舟渡国際法律事務所

路上で現金を奪ったとされる事件で起訴されたとき|強盗致傷は裁判員裁判の対象です。共犯者が既に出国している場合の争い方

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路上で現金を奪ったとされる事件で起訴されたとき|強盗致傷は裁判員裁判の対象です。共犯者が既に出国している場合の争い方

路上で現金を奪ったとされる事件で起訴されたとき|強盗致傷は裁判員裁判の対象です。共犯者が既に出国している場合の争い方

2026/09/10

東京都豊島区の路上で多額の現金入りのかばんを2人組に奪われたとされる事件で、中国籍の大学生とされる方が強盗致傷の疑いで逮捕され、2026年9月上旬に起訴されたとの報道がありました。もう1人はすでに出国しており、実行役に指示した人物がいるとみて捜査が続いているとも伝えられています。ご家族からは「荷物を運ぶ役だと聞かされていたと本人は言っている」といったご相談をいただきます。本記事では、強盗致傷の重さ、共犯者が国外にいる事件の難しさ、在留資格への影響をご説明いたします。

本記事の要点

  • 刑法240条前段の強盗致傷は無期又は6年以上の拘禁刑で、裁判員裁判の対象事件です(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項1号)。
  • 共犯者が出国していると、その方の供述が得られないまま審理が進む可能性があります。
  • 憲法38条3項・刑事訴訟法319条2項は、自白だけを根拠に有罪とすることを禁じています。
  • 強盗の共謀か窃盗の共謀にとどまるかという共謀の射程が、最大の争点になりえます。
  • 実刑となれば入管法24条4号リに該当しうるため、訴因の縮小や無罪を目指す弁護が在留に直結します。

強盗致傷はどれくらい重い罪ですか

刑法240条前段の強盗致傷は無期又は6年以上の拘禁刑、前提となる強盗(236条1項)は5年以上の有期拘禁刑です。もっとも、走り去りざまにかばんを引ったくった行為が常に強盗になるわけではありません。暴行の強弱、被害者との接触の態様、けがの有無と程度により、窃盗(235条)にとどまる場合、逃走時の暴行が問題となる事後強盗(238条)に当たる場合、金銭要求の経緯によっては恐喝(249条)と構成される場合があります。報道の罪名は捜査機関の見立てにすぎません。

裁判員裁判の対象になると何が変わりますか

市民である裁判員が加わるため審理は集中的に行われ、その前提として公判前整理手続(刑事訴訟法316条の2以下)で争点と証拠が絞り込まれます。公判が始まってからは主張も証拠も原則として追加できず、準備の密度がそのまま結論を左右します。また、審理は通訳を介して進みます。刑事訴訟法175条は、国語に通じない者に陳述をさせる場合に通訳人に通訳をさせるべき旨を定めています。一語一語が訳出を経て裁判員に届くため、通訳の質は結論に直結します。

共犯者がすでに出国している事件の特殊性

共謀の内容と役割分担を、残された1人の供述と客観証拠だけで認定せざるを得なくなる点が最大の特殊性です。検察官は防犯カメラ、通信記録、位置情報、送金記録を積み上げて指示役の存在を立証しようとしますが、これらが示すのは「連絡を取り合っていた」「同じ場所にいた」という外形にとどまることが少なくありません。日本と中華人民共和国との間には犯罪人引渡条約が締結されていないとされ、捜査共助にも時間を要します。供述が得られないまま審理が進む可能性を前提に置く必要があります。

本人の供述しか直接証拠がない場合、有罪にできるのですか

憲法38条3項は本人の自白が唯一の証拠である場合に有罪とされない旨を定め、刑事訴訟法319条2項も同旨を規定しています。これを補強法則と呼びます。共犯者の供述がない事件では、被告人の供述が事実上唯一の直接証拠になりやすく、その供述がどのような状況で作られたのかが決定的です。通訳を介した長時間の取調べで意味が分からないまま署名した、曖昧に肯定した部分が「認めた」と記録された。こうした経緯があれば、任意性と信用性の両面から調書の価値を争い、録音録画の開示を求めます。

「かばんを取ってくるだけだと言われた」場合、共謀の射程はどう考えますか

実行役とされた方が「暴力を振るう話は聞いていない」と述べる類型では、強盗の共謀があったのか、窃盗や引ったくりの共謀にとどまっていたのかが最大の争点になります。共同正犯(刑法60条)が成立するのは合意された内容の範囲においてであり、窃盗の合意しかなかった方に、別の関与者が現場で加えた暴行とその結果までを当然に負わせてよいとはいえません。もっとも実務では、事前の説明内容、報酬の額、現場での行動から黙示の合意が認定されることもあります。

想定される刑事手続の流れ

逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に、引き続き身柄を拘束する手続(勾留)を請求するかどうかを判断します。この合計72時間は、弁護人以外との面会が原則として認められない期間と重なります。勾留が認められると原則10日、延長でさらに最大10日の拘束が続き、その間に起訴か不起訴かが判断されます。最初の72時間に方針を固められるかどうかが、その後の全体を左右します。

外国人事件特有のリスク(退去強制・在留資格)

入管法24条の退去強制事由は、号ごとに構造がまったく異なります。4号ロは不法残留、4号ハは資格外活動、4号ニは旅券法違反、4号チは薬物事犯につき刑の軽重を問わず有罪判決で該当し、4号ヌは不法就労助長等を対象とします。強盗致傷で問題になるのは4号リです。

4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を対象とし、全部執行猶予の言渡しを受けた者を除いています。強盗致傷は法定刑の下限が6年ですから、酌量減軽を経てもなお執行猶予が付く余地はごく限られます。逆に、訴因が窃盗や恐喝に縮小されて執行猶予付きの判決に至れば、同号の除外に入る余地が生じます。なお、退去強制事由の判断に故意や過失を要するかは現在も議論のある論点であり、刑事段階で合意の内容を争っておくことが後の入管手続での主張の基礎になります。

不起訴処分の重要性

執行猶予付きの判決を得ても在留資格を守りきれない場面があります。有罪判決という事実は、在留期間更新(入管法21条)や在留資格変更(同法20条)の審査で素行の要素として正面から評価されるからです。刑事弁護は起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として組み立てる必要があり、24条各号の構造を把握しないまま進められた弁護は、結果として在留資格の喪失につながることがあります。

初動対応で押さえたい3つのポイント

  • 黙秘権を正しく行使すること。記憶が整理できていない段階での断片的な受け答えが、後から動かしがたい前提として使われることがあります。
  • できるだけ早く弁護人を選任すること。逮捕から72時間は弁護人以外との面会が原則として認められません。
  • 通訳の質を確保すること。本人のために動く立場の通訳が付くことで、説明の細かなニュアンスが失われずに済みます。

当事務所では外国人事件専属の中国語通訳が常駐し、接見から公判まで同じ通訳が一貫して関与できる体制を取っています。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所は、中国籍の方を中心とする外国人刑事事件と入管手続を主たる注力分野としています。接見の初動から公判の結審まで松村大介弁護士が直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。

事例E-1として、当事務所は国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象事件、世界的に報道された事件への対応経験を有し、中国籍の方の重大事件にも多数対応してまいりました。

事例A-1として、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底的な分析と被告人質問・反対尋問による事実の解きほぐしにより無罪判決を獲得しました。

事例D-1として、観光目的で来日した相談者が在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的な観点から当局と交渉して実現し、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集したうえ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1回の申請で在留特別許可を獲得しています。

入管庁は在留特別許可の許可事例・不許可事例を年度別に公表しており、これは行政自身が許可相当と判断した先例です。同種の事情を有する事例を抽出し、憲法14条1項の平等原則から主張できます。刑事手続の終了後は、提携の行政書士と連携して在留資格の更新・変更まで対応いたします。

結語

共犯者が国外に出てしまった事件では、真相を語れる人が減った状態のまま、重い罪名の審理が進みます。だからこそ、残された証拠を一つずつ検討し、合意の中身を丁寧に描き直す作業が意味を持ちます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):在路上被指夺取现金而遭起诉时|强盗致伤属裁判员裁判对象案件,共犯已出境时应如何抗辩

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