禁止が付されることも多く、自由に会えるのは弁護人だけになります。

7 在留資格への影響(最も注意を要する点)

この類型で最も注意を要するのは、執行猶予付きの判決を得ても在留資格を失う場合があることです。

  • 入管法24条4号の2 別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習、留学、家族滞在等)の方が、刑法第2編第12章(住居を侵す罪)、第36章(窃盗及び強盗の罪)などの罪により拘禁刑に処せられたときは、退去強制事由に該当します。刑期による限定がなく、執行猶予でも該当し得ます。
  • 入管法24条4号リ 無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者。全部執行猶予は除かれます。別表第二の在留資格(永住者、日本人の配偶者等、定住者等)の方は4号の2の対象ではないため、主にこの号が問題となります。
  • 入管法21条3項・22条の4 更新は相当の理由があるときに限り許可でき、在留資格に応じた活動を行わない期間が生じれば取消しも問題となり得ます。

ご自身の在留資格が別表第一と別表第二のいずれに属するのかを、最初にご確認ください。

8 不起訴処分を最優先の目標に据える理由

留学や就労資格でお住まいの方にとって、執行猶予判決は在留の維持を意味いたしません。目標は起訴前の不起訴処分に置かざるを得ず、被害の弁償と示談、共謀の範囲の限定、役割の軽重と離脱を客観的資料で示すことが柱になります。いずれも検察官が処分を決める前に形にする必要がございます。

9 初動でお願いしたい三つのこと

  • 黙秘権を行使する 役割や認識の説明は、事実関係を弁護人と確認してからで足ります。「軽く考えていた」というご説明が、共謀を認めた供述として記録される例が見られます。
  • 早期に弁護人を選任する 接見等禁止が付けば、外部と連絡が取れるのは弁護人だけです。
  • 通訳の質を確かめる 役割の説明や離脱の経緯は、微妙な言い回しの差が結論を分けます。

10 当事務所のご案内

当事務所では、松村大介弁護士が最初の接見から公判の結審まで全ての工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、捜査機関の通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場で同席いたします。

解決事例を二件ご紹介いたします。当事務所は、国際的な要素を含む刑事事件、裁判員裁判の対象となる重大事件、世界的に報道された事件への対応実績を有しております。また、特殊詐欺の受け子とされ複数回再逮捕された方の事案では、不当な取調べに抗議を重ね、全ての事件で不起訴処分を得ました。

おわりに

「重い荷物を運ぶだけだと聞いていた」「途中まで何をしているのか分からなかった」。この類型では、そうしたお話を数多く伺ってまいりました。知らなかったという説明がそのまま通るわけではありませんが、どの時点で何を知り、どの範囲まで合意していたのかを事実に即して示していけば、責任の範囲も処分の重さも変わり得ます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):进入空置房屋、施工现场与盗窃(刑法第130条、第235条):共犯脱离与对在留资格的影响

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