性的な画像をめぐる事件で立件されたとき|示談だけでは在留審査が終わらない理由
2026/09/08
スマートフォンの中の画像が端緒となって捜査が始まる事件は、近年着実に増えています。令和5年に施行されたいわゆる撮影罪、画像を第三者へ送る提供行為、刑法175条のわいせつ電磁的記録頒布等、児童ポルノ法が定める提供・製造・所持。罪名は分かれていますが、刑事処分の後に在留審査が控えている点は共通します。示談が成立すれば全て終わる、という理解は正確ではありません。
本記事の要点
- 主な類型は、性的姿態等撮影罪(令和5年施行のいわゆる撮影罪)、画像の提供、刑法175条のわいせつ電磁的記録頒布等、児童ポルノ法が定める提供・製造・所持である。
- 個人的法益を侵害する類型は示談で反社会性が個別に解消される余地が広いが、社会的法益に関わる類型では素行の評価が容易に解消されない。
- 退去強制事由は入管法24条4号リが分水嶺となる一方、更新審査(入管法21条)では罰金や不起訴でも素行の評価が残る。
どのような行為が対象となるか
主な類型を整理します。令和5年に施行された性的姿態等撮影罪は、同意のない撮影行為そのものを処罰の対象とします。撮影した画像を第三者に送る行為は、提供として別途評価されます。これに加え、刑法175条のわいせつ電磁的記録頒布等、児童ポルノ法が定める提供・製造・所持が問題となる場合があります。なお、本記事では被害に遭われた方の事情には立ち入りません。被害を軽く扱う姿勢は、示談にも量刑にも良い影響を与えません。
保護法益という視点で評価が分かれる
示談が成立しても、在留審査が終わるとは限りません。罪名の表面的な異同ではなく、その罪が守ろうとする利益、すなわち保護法益によって、在留審査上の評価は変わります。
被害者個人の権利や尊厳を侵害する類型では、示談や被害弁償によって反社会性が個別に解消されたと評価される余地が広い。これに対し、児童の保護や社会の性的風俗に関わる類型では、示談が成立しても社会的法益への侵害が埋め合わされたとは評価されにくい。出入国在留管理庁が公表する在留期間更新・在留資格変更の不許可事例にも、児童ポルノに関する法令違反を理由とするものが含まれています。
退去強制と更新審査という二段構造
在留への影響は、二つの段階に分けて考えます。第一に、退去強制事由への該当性です。刑の重さによる退去強制事由は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合であり(入管法24条4号リ)、全部執行猶予が付いた場合は除かれます。薬物等のように刑の軽重を問わず該当する類型(同4号チ)に、ここで扱う罪は含まれません。この段階では、量刑が分水嶺になります。
第二に、在留期間の更新や在留資格の変更の審査です(入管法21条)。ここでは、退去強制事由に至らない罰金や不起訴の場合でも、素行の評価として考慮され得ます。申請時の申告内容に偽りがあれば、在留資格の取消し(入管法22条の4)も視野に入ります。
不起訴処分を最優先に置く理由
以上の構造から、目標は執行猶予判決ではなく不起訴処分に置きます。前科がつかないこと自体が、その後の更新審査で語れる内容を変えるからです。準備は示談交渉だけではありません。再犯防止のための環境調整、専門の医療機関への相談や治療の継続、ご家族による監督体制。これらを記録に残せば、後の在留審査に提出できる資料にもなります。
押収されたスマートフォンと、逮捕からの72時間
この類型では、スマートフォンやパソコンが押収され、削除済みのデータも解析されます。その結果、当初の被疑事実を超えて余罪が明らかになり、再逮捕が繰り返されることもあります。逮捕から勾留請求までは72時間であり、この間に供述の骨格が固まりますから、初動が結論を左右します。
- 黙秘権を行使し、記憶が不確かな点を推測で埋めない。
- 早期に弁護人を選任する。当番弁護士制度のほか、ご家族からの私選も可能です。
- 通訳の質を確かめる。微妙な言い回しの取り違えが、そのまま調書に残ります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、外国人の刑事事件と入管手続を主な注力分野としています。松村大介弁護士は接見から結審まで全工程を自ら担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。関連する事例を三件挙げます。
- 深夜の盗撮被害の事件について、被害者側の代理人として刑事告訴と示談交渉を担当し、300万円の慰謝料の支払を内容とする示談を成立させた事例。被害者側で交渉した経験は、加害者側で示談を進める際の配慮を見通す力になります。
- Facebookのなりすましアカウントを、仮処分手続を用いて削除した事例。インターネット上の情報への対応には、手続の選択と迅速な申立てが必要になります。
- 在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された方の事案。婚姻・認知が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して成立させ、在留特別許可を獲得しました。
外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、捜査機関の通訳とは別に、ご本人のために動きます。処分後の在留資格の手続は提携する行政書士と連携してワンストップで対応し、退去強制手続に進んだ場合も在留特別許可の獲得実績を踏まえて対応にあたります。
結語
この種の事件は、誰にも相談しにくいものです。しかし、時間が経つほど押収データの解析は進み、選べる手段は少なくなります。示談だけで全てが終わるわけではないという構造を早い段階で理解し、刑事処分とその後の在留審査を一つの流れとして設計できれば、日本での生活を続ける道が残る場合があります。まずは事実の整理から始めましょう。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者 松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):因涉及性影像的案件被立案时|为何仅有和解并不能了结在留审查
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